テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
体が傷ついた場合、その傷ついた部分の重要性・大きさに比例して、その後の出力が増加する
これが私の術式
私は主に銃と剣で戦う。スナイパーをすることもあれば、近接戦でゴリ押ししたり、中距離で削ったりもする
展開できる銃の個数に制限はないけれど、個数が多いほど負荷は増えるから、今のところは一度に17個が限界
剣も同じ。長さとかの設定によっても違うけど、大体の最大は20振り。
私は特攻舞台としての適性が高いので、最前線を貼ることが多かった
それなりに強いと自負しているし、友の戦別だって経験した
階級が上がるにつれて、仕事場が「前線」から「前線の支援」とか「作戦立案」とかになっていった
その過程で、色々な知識が身についたの思う
今は我が祖国・ボスミアの軍部で大佐を務めています
我が軍の服装は常に統一されています
白色のワイシャツ、黒色のジャケットを重ね、黒の長ズボン。ネクタイは黒。左側には軍の証も忘れずに
帽子もあります。黒で、赤のラインが入った
会議などでは、中佐以上のものは黒マントをつけることが義務付けられており、マントまでつけるのが正装です
新入兵の入軍式
「ではここで、エルザ大佐からお言葉をいただきます」
エルザ「はじめまして、新入兵の皆さん
私がエルザ・フォン=ブランデンブルクです
⋯大佐として、あなた達を歓迎し、期待し、それ相応の結果を求めることを誓います
私からは以上です」
エルザには、少しばかり手のかかる部下がいる
優秀ではあるのだが、自分の限度を顧みずに行動してしまう時がある
そういう時、その部下を止められるのはエルザただ1人なので、毎回現場へ向かうことになってしまう
だが、エルザは嫌がっているというよりも面倒くさいと感じているようで、迎えに行くこと自体は必要性を認めている
その部下こそ、糸師冴
他国から奴隷として密輸されてきた人物だ
その闇オークションの差し押さえを任されたのが、若かりし頃のエルザ
エルザはその頃から着々と成果を上げ、相当な位についていたため、ある程度の権限を与えられていた
エルザは冴に素質を見出し、上層部と掛け合い、冴を屋敷に迎えた
冴はエルザや屋敷の者たちの指導の下、訓練を受け、着実に実力を上げていった
そして、軍部に入軍。
メキメキと頭角を現し、正当な方法でエルザの部下となったのだ
そんな冴の能力は、『切断』
単純だが、故に強力な能力
力の扱い方がわかりやすく、伸ばしやすい。そして、鍛錬した分だけ実力に反映される
モチベーションが持てる能力だ
冴は基本的に表情を変えず、冷徹だ。だが、その内面は仲間思いで、不器用ながら部下を思いやっている
過去の経験からか、自分の何かを失うのを恐れており、また奴隷時代の癖か、体が悲鳴を上げていても行動をやめない
これらが、エルザを現場に呼ぶ原因だ
エルザはエルザで、弟分の冴を大切に思っており、親しい大佐同士にしか見せないような表情や口調、お節介を見せる
なので、冴が毎回暴走すると、冴を攻めるというより、その場では敵が一番にエルザからの猛攻を受けることになる。
敵からしたらとばっちりかもしれないが、エルザにとっては
「冴を暴走させた→冴は普通の駆け引きじゃこんなにならない⇒敵がなんかしやがった」
という思考に至るわけである
「エルザ大佐!糸師中佐が」
エルザ「座標は?」
「F9ブロックの中央です!」
エルザ「了解」
エルザの速度なら、数百キロ離れていようと数秒で移動が可能だ
現場に到着したエルザは、まず現場理解に神経を動かす
冴が交戦中
明らかに限界を超えている
能力も暴走気味
敵も消耗している
エルザは静かに、巨大な銃を生成する
瞬間 強烈な爆発と熱風があたりをつつんだ
敵の4分の3が死亡しているにも関わらず、自軍に負傷差がいない完璧なコントロール
エルザ「冴、止まれ」
エルザは冴の手首を片手で掴み、もう片手で腰を支える
手を開かせ、刀を放させ、落ち着かせる
エルザ「冴、私だ。君を壊す人はいない。深呼吸して」
冴「ぇ、る、ざ、、様」
エルザ「様はいらない」「よく頑張ったな。あとは任せろ」
冴は静かに意識を手放した
エルザは冴を救護班に任せ、敵に対峙し直す
エルザ「私の部下がお世話になったようだな。⋯銃撃をもって、感謝を伝えよう」
死刑の宣告
降り注ぐ銃弾
防げど防げど、終りが見えず、仲間は減り、恐怖に支配され、名誉もなく、ただ死神が笑う
エルザ「⋯殲滅完了」
その声が、敵の惨敗を、静かに告げた
冴はエルザのことが好きだ
恋愛感情ではない。これは断言できる
だが、敬愛かと言われると、そうでもない気がした
もっと身近に感じるような、すこし特別でありたいような
それが「家族愛」であると知った時、驚いた
自分の家族は、あの異国の地で、同じ屋根の下で暮らしていた、あの3人だ
少なくとも、血縁上はそうなはずである
だが、記憶を思い返しても、今あの3人に所謂「家族愛」が抱けるかというと、抱けない
奴隷
その経験が、心のすべてを更地にした
あの3人は、もう「家族の記憶」なのだ
今の家族は、エルザだけ
もしくは、屋敷の人たちだけ
これらが自分の中で整理がついた時から、冴は決めた
どんな状況であろうと、エルザだけは信頼する
それが、冴にできる唯一の恩返しだから
地位をあげる、お金を稼ぐ、有名になる
これらでエルザが喜ばないことは、今までの生活で感じていた
だから、自分にしか出来ないものを探した
「信頼」
エルザが冴にしてくれたこと
ならば、自分もエルザに返そう
全てはこの誓いから
冴の、軍人 糸師冴の人生は始まったのだ
冴が目覚めたのは、見覚えのある天井
無機質な明かりと、白ばかりの壁
唯一の色は、横の店に置かれている花だろう
少しあと、看護師がやってきた
「冴さんは、興奮による暴走状態になり、ここに運ばれてきました。傷は回復しています」
「退院されますか?」
何度目かもわからない
同じ症状、同じセリフ、同じ問い
冴「⋯あぁ」
「わかりました。通達してきますね」
看護師が部屋を出ていき、再びの静寂が冴の耳を満たす
思考は同じ事を考える
あの時止めに来たのは、エルザ様だろうか
あの優しい声で、また、失敗した自分を、受け入れてくれるだろうか
あの優しい手で、褒めてくれるだろうか
子供じみているのは自覚している
だが、ここで目覚めるたびに思うのだ
今回こそ、見放されてしまうのではないか
コツコツ
扉の向こうから、一定のリズムの足音が近づいてくる
看護師ではない
扉が開く
「冴、帰るぞ」
軍服
やはり似合う
「軍人の中で五本指に入るほど軍服が似合う」と噂されているだけはあるだろう
冴「はい、エルザさ」
また、様をつけかけてしまった
冴「エルザ大佐」
エルザの表情は読めない。
だが、自分を抱きかかえる腕は優しく、その体温は、どんな高級な寝具よりも、冴の心を落ち着かせた
車につく頃には、冴はまどろみの中にいた
そんな冴を起こさないように、少しばかり慎重に車に乗り込む
エルザ「屋敷まで」
「はい、お嬢様」
短いやり取り
屋敷の者にとっては十分だ
車が走り出す
外では雨が降っており、傘を指して家を目指す人々で道は混雑していた
エルザは、自分の膝に乗せられた冴の頭の重みを、どこか心地よいものとして感じている
左手は一定のリズムで冴の頭を撫で続け、冴の呼吸に細心の注意を払っている
雨の音と、お互いの息の音
病院と同じ静寂
だが、その質は、誰がどう見ても違った
屋敷に着く頃、雨は激しさを増していた
出迎えの執事が、2人を雨に濡らさないように傘を差し出す
エルザ「お風呂を沸かしてちょうだい」
「はい」
冴が濡れていないことを確認し、冴をそっとベッドに横たわらせる
冴「ぇ、る、ざ⋯」
エルザ「⋯なに、冴?」
答えはない
それでも良かった
エルザには兄弟がいない。姉妹もいない。
一人っ子
由緒正しい名門貴族の長女
遊ぶことも、学ぶことも
すべて大人と
同じ年の子と触れ合う機会は、あまりにも少ない
淋しい訳では無い
屋敷の者が悪いわけでもない
だが、心の穴は、深かった
だからこそ、冴には、エルザなりの愛を注ぐ
自身が幼かった頃、してほしかったことを思い出しながら
コンコンコン
ノックの音が控えめに響いた
エルザ「はい」
「お風呂の準備が整いました」
エルザ「⋯私がでたら、夕食の準備を。冴は起こさなくていいわ」
「承知しました」
着替えのタオルを準備し、少し手紙を書いてから、部屋を出る
パタン
明かりが消えたあとの部屋
冴は規則正しい寝息をたて、主の配慮に浸かるのだった
冴の意識がゆっくりと浮き上がった
柔らかいベッド
かけられた毛布
まだ眠気の残る体を起こし、部屋の電気をつける
明かりが目に染みた
テーブルの上に置かれた手紙が2枚
筆跡は、エルザのもの
1枚目
【私はお風呂にいっています
出てくる頃には夕食ができているはずなので、起きていたらともに食べましょう】
2枚目
【よく眠っていますね
夕食は執事に頼めば、私と同じ物が食べられるはずです
私は横の部屋にいます
おやすみ、冴】
時計の時間を見れば、朝の2時
思った以上に眠っていたようだ
執事に頼み、食事を温め直してもらう
ハンバーグと、ガーリックパンと、コーンスープ
冴とエルザ
2人が好きなもの
冴(⋯やさしい、な)
あの人は何処まで見透かしているのだろう
時々、すべてを見られているような気がする
でも、嫌じゃない
奴隷の時のように、支配するための監視ではない
むしろ、自分が過ごしやすいように、自分を守るために、自分のことを見ている
それは、この屋敷に来てから、ずっと
冴(⋯もう少し、眠むるか)
起きた時、完璧な自分でいるために、冴はベッドに潜り込む
雨に打たれて揺れる葉が、冴のまぶたを重くさせていった
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コメント
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気が向き次第色々書いてます 他のも読んでみて下さい!
mkさん、第1話読み終えました…! 冒頭からエルザ大佐と冴の関係性がすごく丁寧に描かれていて、惹き込まれました。 「家族愛」だと気づく冴の心情と、エルザが幼い頃の自分に重ねて愛を注ぐ感じ、じんわり来ますね…。 強くて優しいエルザと、不器用だけど信頼で応えようとする冴。 雨の車の中の静けさが、2人の距離を象徴してるようで好きです。 続き、どんどん読みたくなりました…!🌙🤍