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「ねぇ、小柳くん。」
彼奴はどこか、淋しいような怯えているような感情を孕んだ眼で俺を真っ直ぐに見つめた。
返事をするべきなのは分かっていたが、返事をしてしまったらこれから起こることを肯定してしまうような気がして、どうしても返事が出来なかった。
其れが分かっていたのか、彼奴は少し微笑んだ後話し始めた。
「俺、大型任務に抜擢されちゃって。この後一人で行く予定なんです。」
覚悟はしていた。星導は優秀だから、いずれは本部の糞爺らが潰しに来ると思っていた、其れが今だとは思いもしなかったが。本部の糞爺どもは優秀で美形な奴を嫌う、優秀な星導も例外ではない。
「小柳くんは知ってますよね。だから、これが小柳くんとの最期の会話かもです。ごめんなさい。」
「……、星導は悪くねぇよ。悪いのは彼奴らだ。」
こうなってしまったらヒーローを辞めるか、 死ぬか、の二択しか一人で大型任務に行かないようにする方法はない。
だから、俺の美形な先輩や優秀な後輩は皆死んだ。
後輩や先輩が死んだのには特に何も感じなかった。
だが、空っぽだった俺に愛をくれた彼奴を失う訳にはいかない。2度も彼奴を糞野郎共に奪われてたまるか。
「なあ、星導。お前は本部の糞爺共のために死んでもいいのか?」
「な、何言ってるんですか、?、そりゃあ、光栄なことですよ!」
嘘だ。
お前は何時も嘘を吐くとき引き攣った笑顔で右を見る。
今だってそうだ。 本当は死にたくないくせに。強がって一人で抱え込んで。
「星導。俺は本当のお前の気持ちを聞きたい。 」
「…っ、本当は俺だって生きたいですよッ!、だけど、こんなこと言ってもどうにもならないじゃないですかッ! 」
彼は綺麗な眼に大粒の涙を溜めて声を荒らげた。
そりゃそうだ、急に死ぬことが確定して。普通の人なら耐えられない。星導は最期まで星導ショウであり続けようとしたのだ。
俺は嗚咽混じりの鳴き声を静かに聴きながら彼を抱きしめた。
「ぅ゛ぅっ、ぐずっ、ひぐっ゛……。ごめん。」
「んーん。大丈夫。俺に全部任せろ」