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いつも通りの日常。いつも通りの風景。いつも通り一人で教室に行く。
廊下の騒がしさ。道のど真ん中で密集する陽キャ達。怖いくらいいつも通りだ。いや、それくらいが良いのかもしれない。
窓から入り込んでくる柔らかいそよ風にあたりながら、俺は教室へ向かった。その日は徹夜でゲームやってたせいで目が開くか怪しいくらい眠たかった。
教室につくなり、入り口のすぐ近くにある席に座った。眠すぎて歩くのも面倒だった。
なんとなく窓際の方を見ると、そこには、外から差し込む陽の光に当たって輝いてる男がいた。
…いるまだった。周りから見たらいるまは、ただ窓の外を眺めてるようにしか見えてなかったかもしれないけど…俺にはそこだけが照らされていて、なんというか…めちゃくちゃ綺麗に見えた
俺の足は自然といるまの方へと向かっていた。そういえば眠気はどこへ飛んでいったのだろうか…いるまのこと見てたら忘れた。
俺はいるまの顔を覗き込んだ。目が開くかも怪しいほどに眠そうだった。というかもう夢の世界直行ですか?というくらいに、今から寝ますよー的な顔をしていた。
いや…言ってる場合か、もたもたしてたらすぐに次の講義始まっちまうぞ。俺はすぐさまいるまを起こしに入った。
「いるまーおきろー」
返事はない。こいつ…目開けながら寝て…いや、そんなことはない。てかあったら怖すぎる。俺はもう一度声をかけた
「おきてますかーーー」
またも返事はない。2連続無視とかひどくね?もしかして俺をからかってるのか?上等だよ…。なぜか俺の心に対抗心が燃えてしまった。
「おーい聞こえてる?」
俺はいるまの頭をくしゃくしゃと掻き乱すように撫でてみた。…いや、何してんだ俺。対抗心というかただのいたずらだろ、これ。あといい加減好きな人にいたずらする癖は治さないと…
すると、いるまはうつろな目で俺の顔をまじまじとみた。こいつの目は半分しか開いてないし、口の近くによだれの跡がある。こちら側だけから見ると完全にアホ面だ。多分今俺は変な顔してニヤニヤしてると思う。
「え、あー…なつ…どした?」
「どしたって、お前が寝てたんじゃん」
予想外の第一声に思わずつっこんでしまった。こいつ寝起きで絶対頭回ってないだろ。…
いや、意外と頭回ってないのは俺かもしれない。俺は無意識にいるまの頭を撫で続けていたらしい。俺の方がやばくないか…
「え、いるまお前2限連続?」
「まぁ、そうだけど…」
「はぁーご愁傷様」
「黙れ」
そんな他愛もない会話をしながら、俺は講義の準備をした。いるまの方を見ると、もうすでに夢の中に入りそうだった。
「お前また寝るの?」
「昨日オールだったんだよ…」
「いや一何してんだよ…」
あんま喋らないということは、もうこいつ寝る体制入ったな…。そんなこんなしてると講義が始まった。
「いるま、講義始まったよ」
「いや俺寝るし」
「知ってる」
何この脳死会話。謎すぎるだろ。俺はそう思ったし、多分いるまもそう思ってる。…いや、眠くて考える暇もないのか?なんでもいいけど
ずっといるまの頭に置いてた手を離そうとしたが、いるまの綺麗な横顔見ていると、なんとなくそのまま置いておきたくなった。
「なつ?」
「ん」
「なんで俺の頭手置いてんの」
なんで…理由か、大した理由も別にないしな…ただ、可愛かったから…いるまがなんとなく可愛かったから置いておきたくなった。…いや、言えるわけがないだろ、そんなこと…
「そっちの方がいるま落ち着くだろ?」
「まぁ…」
すごく適当なことを言ってしまった気がする。ただまぁ「可愛かったから」よりはマシか…
いるまの髪はすごく繊細で、サラサラしていた。綺麗だ、ものすごく。俺はいたずらしたい気持ちをぐっとこらえ、いるまのことを見ていた。
俺と目が合っているのが気まずかったのか、いるまはそっぽを向いて寝る体制へと移った。俺は寝ようとも思ったが、とっくのとうに眠気は消えていたから寝ることはできなかった。
「なつ、寝てる…?」
「…ん、」
いるまが話しかけてきたのになんか素っ気ない返事をしてしまった気がする。しかも寝てんのか起きてんのかわからん返事。かといって今から「起きてるよ」と返事するのは流石に不自然すぎる。
そんなことを考えていると、いるまは前の方を向いてそのまま俺に視線を送った。
「あ…」
完全に目が合った。さっきとは違い、ぱっちりと目が開いていた。俺は透き通るような瞳に見惚れてしまった。
そうしたらいるまはいつのまにか俺から視線を外して前を向いていた。もしかして寝れなかったのか、?そう思い、俺はいるまに聞いた。
「いーるま」
「なんだよ…」
「俺お前のこと撫でてやるから寝て良いよ?」
「は…は?」
そりゃ混乱もするわ…自分でも何言ってんだか。
「いるま?寝れなかった?」
「なんか目ぇ覚めた」
「ふーん」
俺がいるまの頭に手置いてたから目覚めちゃったのか…?それだったら申し訳ないけど…。
俺はいるまがもう一度寝れるように、というか俺の欲望に従っているまに聞いた
「いーるま」
「なんだよ…」
「俺お前のこと撫でてやるから寝て良いよ?」
「は…は?」
そりゃ混乱もするわ。自分でも何言ってっかわかんなかったもん。
ただ、そんときの俺はいるまが可愛くてしょうがなかったんだと思う。俺はいるまの答えも聞かずに頭を撫でた。
顔を赤くしたいるまと目が合った。こいつ…照れてる?いや、眠くて火照ってるだけか。過度な期待のしすぎは良くない。ただ、状況が状況のせいで照れてるようにしか見えなかった。本当に可愛い、こいつは。
眠くなったのか、いるまは腕に顔をうずくめだした。…
5分近く経って、いるまは寝息を立ててぐっすりと眠っている。机に突っ伏してるせいでいるまの寝顔が全然見えない。まぁ、これに関してはしょうがない。しょうがないけど…ちょっとくらい見てもいい、よな?俺はゆっくりいるまの頭を動かして、顔が見えるようにした。
めちゃくちゃ幸せそう。にこってしてるわけでもないのに、すっげー幸せそう。俺はすぐさま元の定置に戻した。
俺はいるまの頭を撫で続けた。撫でてたというか、髪を触ってた。サラサラで、ふわふわしてて…。
触りながら俺は外を眺めてた。窓から差し込む暖かい日の光。たまに流れてくる柔らかいそよ風。かろうじて耳に入ってくるか、入ってないかの講義。いるまはいつもここで講義聞いてたのか…いや、まともに聞いてないか。
たまに入ってくるそよ風に流れているまの香りがこちらにくる。ふわっとくるその香りは、明るいお日様に少しだけフローラルが混ざってるような香りだった。
…もうちょい近づいたら直接香り感じれるかな?そう思って椅子を近づけようとすると、チャイムが鳴り出した。いつの間にか講義は終わっていた。俺は仕方なくいるまを起こした。
「いるまー、いるまーおきろー?」
いるまは目を擦りながら、俺の顔をまじまじとみた。目は半分しか開いてないし、口の近くによだれの跡がある。こちら側だけから見ると完全にアホ面だ。そしてまた、俺は変な顔でニヤニヤしてると思う。このニヤニヤはバカにしてるんじゃない。可愛くて自然とそうなるだけだ。
「んぁー…なつ…おはよ…」
「ん、おはよ」
俺はそう返事をして、もう一度いるまのアホ面を見た。よく見ると寝癖も少しついてる。あまりのアホっぽさに俺は笑い声を上げてしまった。
「なんだよなつ…」
「お前寝起きブスだなーw」
「はぁー?」
俺はそう言っているまの頭をくしゃくしゃと撫でた。咄嗟に出てきたいじりで事なきを得た。本当はブスなんて思ってない。むしろ可愛いくらい。けど本人にそんなこと言えるわけない。
いるまはまだ目が覚めてないみたいだ。ずっとぼーっとしてる。
「なぁいるま、この後もう授業ないっしょ?」
「まあ、ないけど」
「一緒にスタバ行かね?俺奢りで」
「行く!」
いるまの目は俺のこの言葉で一気に目覚めた。…と思う。奢りとなると本当に目がない。
いるまはそそくさと机の上のものを片付け準備を整わせた。
「いるま?準備できた?」
「できた!」
「よし、行くか!」
俺が先陣を切ると、いるまは俺の隣にきて一緒に歩き出した。そうして二人で互いに笑い合い、大学を後にした。…