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転生した少年は三歳から冒険者生活始めました。

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転生した少年は三歳から冒険者生活始めました。

32 - 第32話 牛一頭分の肉に喜ぶフラット、スタンガンでやられた俺。どういうこと!

2024年02月21日

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それだよ、と指さしたのは肉じゃがとおにぎりだ。

フラットの側においてやれば、皆興味津々だ。

「えっとね、こっちはおにぎり。ご飯をこんな形に握ってみた。それと、こっちはお芋とオークの肉を煮たものだよ」

へ~と言う皆と、朝食の皿を突き出すギルマス、マックスさん、ショルダーさん。

あははは、と俺は続きを食べることにした。

美味いなこれ! 叫んだのはギルマスだ。

煩いですよ、ギルマス。指で脇をつつけば、悪いと頭を下げる。

『終わったよ、ナギ。美味しかった~』

『そう、よかったね。こっちむいて、綺麗にしよう』

ん、とフラットが顔を上げる。


<クリーン>


ほら、きれいになったねと笑顔を送れば嬉しそうだ。

急がなきゃ、と残りの朝食を食べた。


じゃあ出かけよう。今日も領主様が宿泊できるようにしてくれているから休めるね。


宿の前に、それぞれの馬が並びはじめる。馬番がいる宿なので、準備は任せていたらしい。

フラットは椅子をつけてググンと大きくなった。

皆が騎乗し始めたので、俺も鐙に脚を掛ける。


出発する! とゆっくりスタートした。

王宮といっても、ここから十五分くらいで到着するので、前について行くだけだ。

大門で止められて、それぞれのギルドカードを確認された。

中に入れば、正面に回るように言われたので、方向転換だね。

王宮の入り口では領主様と文官が待っていた。

「待っていた。ナギ、フラットはそのままでいいからね。鞍だけは外せるか?」

はい、と一度降りてから椅子を外してもらった。

スルスルと縮む椅子を見て驚いているのは王宮の人かな。

アイテムボックスへ入れておしまいだ。

今、全員の武器を預かっている。そうでなきゃ、騎士団に預けることになるからだ。

帯剣していないと確認して首を捻る騎士だが、実際にないから仕方がない。


先を歩くのは近衛騎士だろうか。

きらびやかな騎士服を着てるんだけど、そんな格好で王様を守れるの? と聞いてみたい。

絶対怒られるよね。


こちらでお待ちを、と部屋に入れられた。

国王はどんな人なのかとギルマスに聞いたんだけど、領主曰く、いい人なんだけど、好色な人らしい。きれいな人間には目がないんだが、応じないものは追わないそうだ。それでもやる気のある者は、孤児であっても王宮で学ばせて、素質があれば騎士にするほどらしい。


ふうん、いい人なのかな。

あんまり好きになれそうにないけど。


ドアが鳴って、謁見の間へと通された。

全員で臣下の礼をとっているので、陛下の顔は見ていない。

「皆の者、許す、面を上げよ」

領主様が最初に顔を上げて、皆にあげるように言った。

ゆっくりと顔を上げれば、陛下はそれなりだったよ。ちょっと太りすぎかな。


「そなたたちの活躍は聞いておる。先日の異常をいち早く察知致し、魔物を狩り、周辺に処置をしたと聞いたが、間違いないか」

領主様がギルマスに振ったよ。

「直接の会話を許す、申せ」

あはは、直接話すのにも許可がいるんだね。

「ありがたき幸せ。国王陛下のお慈悲に対し厚く御礼申し上げます。では、お話しさせていただきます」

そう言ってギルマスは一連のことを話した。


俺が最初に異常に気づいたこと。その調査に向かったメンバーが今ここにいること。同じようなオークの襲来、そしてミノタウルスの襲来に対して、俺がメインとなって対処したことを話した。

もう少しオブラートに包んでくれればよかったのに、ギルマス~

「なんと、六歳の子供が冒険者であるのか? うん? そこに侍りおる白銀の髪のものか?」

左様でございます。お、領主様はさすが様になってますね。

「名はなんと申す。申してみよ。直接の会話を許す」

「はっ。国王陛下におかれましては、私のような平民に対してもそのようなお心深きお言葉をいただき、心より感謝致します。何分にも平民故、言葉遣いなど失礼があるやもしれませぬが、お許しいただけましょうか?」

「うむ。問題ない。そなたは六歳と聞いておるが、言葉遣いなど中々にして無難である。王宮で暮らさぬか? 我は孤児などを引き取り教育をさせ、騎士や文官として育成しておるのじゃ。そなたならば問題ない。冒険者として生きるのは何か理由があるのか?」

やっぱりこうなったか。じゃあ、はっきり断ろうかな。

「もったいないお言葉に感謝致します。ですが、平民の私がこのような高貴な場所で暮らすなど、考えたこともございません。私が冒険者を生業とするには理由がございます。三歳の時、目の前で両親が魔物に殺されました。ですが、母は命をかけて私を助けてくれたのです。それ故、私は魔物を狩る、そう決めました。同じような思いの子が苦しまぬような世界にしたいと存じます」

ふむ、と国王は考え込んだ。

これ、断ったらヤバイのかな。

「そうであるか。あっぱれである! 我は感激した。その志、その能力は領主より報告があった。そして、そなたの眷属であるシルバーウルフは王の子であると聞いた。お前が看取った王の子ならば、志をもってそなたを助けるであろう。頑張るのだぞ。何か異変があれば、我の元に報告せよ。我が聞き届けようぞ」

「ありがたき幸せでございます!」

ふぅ、何とかクリアしたかな。

でもフラットのことも認めてもらったからよかった。


「では、ここからは褒賞の話しである。宰相」

はい、と宰相殿が一歩前にでる。

「陛下よりのありがたき褒賞である。心して受け取るが良い。まず、領主殿。此度の功績に対して、領に対して金貨一千枚を授ける。そしてギルドマスター、マーレ・コクトー殿に対しては金貨二十枚。冒険者パーティ『蒼い翼』に対して金貨二十枚。冒険者ピットおよびショルダーに対してはそれぞれ金貨五枚。パーティ『草原の風』に対しては金貨五枚とする。なお、ランクにより差があるのは仕方がない。その上に特別褒賞として、各人に対して、金貨二枚ずつを授ける事とする」

あれ、俺はないの?

「なお、冒険者ナギおよびその眷属シルバーウルフ、フラットに対しては、陛下よりの特別褒賞があるので聞くように」

と、特別褒賞? なんかヤバくない?


「ナギ、そしてフラットよ。先刻より続いておった戦争時にも、珍しい薬草を採取して貢献してくれたと聞く。その上に今回の事である。六歳のそなたがオークはもちろん、ミノタウロスを三頭も狩ったときいた。どれほどの才能であろうか、我は感服致した。それ故、此度の褒賞の一部として、先日より根回ししておった、そなたのギルドランク昇格であるが、世界ギルド連合でも了承された。三歳で冒険者になってよりの全ての功績を検討致し、これからの活躍も期待して、世界のために戦って欲しいと願っておる。世界ギルド連合も、これ以後、問題なくそなたは大人同様のランクアップを認めると言う。それ故、この後ギルドへ向かうように」

他の冒険者たちに対してもギルドから話しがあるそうだ。後で必ず立ち寄るようにと言われている。期待が膨らむよね。

「そしてナギ、フラットに対しての報償金として、ナギには金貨十五枚、フラットには牛一頭分の肉を授ける故、受け取るが良い」

え? 十五枚って百五十万円てこと? それに牛一頭分の肉?

「ありがたき幸せ」

おっと、固まりそうだったよ。よかった、気がついて。


そんな一大事連発で謁見を終えた。

何も関係ないフラットは、美味しい肉が食べられると嬉しそうだ。

王宮を出る前に、後で肉の業者が宿に向かうと聞かされて驚いた。


王宮を出てフラットに乗ったけど、みんなも疲れてるみたいだ。

褒賞は目録をもらっているので、戻ってから領主様よりもらえるそうだ。でも肉だけは宿でアイテムボックスに入れろと言われた。

うん、美味しいものならいくらでも入れるけど。


領主様は屋敷に戻るそうで王宮前で別れた。

ギルマスをはじめとする俺たちはギルドに直行だ。宿で寝たいんだけど。

そんな風に思いながら皆の後を付いてゆく。

不穏な気配は、ずっと付いてきてるけど、気にするほど近寄っては来ない。それが変でしょ。


ギルドに到着して、皆は馬を厩舎に連れて行くので、俺は入り口でフラットから降りた。そして椅子を片付けて皆を待つことにする。

ここでもやっぱりあるんだね、屋台。

フラットはかなりでっかいので、入り口の壁近くで待っているんだけど、鼻だけはヒクヒクと動いている。

もうおやつの時間も過ぎてるからなぁ。

普通、肉串とかサンドイッチとかが多いけど、ここは違うみたい。竹の皮みたいな器、そう、たこ焼きの船みたいなやつに薄焼きのステーキが置かれている。

これ、すごいな。こんな入れ物があったらいろいろ入れられる。

嬉しくてすぐに買いたいと思うけど、皆が来ないから動けない。

『ナギ、あのお肉食べてみたい』

『そうだね。俺もだよ。ちょっと買ってみる?』

うん! 元気な声を聞いて二人で屋台に向かう。

「すみません、一枚下さい」

あいよ、と竹の船に乗せてくれる。

お金を払ってフラットに差し出せば、ペロッと一枚食べちゃった。

『美味しいよ。もっと食べたい』

そうなの?

「すぐに焼けますか?」

「ああ。いい肉だからすぐ焼けるぞ」

じゃあできるだけと頼む。皆が来るまでだよとフラットに言えば、ふぁふっと鳴いた。

重ねてくれていいからと言えば、どんどん盛ってくれる。一つの船に五枚ずつだ。本当にすぐ焼けるんだね。まあ、鉄板も熱そうだし。

それにしても遅いなぁ。

どうしたんだろ、皆。

とりあえず、気配を探ってみる。

ん? 厩舎にいるみたいだけど、戦ってるの?

「フラット、皆が厩舎で襲われてるみたい。おじさん、それでいいです。いくらですか?」

金を払えば、袋に入れてくれた。

それをアイテムボックスに入れてかけ出す。

俺は六歳だから早く駆けることは難しい。

『ナギ、先に行く!』

『お願い!』

じゃあ、と駆け出したフラットはすぐ先の角を曲がった。

俺ももう少しで角までたどり着く。

何とか角を曲がったとき、衝撃があった。

なに、これ……

身体中にビリビリと刺激が通り抜ける。

魔法? 雷の魔法かな。

でも違う気がする。あれ、これってスタンガンみたいなやつだけど。

これは離れなきゃダメだ。

火の壁を作って後に下がると、相手は慌てて下がる。

皆は戦ってるから自分で何とかしなくちゃ!

フードを目深にかぶったやつらは五人。

これくらいなら大丈夫だ。

ヒールを自分に掛けて、相対する。

裏に行く路地に入ったから、誰も気づいていない。

それならそれでいいかもしれない。魔法が使えるし。

ショートソードを引き抜いて相対する。

次は何がくるんだろう。

一番奥にいるやつは魔法使いだと思う。詠唱をはじめたから。それなら詠唱を止めるでしょうよ。


<氷の弾丸>


バン! と指拳銃が炸裂する。

ぐえっと唸って、男は倒れた。

やっと戦いが終わったみたい。それなら来てくれるはずだ。

『ナギ!』

フラット! と叫んだ俺をみて半分は後を振り返った。

うわぁぁぁぁぁぁーーー

驚いてこちらに掛けてきたのが問題だ。

ショートソードを構えて一人目の腕を切り落とす。後ろから飛んできたのはミミカさんの魔法だね。

次の男もなぎ払って、次はと思った時には、マックスさん、ショルダーさん、ピットさんが一人ずつ、腕や脚を切り裂いていた。

それなら、と口の中に氷の玉を押し込むイメージで自決しないようにした。

ここで緊張が切れたのか、ガクッと身体が沈む。

『ナギ、大丈夫?』

「うん、大丈夫。皆は?」

『悪い人は皆が拘束したよ。柱にくくってるから。立てる?』

ゆっくりと身体を起こしてみるけど、力が入らない。だろうね、感電したんだし。

「ナギ!」

マックスさんが駆け寄ってきて俺を抱きあげる。その隣をすり抜けたのはギルマスだ。

他の人は? と聞けば、裏で悪人を監視しているらしい。じゃあ、とフラットはここにいたやつらの服を咥えて背中に放り上げる。ピット! とマックスさんが叫べば掛けてきた。

「こいつらをギルドの中へ。フラットの背中に放り上げて連れてこい」

了解、と次々放り上げて行く。

マックスさんは俺を優しく抱いたままギルドの入り口を入った。

「だからギルマス呼べ! そうじゃなきゃ、国王陛下に連絡する! さっき謁見が終わったところだ、すぐに話しが通るだろうよ!」

あはは、ギルマスが切れてるよ。

マックスさんが声をかければ、大丈夫かと振り返った。

「これはどうしたことだ。マーレ、何やってんだ」

「何やってんだじゃねぇよ。こいつが襲われた。裏で俺たちが襲われていたから、こいつは眷属を向かわせたんだ。だが、なぜだかこの有り様だ。理由はまだわからない」

なんだと?

その時、今までで一番大きな姿のフラットが入り口を入ってくる。背中にあいつらをのっけて。

「とりあえず、厩舎に俺たちを襲ったやつらをひっくくってる。うちの連中が見張ってるから連れに行ってくれ。で、どこか場所を貸せよ。このままじゃ治療もできんだろ」

おう、と食堂に向かって声を張り上げる。

「そこのSランク二人、そうお前らだ。裏にいって冒険者が見張ってる悪いやつ連れてこい。俺の部屋だ、早く行け!」

うっす、と立ち上がったのはでっかい二人だ。

出て行ったと言うことは裏に向かったんだろう。それにしても、かなりきつかったんだね、あのスタンガン。

皆が気になって失敗した。


「ソファに寝かせるか?」

「いえ、大丈夫です。座っていいですか?」

マックスさんは僕を抱いたまま腰を下ろした。

フラットは隣りに座って顔をのぞき込んでくれる。

「で、どうした?」

「ナギのことは本人に聞くまでわからん。こいつがこれくらいのやつにやられるわけない。何かあったはずだ。それと裏にいたやつらは俺たちが馬を下りた時、どっかから現れた。っていうか、こいつら治療しなきゃ血が流れすぎて死ぬぞ。治療師は?」

いない。

「回復魔法が使えるやつは?」

いない。

「なんでいないんだよ。じゃあ、しょうがねぇな。死ぬまで待てばいい」

そうだな、と頷くギルマスだけどいいのかよ!

二人の会話で少しだけ楽になった。

フラットに手を伸ばして、顔を撫でれば、心が溶けていく気がした。

転生した少年は三歳から冒険者生活始めました。

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