テラーノベル
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意識が覚醒するのと、隣で眠っていたはずの黒羽が身じろぎするのとは、ほぼ同時だった。
俺は気づかないフリをして、寝息を立て続ける。
やがて黒羽は静かにベッドから抜け出すと
バスルームの方へと消えていった。
微かに聞こえるシャワーの音。
新一(…今だ)
この数日間、俺がただ無気力に飼いならされていたとでも思っていたのだろうか。
黒羽が油断する瞬間を、俺はずっと待っていた。
痛む体に鞭打ちゆっくりとベッドから這い出る。
足音を殺し、部屋のドアへと向かった。心臓がうるさいほどに脈打っている。
頼む、鍵がかかっていませんように。
ガチャリ。
幸運にもドアノブは回り施錠されていなかった。
黒羽は完全に俺を支配したと思い込み、警戒を解いていたのだ。
慎重にドアを開け、廊下へと滑り出る。
見慣れないマンションの廊下。
だが、今はただ出口だけを目指す。
リビングを抜け、玄関ドアが見えた。
希望の光だ。
だが、そのドアは最新式の電子ロックで固く閉ざされている。
新一「クソっ…!」
暗証番号か、専用のカードキーがなければ開かないタイプだ。
万事休すか。
諦めかけたその時、リビングのローテーブルの上に、無造作に置かれた黒羽の私物が目に入った。
財布、キーケース、そして、
見慣れた俺のスマートフォン。
新一(あいつ…!)
シャワーを浴びる、ほんのわずかな時間。
その慢心が命取りになると思い知らせてやる。
俺はテーブルに駆け寄り、キーケースからカードキーを引き抜くと、自分のスマホをポケットにねじ込んだ。
震える指で玄関のパネルにカードキーをかざす。
ピッ、という電子音と共に、重いロックの解除音が響いた。
やった…!
すぐさまドアを開け、外へと飛び出す。
マンションの廊下を走りエレベーターホールへ。
ボタンを連打し、到着を待つ。
その数秒が、永遠のように感じられた。
チン、という軽快な音と共に扉が開く。
中に乗り込み、即座に『1F』のボタンを押し、『閉』ボタンを連打した。
ドアが閉まり、箱が下降を始める。
自由が、すぐそこに。
安堵の息をついた、その時だった。
快斗「…どこ行くんだよ、新一」
エレベーターの隅の暗がりから、冷たい声が響いた。
心臓が凍りつく。
振り返ると、そこには髪から水を滴らせ、バスローブ一枚を羽織っただけの黒羽が、腕を組んで立っていた。
新一「なッ…」
新一(なんで…ッ)
快斗「なんで?って顔してるな。」お前が俺の元からいなくなるなんて、考えただけでゾッとする。だから、お前のスマホにはGPSを、そしてお前の体には…もっと高性能な発信機を埋め込ませてもらったんだよ。初日の夜にな」
黒羽は悪魔のように微笑むと、ゆっくりと俺に近づいてきた。
快斗「俺がどれだけお前を愛してるか、まだわかってくれねぇんだな」
エレベーターが1階に到着し、ドアが開く。
だが、俺はもう一歩も動けなかった。
黒羽の放つ静かな怒りに、体が完全に竦んでしまっている。
快斗「いい子にしてると思って、少し自由にさせてやったのが間違いだったか…。やっぱり、ちゃんとしつけ直さねぇとダメみたいだな」
強い力で腕を掴まれ、エレベーターの外へと引きずり出される。
誰もいない深夜のエントランスホールを抜け、ゴングが鳴り響く非常階段へと連行された。
新一「やめろッ…!離せ…ッ!!」
快斗「もう二度と離さねぇよ。お前が俺から逃げられないってこと、その体に、骨の髄まで教え込んでやる」
非常階段の踊り場で、俺はコンクリートの壁に叩きつけられた。
快斗「俺を裏切った罰だ。今ここで、お仕置きしてやる」
黒羽はそう言うと、羽織っていたバスローブの帯を滑らかに解いた。
露わになった彼の肉体は、完全に臨戦態勢に入っている。
快斗「ここなら、誰にも見られない。誰にも助けを求められない。お前がどれだけ啼いても、俺の声しかお前の耳には届かない」
新一「やめろ…!こんなところで…!」
快斗「お前が悪いんだぜ、新一。俺から逃げようとした、お前がな」
一度掴みかけた自由は、脆くも崩れ去った。
逃亡の代償は、あまりにも大きい。
コンクリートの冷たい壁に背中を押し付けられ
俺はこれから始まるであろう地獄を前にただ絶望に打ちひしがれるしかなかった。
黒羽の狂気的な愛情は
もはや誰にも止められない。
完結ー!!
こんな展開になりました!めでたしめでたし(¿?¿?)
コメントよろしくねん!ㅅ
コメント
4件
毎回終わり方が好きすぎる〜、 主様の才能ありすぎて泣きそうです、😭
完結お疲れ様です !! ✨ 最後まで本当に最高でした !! ✊🏻 ̖́-