※小学生の頃の作品です
東京渋谷区のスクランブル交差点、まだ早朝なので人が少ない(といっても、100人以上いる)その近くで、まだ小さい男の子をを連れたお母さんが、空に向けて指を指していた。その姿を、一匹の老いた犬がじっと見ていた。犬は、”なにか”を渦巻かせながら、昔のことを思い返していた…。
第二次世界大戦中、ペットなどの動物は排出の対象━つまり軍隊に提出する必要がありました。
もちろん犬も例外ではありませんでした。
隣の子犬は、まだ生まれて間もない間にどこかへいった。
もう一つ隣の友達の犬も、さらに隣の犬も━
運よく最後まで残っていた犬の家にもやつらは、やってきた。
「ドンドン!」
吼えるような大きな音が聞こえ、兵隊たちが部屋の中へ入ってきた。兵隊たちはここの家に犬がいることを知っていたようだ。犬はキャンキャン泣きながら飼い主であるたけしの後ろへすかさず隠れた。たけしは、泣きながら
「無理です…。お許しを…。」
と言い続け、連れていかないでくださいと懸命に頼み続けていた。が、そんなことは全く聞いていないかのように、兵隊たちはどんどん近づいてきた。
左腰に三十年式銃剣をつけて━
犬は恐怖のあまり一人の兵隊に噛みつき、戸口をぶち壊し、”力の限り”逃げた。途中で犬の体に”強い衝撃”が走った。
それでも恐怖を力に犬は、逃げた…。
犬は、途中で、思い返すのを、やめた。
日本は、戦争に、負けた。
たけしは、動揺していた兵隊に、刺し殺された。
たけしは、今頃、犬の、ことを、恨んで、いるのかも、しれない。
あの子犬は、なぜ、連れていかれたのだろう。
たけしの、死は、何の、意味が、あったのだろうか。
やはり、犬の心の中では、”なにか”が渦巻いていた。
犬は、もう一度お母さんと男の子を見た。そしてふと、思った。
お母さんは何を指しているのだろう?犬はお母さんが指し示している方向を見た。
風船だ!
犬は長年大きく開いていなかった目を見開いた。
犬は、今まで心の中で渦巻いている
“なにか”
が、わかった。この世が平和になってるかということだ。犬は、安心したようだ。
戦時中だったら指しているものは…
犬は、考えるのをやめた。
そして、指の指す方向へ━新しい世界へと、羽ばたいた。
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