秋田×岩手。友人からのリクエストです。
愛知県民から頼まれたらね…書くしかないよね…
「……おかわり」
岩手が炊き立てのご飯をよそっていた時だった。秋田が空になった茶碗を差し出してきた。その動作があまりにも自然で、まるで家族のように見える。
「またか。お前ほんとに良く食うな」
岩手は溜息混じりに言いながらも、微笑んで茶碗を受け取った。熱々の白米を山盛りによそい返すと、秋田の目尻が微かに下がった。
「岩手の飯は特別だ。他の奴のは食えねぇ」
「大袈裟な」
苦笑しながらそう言いつつも岩手は満更でもない様子だ。台所から持ってきた煮物をテーブルに置くと、秋田の前に座る。向かい合う二人の間に流れる空気は穏やかで、どこか甘い。
「……今日の晩飯は何にする?」
岩手が尋ねると、秋田は箸を止めずに答えた。
「なんでも良い。岩手の好きなものなら」
「またそれか。いつも聞いてんだから少しは考えろ」
呆れたように言う岩手だが、その声には優しさが滲んでいる。秋田はふっと目を細めて言った。
「考える必要はない。全部岩手の作ったものなら美味いからな」
そのストレートな言葉に岩手の耳がかすかに赤くなる。照れ隠しのように視線を逸らした。
「……明日は休みだからな。何か作り置きしておくぞ」
「それは助かる。また遅くなりそうだ」
「遅い時は連絡しろよ。鍵は持ってるだろうけど」
岩手が言うと、秋田は僅かに首を傾げた。その仕草に岩手は微かに眉をひそめる。
「また忘れてきたのか?あのキーホルダーの付いたやつ」
「……忘れた。次からは必ず持ってくる」
「まったく。次からは忘れんなよ」
岩手の冗談に秋田は真剣な表情で応じた。
「当然だ。俺は岩手の婿になる男だからな」
「はいはい」と笑いながら岩手は肩を竦めた。「その話はもう何百年も聞かされてる」
窓から差し込む夕日に照らされながら二人の影が重なる。
「…秋田、今日仕事だろ?時間は大丈夫なのか?」
「まだ平気だ。あと15分ある」
腕時計を見ながら答える秋田に、岩手は小さく頷いた。そして立ち上がりながら言う。
「じゃあ後片付けしておくから先に行け。車に鍵入れるぞ」
「悪い」
申し訳なさそうに頭を下げる秋田に、岩手は軽く手を振って見せた。
「気にすんな。それが嫁の務めだろ?」
少しからかうような口調に秋田の目が一瞬輝いた。
「ああ。世界一の妻だ」
まっすぐな眼差しで告げる秋田に、岩手は思わず噴き出した。
玄関まで送り届けると、秋田は靴を履いて振り返った。
「行ってくる」
「ああ。気を付けてな」
秋田が一歩外に出ようとして動きを止めた。不思議そうな顔をする岩手を見上げて秋田が言った。
「やっぱ仕事行きたくない」
「……バカなこと言うなよ…」
「本気だ」
秋田の真剣な声に岩手は困ったように笑った。
「仕事があるだろうが」
「岩手といたい」
「帰ったらいくらでも一緒にいられるだろ」
「今がいい」
駄々っ子のような秋田に岩手は小さく溜息をつく。しかしその表情は柔らかいままだった。
「わかったわかった。ちょっとだけな」
そう言って岩手は身を屈めると秋田の頬に唇を当てた。ほんの一瞬の温もりを感じるような軽い接触。
「これで我慢しろ」
「……足りねぇ」
「贅沢言うな」
拗ねるように言った秋田に岩手は苦笑いしたが、すぐに表情を引き締めた。
「早く行け。本当に遅刻するぞ」
「……わかった」
渋々といった様子でドアを開ける秋田の背中に岩手が声をかけた。
「秋田」
振り返った秋田の目に映るのは優しく微笑む岩手の姿。
「愛してる」
静かな部屋に響いたその言葉に秋田の目が見開かれた。次の瞬間、秋田の腕が伸びてきて岩手を抱き寄せた。強く抱き締める腕の中で岩手は安堵の吐息を漏らした。
「俺もだ。一生離さんからな」
耳元で囁かれた誓いに岩手は目を閉じる。
「知ってる」
短い返答の中には長い年月で培われた信頼が詰まっていた。
しばらくして秋田が体を離すと、名残惜しそうに呟いた。
「……やっぱり行きたくない」
「お前なぁ……」
呆れ顔の岩手を見て秋田は僅かに笑みを浮かべた。そして一度深呼吸すると玄関のドアノブに手をかける。
「じゃあな。なるべく早く帰る」
「ああ。気をつけて」
「留守番よろしく」
「当たり前だ。旦那様の帰りを待つのが妻の役目だからな」
からかうような岩手の言葉に秋田は初めて本心からの笑顔を見せた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
ドアが閉まる音と共に、部屋の中には再び静寂が戻ってきた。しかし岩手の胸の中に灯った温もりは消えなかった。彼は小さく息を吐き出すと、窓際へ歩み寄った。そこから見える小さな庭に咲く紫陽花が風に揺れている。
「まったく……本当にしょうがない奴だな……」
独り言ちる彼の瞳は柔らかく微笑んでいた。
秋田は職場に向かう電車の中で鞄の中を探っていた。そしてキーホルダー付きの鍵を取り出し、握りしめる。
(絶対に早く帰る)
その決意を込めて掌に鍵を押し付けると、秋田の口元が僅かに緩んだ。車窓に映る自分の顔にはいつになく穏やかな表情があった。
「ただいま」
夜になって玄関の扉が開く音とともに秋田の低い声が響く。岩手は台所から顔を出し、鍋をかき混ぜていた手を止めた。
「おかえり」
「腹減った」
玄関先で立ち尽くしていた秋田が呟くように言うと、岩手は鍋から匙を差し出して言った。
「味噌汁飲むか?ちょうど出来たところだ」
「もらう」
秋田は靴を脱ぐのももどかしそうに近づき、岩手の差し出した匙を受け取った。
一口含むと、「うまい」と短く感想を漏らす。
「今日は寒かったからな」
岩手が言うと秋田は小さく頷いた。いつものように夕飯を終えて、リビングでくつろいでいると秋田がふと思い出したように岩手に向き直る。
「岩手」
「なんだ?」
「結婚しよう」
突然のプロポーズに岩手は一瞬動きを止めた。しかしすぐに肩を竦めて笑った。
「今さらなに言ってるんだ」
「いや……改めて言いたくなった」
秋田の真摯な眼差しに岩手は穏やかに微笑む。
「ずっと昔から夫婦みたいなものだろうが」
「それでも正式にしたい」
「まぁ……そのうちな」
曖昧な返事に秋田の表情が曇る。そんな彼の様子を見て岩手はため息をついた。
「そんな顔するな」
「嫌なのか?」
不安げに問いかける秋田に岩手は真剣な眼差しを向けた。
「違う。ただ……」
少し考えてから続ける。
「今の生活が気に入ってるだけだ。お前と一緒にいるこの時間が幸せだからな」
その言葉を聞いた瞬間、秋田の瞳が輝いた。
「なら一生一緒にいればいい」
「ああ」
力強く頷いた岩手の腕を秋田が掴む。そしてそのまま引き寄せられた岩手の唇が奪われる。
触れるだけの軽いキスではなかった。深く求め合うような熱情的な口づけだった。長い時間をかけてお互いを求め合い、ようやく解放された時には二人とも息が乱れていた。
「……いきなりだな」
「悪い」
謝罪しながらも秋田は岩手から離れようとしない。
「もっと……触れ合いたい」
耳元で囁かれれば拒む理由などありはしなかった。
「ここでか?」
「ダメか?」
「……いいや」
岩手の答えを聞くや否や秋田の手が岩手のニットの裾から侵入してきた。その冷たい感触に岩手は小さく身震いする。
「冷たっ!」
抗議の声を上げると秋田は悪戯っぽく笑った。
しかしその笑みも束の間のことだった。すぐに真面目な表情に戻って岩手の身体を撫で始める。
ゆっくりとした愛撫の手つきに岩手は吐息を漏らした。
「……ベッドに行くか?」
「ここでもいい」
そう答える秋田の手が岩手のベルトに掛かる。
「んっ……」
布地越しに刺激されて岩手の腰が浮く。それを逃さず捕まえると秋田はさらに強く擦り上げた。
「あぁ……ッ」
敏感な箇所への直接的な刺激に岩手の喉から抑えきれない声が出る。
「気持ち良さそうだな」
嬉しそうに言う秋田に対して岩手は何も言い返せない。ただ与えられる快楽を受け入れることしかできないのだ。
「可愛い……」
「……お前の方がよほど……可愛いだろうが」
苦しげな呼吸の中から漏れ出た言葉に秋田は首を横に振った。
「違う。俺なんかより岩手の方がずっと綺麗で可愛い」
そう言って彼は岩手の額にキスをする。
2人の夜はまだまだ終わりそうにない。
途中で力尽きて変な終わり方になっちゃいました。
ごめんね友人、リクエストありがとう!
コメント
1件
リクエストいいですか?! 山形総受けください…!