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「あぁあああああ!?!?!?」
ある日の早朝、ガッチマンの大声が家に響いた。その後何かドタバタと音がするも寝室に居たキヨの元へ訪れることも無くリビングで物音が響いていた。キヨは痛む腰を労りつつもベッドから抜け出しリビングへ足を運んだ。
「……何してんのガッチさん。」
寝ぼけ眼を擦ってリビングに向かえばボストンバッグを広げたガッチマンがいた。
「挨拶だよ、俺の両親に。キヨの両親には言ったけど俺の両親に伝えてないでしょ??」
「……あー…結婚すること?」
「そう、だからほら、早く行かなきゃ。」
「んん゙…今から?」
「善は急げだよ。」
* * *
「俺と一緒に行くって連絡はしたの?」
「したよ、見たかは知らないけど。」
そうひっそり話し合った後、ガッチマンは実家の扉を開いた。
「ただいま、」
「お邪魔します。」
「あら、キヨくん?」
「あぁ、はい、ご無沙汰してます。」
「なんだ、キヨくんも一緒か。」
「あはは、失礼してます…」
「連絡したのに、見てなかったの?」
「見方がイマイチわかんなくてねぇ…」
「あぁ…そっか、これから電話するようにするよ。」
ガッチマンは靴を脱ぎながらそう答えては東京のお土産を引き摺り出して両親に渡した。お母さんは喜んで土産を受け取り、昼食を作り始めた。その間父を含めた3人で談笑して居ればあっという間に時間が過ぎ、昼食が机に並べられた。そこでガッチマンが口を開く。
「報告があるんだ」
「あら、どうしたの?」
「俺、結婚するんだよね。」
「えぇっ!?」
「え、キヨくんは知ってたのか?」
「あぁ、はい。僕も結婚するんで。」
「えぇえっ!?」
驚きっぱなしの両親。しかし母親はすっかり恋話モードに切り替わったのか頬に手を当てながら問い掛けてきた。
「2人は誰をお嫁に貰うの??」
2人はお互いを指さし、
「俺が、キヨと。」
「僕が、ガッチさんと。」
「「結婚する。/します。」」
恋話モードの母親も驚きっぱなしの父親も2人して口を開けたまま固まった。…が、先に動いたのは父親だった。机を叩き付け勢いよく立ち上がればガッチマンの胸ぐらを掴む。
「何考えてんだ!?!?」
「言われると思った、でも俺らはもう決めたんだ。」
母親はキヨの肩を抱いてはガッチマンから引き剥がす。
「いくら年下で敬ってくれるからって調子に乗ってるんじゃないぞ!!」
「調子になんて乗っ…てるかもしれないけど、俺らはちゃんと愛を確かめあった!!」
「行き過ぎた友愛だろう!?目を覚ませ!!歳下を誑かしてるんじゃない!!」
離れたところで父親とガッチマンの口論を見ていたキヨは母親から優しく頭を撫でられた。
「ごめんねぇ、キヨくん…、うちの子が変に誑かしちゃって…」
「あ、あの…僕、ちゃんとガッチさんのこと好きです…」
「ううん、貴方は今夢を見てるだけなの。すぐに目が覚めるから、ほら…」
「いえ、僕はガッチさんと結婚します。」
「誑されて…もう……」
キヨは母親の拘束を振りほどいてはガッチマンの元に走った。そしてそのままガッチマンに抱き着けば父親と母親両方を見ながら声を上げた。
「僕は、!ガッチさんと結婚します!愛は確かめあったし、紆余曲折も沢山ありました!!貴方達が言うように行き過ぎた友愛だとか、男性同士だとか、認められないだとかも話し合った上での互いの了承です、!!」
「…だが……キヨくん…」
「キヨくん。」
母親の冷たい声が今を貫いた。キヨは少し肩を跳ねさせ母親に目を向けた。
「少し、来なさい。」
キヨは目を泳がせながらガッチマンに抱き着く腕を強める。
「キヨくん。来なさい。」
圧によって離れた身体からは一瞬で体温が奪われて行く。キヨは未だに視線を着地させることなく右往左往させている。そのまま母親に連れられては居間を後にした。ガッチマンは連れていかれたキヨが気になったし、キヨも父親と二人きりになったガッチマンが気になって仕方が無かった。
「キヨくん、ちゃんと説明してちょうだい。うちの子との間に何があったの?」
きっぱり。そう告げられた言葉は罵りだとか、軽蔑の意は無くただ全てを知りたがった声色だった。キヨはぽつりぽつりと言葉を紡ぎ、1から100まで全てを話した。
「…そう、わかったわ…」
母親は優しくキヨを抱き締め背中を叩いた。
「幸せに…なりなさい。うちの子がなにかしたらすぐに言うのよ。」
認められた。その想いがキヨの胸に広がっては鼻を鳴らした。
「はい…お義母さん…。」
* * *
今に戻ると壁に追いやられたガッチマンが父親から説教を受けていた。その光景を見た母親は父親の説教を遮るように声を上げる。
「ガッチマン。」
ガッチマンはふと母親に顔を向ける。普段は呼ばない活動名。名前すら呼べないほど軽蔑したか、そう思ったガッチマンは1歩近付き必死に話し始めた。
「俺はちゃんとキヨを幸せにする。それは俺にしか出来ない事だと思ってる。キヨのことをしっかり考えてあげるし、キヨのためならなんだってする。だからお願い、お願いします…。」
「えぇ、分かったわ。キヨくんから全てを聞きました。」
頭を下げていたガッチマンは勢いよく顔を上げた。母親は笑顔を浮かべていて、認められたと感じたガッチマンは頬を弛めた。
パチンッ__
乾いた音が今に響く。次いで低い呻き声。次いで誰かの驚く声。
「母さん!?」
初めに沈黙を破ったのはまたしても父親だった。ガードなんてしてなかったガッチマンの頬は赤く腫れ上がっていた。───叩かれたのだ。母親に。一発キツめの平手打ち。
「これくらいの覚悟はあったんでしょう?」
「…勿論、あったよ。」
あったとは言えど痛そうな音、そして目に蓄えられた涙。こりゃあ後で慰めないとな、キヨは直感的にそう思った。
「…さ、それならご飯にしましょ。沢山話を聞かせてちょうだい。」
次こそ優しく笑った母親はガッチマンを抱き締め優しく背中を叩いた。キヨにしたように__。
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#サスペンス