あの地獄の大戦が終結した。
二人の我が子は傷を負ってしまい、『国』という存在である私もひどい身体になってしまった。
大日本帝国は負けたのだ。
終結して何ヶ月か経ち、家に『アメリカ』が来た。その『アメリカ』と名乗る男も「国」という存在として今を生きている。殺してしまいたいほど憎い敵国が目の前にいるのに何も出来ない。
「すまんな、色々あってすぐに来れなかった。」
「それにしてもお前の子ども達は元気だなぁ、怪我をしているのにあんなにはしゃいでいる。」
「お前、『パラオ』と知り合いだったろ。俺もこの前会ってきたんだ。」
『アメリカ』が私に話しかけているだけの時間が数分続いた。話題が定まっていないようだった。『アメリカ』が何の用もなく家に来るはずがない。
「…何をしに来たのだ。早く言え。」
そういうと『アメリカ』はしばらく黙り、話しはじめた。
「お前の子ども達はしばらくうちで預かる。二度と戦争を起こさないために教育するんだ。」
子ども達が鬼畜どもに連れ去られる。納得するわけがない。
「…やめろ。子ども達には私の意思を継がせる。大きく成長した時はお前達を殺しに…」
「お前は子ども達の平和を願わないのか?」
『アメリカ』が急にそう話した。
私達、軍人は未来の国民のために戦ってきたのだ、平和で優しい世界を歩んでほしくて戦ったのだ。『アメリカ』が考えた平和など…。
「子ども達に俺達への憎しみを教え込んだって平和はずっと来ないさ。また新しい戦争が起こるだけだろ。」
「…」
何も言い返せない。
『アメリカ』に言い返すことができない今の自分に腹が立ってしまう。
…心すらも弱ってしまったのだろうか。
「しかも、今あの子達をお世話できるやつなんていないだろう?お前の身体は動かないし、お前の奥さんも大戦前に病気で先に逝っちまったって聞いたぞ。」
…私の妻か、今は天国で楽しく暮らせているのだろうか。
『アメリカ』と長い話していると、昔のことも思い出してきた。
はじめて『国』となった日の緊張。
帝都で出会った初めての恋。
軍に入り意気投合した今は無き友。
同盟国らとくだらない話をした日。
離れた島で出会った青い髪の少年。
ひとつずつ想い出すたびに
世界が
だんだん
くらくなる
1947年5月
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