「最近若井ってお酒弱すぎない?」
そんなことを急に言い出したのは涼ちゃんだった。いきなり突拍子もなく当たり前のことを口にするもんだから無意識に「そりゃあね。」と言ってしまった。そう。若井はお酒に弱い。メンバー、サブメンバー限らずスタッフさん達も知っているくらい当たり前のこと。
最近というかずっと。今更何を言うんだ。でも涼ちゃんの事だし頭の中に出てきたことをそのまま口にしただけだろうと思った。だからその時はあまり気にしないでいたけどその言葉を思い出したのはその五日後。久しぶりに涼ちゃんと若井の2人で居酒屋に行った時のことだった。
ちょうどしきりがあるタイプの居酒屋だったし久しぶりでもあったので異常に盛り上がった。その時だけはお仕事の話は一切無しで楽しく飲もうという事だったので最近買ったブランドだとか人気のコスメとかの話をした。ふといつもは酔ってめんどくさくなる若井の声が聞こえない。そう思い若井の方向に目をやると片手にお酒のグラスを持ち、やたらと顔を赤らめて目が虚ろになっていてぼーっとしている状態だった。熱でもありそうな感じだったから「大丈夫?具合悪い?」と声を掛けてみた。すると僕にだけ聞こえるような小さな声で
「…元貴は俺のこと好き…?」
なんて聞いてきた。いつもは酔って態度がでかくなるのに対して今回はやたらと甘えん坊みたいになってた。まぁそれもそれで面倒臭いからその時は適当に「はいはい好きだよ」って言って流した。
でもその後涼ちゃんの言葉を思い出した。若井のお酒事情は絶対と言っていいほど僕がいちばん知ってるし詳しいけどこのパターンの酔い方は初めて見た。最近酔いやすくなってるのかな。それも意味わかんないけど。段々弱くなることってあるんだ。強くなるんじゃないんだ。
そんなことを思っていたら拗ねたような顔をした若井がゆっくり体を近付けてきて僕を押し倒した。もちろん僕も涼ちゃんもびっくり。それでも気にせず口をムッとさせ少し怒った口調で「ほんとに……?」と言ってきた。まるでご主人様にかまって欲しい猫の様。突然の展開に訳が分からなかったし涼ちゃんの目の前でもあったのでとりあえず冷静に体を起こしお酒が入ってあまり力が入っていない若井を簡単に退かした。
「めっちゃ酔ってんじゃん。だいじょぶそ?」
と言って心配してくれる涼ちゃんを無視して若井はまたぼーっとして僕の方を見てムスッとした顔をしていた。僕も冷静でいようとしたけど内心心臓バックバク。押し倒された瞬間から何故か心拍数が上がっていた。僕は彼に押し倒されたことに正直興奮してしまっていた。”いつも”はそんなことしてこないから涼ちゃんにバレないようゆっくり深呼吸をして心を落ち着かせようと思った時、涼ちゃんのスマホが鳴った。
「っあ、ごめん 」
涼ちゃんは慌てて電話に出るため店から出ていった。お酒も回っているし色んなことが起こりすぎて頭が困惑気味。小さくため息をつく。すると今まで黙ってぼーっとしていた若井が突然
「…好きならちゅーして…」
「…はぁ?」
思わず出てしまった。若井の顔を見ると涙目で手に力を入れて体がぷるぷる震えていた。なんか申し訳なく感じてしまった。これ以上彼の黒歴史を作らせないように酔いを覚まさせようと
「若井酔いすぎ。水飲んで」
と水を飲ませようとした瞬間若井がさっきよりも近付いてきて僕の口に柔らかくキスを落としてきた。照れ隠しのような初心者のキス。ふわっと若井のいい匂いとお酒の匂いが僕の嗅覚を刺激した。その時今まで冷静であろうとした僕の理性は限界を迎えた。
僕は彼を押し倒し両手を掴んで身動きが取れないようにしてさっきよりも深いキスをした。舌を入れると若井は体をビクッと震わせたがあとは僕に身を委ねるように同じように舌を入れてきた。卑猥な水音が騒がしい居酒屋にいてもはっきり聞こえる。薄く目を開けて若井の顔を伺うと目を瞑って僕の上着を無意識に握っていた。
「んぅ…♡あぅ…ッ ふ♡」
彼の甘い声が僕の耳に届く。辞めるに辞められず貪り食うように若井の口内を犯していく。上顎や歯茎をなぞってみたりした。ビクビクと体を震わせて快感に頑張って耐えている彼を見て興奮が収まらない。傍から見れば僕が彼を無理やり犯しているような構図になっている。そう思った瞬間に”そういえばここ居酒屋じゃん”と我に返り咄嗟に口を離す。
「……もときぃ、// ? 」
若井はまだ足りないと言わんばかりの表情で僕に訴えかけてきた。確かに若井は軽いキスをしただけで押し倒したのもDキスをしたのも僕だから僕がここまでのムードを作り上げてしまった。だから一応謝っとこうと思って
「ご、ごめん…」
って言って若井の体を起こさせた。静かで気まづい瞬間が流れる。すると部屋の扉が開いて涼ちゃんが電話から戻ってきた。
「ごめんごめんっ!長くなっちゃった! 」
さっき起こったことを知らない涼ちゃんは明るい声で僕らに声をかける。逆に有難かった。その後は若井とはあまり話さず、話しかけられもしなかったのでそんな感じでその日は終わった。このことがあってからみんなで飲む時は若井の隣を涼ちゃんにした。何故か涼ちゃんならいつものようにウザ絡みのような酔い方をするし酔いが覚めたら通常の若井に戻る。
あの時の若井が別人と思うほど今は普通に接してくるからあの時のことを本当におかしく感じた。思い切って聞いてみようと思ってデリカシーを捨てて直接若井に聞いてみることにした。
するとそのことを聞いた若井は一気に耳を赤くしてぼそっと言った。
「いや…元貴、最近冷たいなって…寂しかったから//」
どうやらお酒の力を借りれば僕に甘えられると思ってのことらしい。さすがに可愛いかも。甘え下手なんだなと思わずクスッと笑ってしまった。でもそんな理由であんなアクシデントを起こすんじゃないよ。あれを甘えと捉えてしまうのは甚だ疑問だけども。冷たくしてるつもりはなかったんだけど彼にそう思わせてしまったのは申し訳なさがあるので
「今度僕の家に来たらいっぱい甘えさせてあげるよ」
と軽いジョークを言ってみたら「いいの…?」と照れた顔して言うのでこれ多分期待してるな…?と思った。てか確定だと思うので家に来たら泣くほど可愛がってあげようと思う。そろそろ僕も耐えきれないからさ。覚悟しててね。若井。
コメント
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いや若井さん可愛すぎか…😇 読んでる間ニヤニヤが止まりませんでした笑 ていうか全然関係ないんですけどアイコン変えられたんですね!!素敵です✨️