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第一章:雨の裏山と、異界の落とし物
その夜の雷雨は、まるで世界そのものが悲鳴を上げているかのように激しいものだった。
紫色の不気味な稲妻が夜空を何度も切り裂き、轟音が遅れて窓を揺らす。
雷豪あお(らいごう あお)は、自分の部屋の机に向かったまま、頬杖をついて窓の外を眺めていた。スタンドライトの淡い光が、小学生とは思えない整った彼の横顔を照らしている。学校ではその冷静沈着な佇まいとクールな性格から、女子生徒たちの間で絶大な人気を誇る彼だったが、本人はそんな周囲の喧騒などどこ吹く風だった。
「……今の光、ただの雷じゃないな」
あおは鋭い目を裏山の方向へと向けた。
落ちる直前、一瞬だけ空間がガラスのようにひび割れ、そこから眩い光の球が吸い込まれるように地へと墜ちていくのが見えたのだ。
胸をざわつかせる奇妙な予感に突き動かされ、あおは傍らにあった上着を掴むと、静かに部屋を飛び出した。
雨の降りしきる裏山は、不気味なほどに静まり返っていた。
懐中電灯の細い光だけを頼りに草むらをかき分けて進むと、突然、目の前の視界が開けた。木々がなぎ倒され、地面に真新しい巨大なクレーターが出来上がっている。
その中心に、誰かが倒れていた。
「おい、大丈夫か……っ!?」
あおは駆け寄り、泥にまみれたその体を仰向けにした。
まだ幼さの残る少年だった。だが、彼の顔を見たあおは、息を呑んで動きを止める。
少年の頭の上には、雨に濡れて力なくへたれてしまった、本物としか思えない『狼の耳』がついていたのだ。
「……チッ、熱があるな」
あおは一瞬だけ驚きに目を見開いたが、すぐにいつもの冷静さを取り戻した。コスプレにしてはリアルすぎる。だが、呼吸の荒い少年をこのまま嵐の中に放置するわけにはいかなかった。あおは少年を背負うと、黙って雨の坂道を歩き始めた。
あおの部屋のベッドの上で、少年はゆっくりと目を覚ました。
おでこに貼られた冷却シートの冷たさに眉をひそめながら、あたりをキョロキョロと見回す。そして、自分の頭の上に手を伸ばし、二つの耳をペタペタと触った。
「……ん……ぅ……。んどこだここ?」
部屋の壁に寄りかかり、腕を組んで見下ろしていたあおと、少年の視線が真っ向から交差する。
少年はベッドから勢いよく飛び起きると、あおの目の前まで顔を近づけた。先ほどまでへたれていた頭の上の狼耳が、今は嬉しそうにぴょこぴょこと激しく揺れ動いている。
「あ、名前! 名前は〜月狼ルフ(げっかみ るふ)! よろしく! あとの事は忘れた!」
あまりの距離の近さに、あおはわずかに眉をひそめながらも、深くため息をついた。
「……お前の名前は?」
「雷豪あおだ。お前、自分の名前以外は本当に何も覚えてないのか? どこから来たとか、その耳の事とか」
あおの問いかけに、ルフは狼耳をパタパタと傾げながら、屈託のない笑顔を浮かべた。
「うーん、ぜーんぶ忘れた! でも、あおの事はなんか好き! よろしくね、あお!」
「……はぁ。調子が狂う奴だな。記憶がないなら仕方ない。夜も遅い、おとなしくそこで寝てろ」
あおはぶっきらぼうに毛布をバサッとルフの頭から引っかけた。ルフは毛布に包まれながらも、まるで新しいおもちゃを見つけた子犬のように、嬉しそうに目を輝かせてあおを見つめ続けていた。
この少年が、歴史の表舞台から完全に消し去られた『創生の神』であるなど、この時のあおは知る由もなかった。
きょう
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コメント
1件
おお、第1話読んだわ! 雨の裏山に狼耳の少年が落ちてくるって、異世界転移ものの導入としては王道だけど、あおの冷静なキャラとルフの無邪気さの対比がもうすでに効いてて面白いな。ルフの「あおの事はなんか好き!」って台詞、狼耳ぴょこぴょこ動かしながら言う姿がめっちゃ想像できて笑った。最後の『創生の神』って伏線も気になるし、続きも楽しみにしてるわ!