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「月が、綺麗ですね……」
「え?」
「ふふっ、まろには分かんないかぁ。なんでもない」
「じゃあね、まろ」
「ないこ様、お時間です」
「分かってるよ」
今日、俺はとある隣国の姫と結婚する。
もちろんこの結婚に愛情なんて微塵もない。
国のための政略結婚。
俺には意中の相手が居たっていうのに。
ひどいと思わない?
ふと、鐘が鳴り白い衣装に見を包んだ姫が出てくる。
隣に並ぶのは君じゃなくて、青髪の、俺の大好きな彼がよかった。
なんて思ってももう遅いんだけどね。
あの日君に行った言葉、伝わってるかな。
必死に意味探してるのかな。
「貴方達は互いに愛することを誓いますか」
真っ白な講堂に神父の声が響く。
「「誓います」」
全部嘘だ。
俺が愛しているのは、アイツで。
俺が「愛してる」を貰いたかったのはアイツで。
ねぇ、好きだったよ。
愛してるよ。まろ。
今更遅いかなぁ……。
ないこと出会ったのは15のとき。
半ば強制的に連れて行かれた舞踏会で一目惚れした。
楽しそうに笑う顔、どこか虚ろ気な瞳で飲み物を飲む姿。恥ずかしそうに目をそらす姿。
全部俺に向いてくれたら、そう思った。
初対面なのに。
「っ、あの……!」
気づけば声をかけていた。
「はい……?」
鮮やかな桃色の瞳と目が合う。
動くよりも先に言葉が出た。
「お付き合い頂けませんか、ッ?」
「へっ、……//」
初対面でこれはヤバいなと、今更ながら思う。
それと、
「よ、よろしくお願いします……っ!//」
初対面での告白をOKしたないこもヤバいなと思う。
ないこは隣国の王子らしく、どれだけ舞踏会に出席させても婚約者を連れてこないからと別の国の舞踏会に出席させられたらしい。
王子、と聞いて身分の差も感じたが、それに負けないくらい好きだと思った。
「ん、……まろ、ぉ……」
「ん〜?どしたん……?」
先程までの行為で体力を使い果たしたのか、いつもよりも甘い声で話すないこ。
「すき……」
「うん、俺も」
そう言って頭を撫でれば、むぅ、と頬をふくらませるないこ。
「まろも、いって……」
「え〜……//」
「おーじめーれー……!」
「職権乱用やん、w」
面と向かって好き、というのは少し恥ずかしい。
最初の威勢はどこ行ったんだ、とでも言いたいくらいだが、恥ずかしいものは恥ずかしい。
「じゃあ、……I love you.」
「んぇ、……?」
「ないこの国は英語普及してないもんなw」
「英語とかずるい……っ」
頭をぐりぐりと胸元に押し付けてくるないこ。
ごめんごめん、と謝りながらないこの額に唇を落とす。
「今はこれで許して?な?」
「んぅ、……ぜったい言えよ……」
「はいはい、w」
「は、……なんで……」
国の新聞にデカデカと書かれた文字。
この国の姫と隣国の王子、……つまりないこが、結婚……?なんで、そんな話聞いたこと無かった。
突然のことに頭が混乱する。
そう、これは政略結婚で、……駄目だ。考えられない。
あぁ、あの時のじゃあねはそういうことだったのか?こんなことになるなら、もっと好きって、愛してるって言えばよかった。
今度は、考えるよりも先に体が動いた。
ありがたいことに式場はご丁寧に記されており、ここからそう遠くはなかった。
式場を目指し馬車を飛ばした。
「ふぅ、……」
と深呼吸をし、ドクドクとうるさい鼓動を静める。
別にないこを奪い返そうって訳じゃない。相手は国なんだから、刃向かえるわけない。
ただ、ないこに愛してるって、伝えたいだけなのだ。
窓を覗けば、式場が見える。
また深呼吸をして、心を落ち着かせる。
馬車が止まり、意を決して扉を開く。
その先の真っ白な扉も開けば、その場の全員の視線が集まる。
目の前には、タキシードを着た君の姿。
君の隣に居られたなら、君の晴れ姿を一番近くで見られたのなら。どんなに幸せなのかな。
「すごい、似合っとる。愛してるで、ないこ。」
今までで躊躇ってきた言葉が、今はすらりと出てくる。
ないこは驚いたように目を見開き、すぐに笑った。
あの日一目惚れした、笑顔で。
「俺も愛してるよ、まろ。」
あぁ、
「うん、じゃあな」
好きだったな。
「じゃあね」
再び白い扉を開け、式場を出た。
後ろから聞こえた声。
それを理解してしまったら、泣いてしまいそうになるから。聞こえないフリをして、扉を閉めた。
「今更遅えんだよ、……ばーか。」
※続き書きたいって方ありがとうござます!是非是非……!(主はブラウザ民でコメ返できませんゴメンナ)
コメント
3件
やばい好きすぎます🥲🥲🤍 続き書かせて頂きたい......(欲欲欲)
やばい、目から鼻水垂れてきた… すごい切ない…いつか2人が結ばれるよう願っています
切ない、、でもそれがいい、、😢💓