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この話は今よりもずっと昔、ある村の出来事の話である。
箭括氏麻多智と言う人物が村に新たな新田を作ろうとしていた。
だが新田を作ろうとした場所には、大勢の蛇を引き連れた夜刀神が妨害をしようとしていた。
それに怒った箭括氏麻多智は次々と蛇を打殺し、夜刀神を追い払う。
そして、麻多智は夜刀神にこう言った。
「夜刀神よ!ここは人の地だ!この杖より向こうは神の地とする!そして、夜刀神の為の社を創建し、神として崇めてやる!だから人々を祟るな!」
夜刀神はそれに納得し神の地へ姿を消した。
そして新田は完成し人々は幸せに暮らした。
それから箭括氏麻多智の子孫が代々その社を祀っていたそうだ。
だが孝徳天皇の時代に入り、行方郡を建郡した壬生連麿と言う人物が夜刀神の住む地に池の堤を築こうとした。
すると再び人々の前に夜刀神は姿を現し妨害をしたのだ。
すると孝徳天皇は怒りこう言う。
「民政のための修築であり、王化でもあるが、それに従わないのはどのような神祇か!憚り怖れることなく、全て打ち殺せ!」
そう孝徳天皇は叫んだ。
人々の知らないうちに夜刀神は姿を消していた。
「人は嫌いだ…人は信じぬ…人間を恨み祟り殺してやる!」
夜刀神は森の中にある社に住み着いた。
そして数千年後、1人の少年が痣だらけで社の前で倒れ込んだ。
全て僕のせいだ。
胸が痛い。
きっと救いはないのだろう。
「寒い…お母さん…助けて…」
僕の体に何かが触れる。
暖かくて、大きな何か。
「どこにも行かないで…寂しい…よ…」
少年はそう囁くように言った。
「傷だらけの人は初めて見るな…人を見るのも数千年ぶりだ…」
大きなそれはそう呟いていた。