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yuom ./ 引退
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Ⅵ.遅すぎた言葉
治が異変に気づいたのは、侑が入院してからしばらく経った頃だった。
入院した当時は、
『少し体調が悪いだけや、』
『でも、安静にしとれば退院も早いって、』
そう聞いていたのに、
病室を訪れるたび、侑は痩せていった。
頬がこけて。
声が小さくなって。
以前なら、治が顔を見せるなり文句を言ってきたのに、今はただ笑っている。
その笑顔が、治には怖かった。
「ツム」
「んー?」
「……ほんまに、なんもないんか」
侑は少しだけ目を見開いた。
「何が?」
「病気や」
沈黙が落ちた。
治は、ずっと調べていた。
侑が通っている病院。
面会の時間。
医師から聞ける範囲のこと。
けれど、肝心なことは何ひとつわからなかった。
侑が話してくれないから。
「……俺に言えんことなんか?」
治の声は震えていた。
侑は目を伏せた。
言いたかった。
今すぐ、全部。
怖い。
死にたくない。
もっと生きたい。
お前と一緒におりたい。
お前が好きや。
好きやから、最後までお前の隣にいたかった。
でも。
「……ないよ」
侑は笑った。
「何もない」
治は、その顔を見つめた。
嘘だとわかった。
けれど、問い詰められなかった。
侑がこんな顔をして笑う理由を、聞くのが怖かった。
「……そっか」
治は俯いた。
「……なら、ええわ」
よくなんか、なかった。
全然、よくなかった。
本当は抱きしめたかった。
もう何も隠すなと、怒りたかった。
俺にくらい、頼れと。
ひとりで全部抱え込むなと。
そう言いたかった。
でも、治にも言えない言葉があった。
——好きや。
ずっと好きやった。
お前が好きやねん。
だから、何も言わずにいなくならんといて。
それだけが、どうしても言えなかった。
コメント
1件
うわ……読んでて胸がぎゅっとなったよ🥀 治くんの「よくなんか、なかった」って内心の叫びが、表向きの優しさと裏腹で刺さる…… 好きなのに言えない、問い詰められない、そのもどかしさがじわじわくるね。 侑くんの笑顔がむしろ怖いのに、どっちも相手想いだから余計にすれ違うのが切なすぎる…… 次どうなるんだろう、もう目が離せないよ🌙