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今まで読んできた小説の中で こんなに号泣したのは初めてです( ߹꒳߹ )もう本当に全員が 幸せになったのが嬉しい結末です!! 凄く好きになりました!! 本当に投稿ありがとう ございました!! 主様の作品大好き❤️です!!!
この話っていつ映画化されますか、、、?神すぎる、、、、続きありがとうございました!
?『赤様、起きてください。』
まただ。
また…違う声が聞こえる。
黄くんじゃない。
違う…声…
また…捨てられた?
違う。これは、夢だ。
全部夢。
ほんとは桃くんがずっといて…
黄くんと俺が会うことはなくて…
それでっ……
?『赤様、朝ですよ。』
赤『んぅっ……パチッ』
ぼやける視界の中で見える。
目の前にいるのは黄色髪でも桃髪でもない。
違う人。
夢なんかじゃないこと。
そんなの最初からわかってる。
でもね…ちょっとだけ、ちょっとくらい、希望を持たせてくれたっていいじゃん。
なんで俺は、希望を持つことさえ許されないの?
あの日、桃くんがいなくなった日の悪夢を思い出して、また涙が零れそうになる。
その涙は抑えることなんてできず、一粒だけ、涙が落ちる。
滲んでいた視界は、少しだけクリアになった。そこに見えるのは、見慣れた水色の髪の毛。
だけど、着ている服はいつものTHE王子って感じじゃなくて、今まで桃くんと黄くんが着てた執事のスーツ。
赤『青…ちゃん……グスッ』
青『うん。青だよ。』
赤『なんで…ここにいるの…』
青『前の…赤くんの執事さんの頼みで。』
黄くんが青ちゃんを選んだってこと?
訳が分からない。
し、そもそも青ちゃんがこの場にいるなんてあり得ない。
青ちゃんは俺達の国よりも権力を持った支持率の高い王国の王子だ。
なんでこんな底辺の頭を持った国王の国にいるんだ…
そんなの…青ちゃんのお父様が絶対に許さないはず。
赤『青ちゃんのお父様…怒らなかったの…?』
青『……実は…内緒で来ちゃったw』
赤『えっ…どういうこと!?』
青『いや、お母さんだけには言ってきたよ?ちゃんと…』
赤『…はい!?』
青『だってお父さんに言ったら止められるに決まってるじゃん。』
赤『だからって俺のために来なくていいのに…』
青『赤くんは、桃さんがだーいじに育ててきた子だよ?』
赤『いやそうだけど…』
青『僕だって桃さんに育てられたようなもんなの。』
確かに、よく青ちゃんはうちの国に脱走してきてた。
青ちゃんの国と俺の国は、距離が物すごいあるものの、平然とした顔で走って逃げてくる。
この距離を連れて戻れないもんだから、迎えに来てくれるまでの間、桃くんが俺と青ちゃんの面倒を見てくれていたっていうわけ。
青『ほら、赤様、着替えますよ。』
赤『………』
青ちゃんが王子としての仕事をしているのは見たことがないのに、先に俺の執事として働いているところを見るはめになるなんて。
実感が湧かない。
いつも一緒にいる友達が、俺の執事になること。
何か、変な感じがする。
もちろん、青ちゃんが嫌だっていうわけじゃないけど、青ちゃんだけじゃ補えない何かがある。
きっとそれは、青ちゃん自身もわかってて、だからこそ、ありのままの青ちゃんでいてくれているのだろう。
ふと、桃くんと黄くんに帰ってきてほしいと思うようになってから約1ヶ月。
青ちゃんが来てから1ヶ月が経ったということだ。
いつになっても寂しさは消えない。
でも今はそれでいいと思える。
泣きそうになったときは慰めてくれるし、いつだって側にいてくれる。
そして、必ず
青『あとちょっとだからね。』
そう言う。
何が後ちょっとなのかはわからない。
青ちゃんに聞いても、秘密だよ♡とか言ってはぐらかしてくる。
今日は青ちゃんがいない日。
昨日から伝えられていた。
青『明日、僕お仕事で街に行ってくるので、城にはいませんから。』
赤『それ何回も聞いた!』
青『……(笑)はい、そうですね、』
赤『頑張ってきてね〜』
青『………/』
赤『え、照れてる?』
青『照れてません。』
赤『ごめんなさい。』
どこに行ってるかはわからないけど、
街に行って話してくるんだとさ。
赤『俺には…関係無い…か…』
いつまで経っても変わらない父親の考え。その考えに今まで何人の人が苦しめられてきたか。
考えるだけで俺も苦しくなる。
赤『っさ、仕事しよぉ!』
赤くんに街の人と話してくると嘘をついて、僕は今、とある人の家の前にいる。
青『落ち着け…僕…』
ぴんぽーん…
がちゃっ、
?『……なんで来たんだよ…』
青『桃さん。お久しぶりです。』
桃『青にこの家教えてないだろ…』
青『とりあえず中入りまーす、』
桃『ちょっ、…』
少なくとも赤くんは桃さんと離れてから1年経っている。
僕と桃さんが最後に会ったのは、いつだっただろうか。昔のこと過ぎて覚えていない。
青『何も持ってきてないんですね』
桃『まぁな、』
ほんとは赤くんのこと思い出さないように持ってこなかっただけだったのに、強がっちゃって。
桃『で、なんでお前来たんだよ。』
桃『青に家なんて教えてないしそもそもどこに住んでるかとかも言ってないだろ?』
桃『俺だって暇じゃねぇんだよ…(笑)』
悪態をつきながらも、そっと紅茶を出してくれるところ。
流石だと思う。
そんなところを赤くんは好きになったのかな。
青『僕を誰だと思ってるんですか?(笑)』
桃『まぁ確かになw』
青『…赤くんのところ、戻らなくていいんですか?』
桃『おまっ…知ってんのかよ…』
青『僕赤くんの友達なんですけど…!』
ま、執事だけどね。
今は。
桃『戻りたくないって言ったら嘘だけど…大人の事情?(笑)』
少し寂しそうに笑う桃さんを見て、胸が苦しくなる。
そんな気持ちを落ち着かせそうと、桃さんが淹れてくれた紅茶を口にいれる。
やっぱり美味しい。
他の執事とは比べ物にならないくらい。
それも、赤くんが飲みやすいように苦みをあまり含ませていない。
甘いのに紅茶特有の渋みがある。
僕も、小さい頃からこれを飲んできたからわかる。
青『…癖、抜けないんですか?』
桃『なにが?』
青『紅茶。』
桃『紅茶、?なんの?』
青『赤くんが飲みやすいように甘くしてある。』
桃『え?嘘。』
桃『ほんとだ、…ごめん、淹れ直してくる。』
青『んーん、大丈夫です。』
青『僕だってこれ飲んで育ってきたんで。』
桃『…そっか…、』
いつまで経っても変わらない容姿。
声。僕らに対する態度。
その様子に、僕も赤くんもいつも、安心してきた。
きっと、周りのメイドとかも、赤くんを大事にする桃さんだから従ってきたのだろう。
青『ねぇ、桃さん。』
桃『ん?』
青『僕だってもう、子供じゃないんだよ。』
青『”大人の事情”くらい、わかってる。』
桃『…っ…』
青『きっと、赤くんもわかってる。』
桃『そ…』
青『赤くんね、ずっと桃さんのこと待ってる。夜、寝れなくなっちゃうくらい。』
桃『黄から聞いたの?』
青『……黄さんも辞めましたよ。いや…辞めさせられましたよ。』
青『今、赤くんの執事は僕がやってるんです。』
青『今、僕と桃さんは、執事と他国の王子って関係じゃないんですよ。』
青『話したっていいんじゃないですか?』
そう。
僕だって赤くんだってもう子どもじゃない。桃さんの中ではいつまでも子どもかもしれないけど、僕らだって王子なんだ。
もう二度と、赤くんを泣かせたくない。
桃さんも、泣いてたんでしょ?
青『今、桃さんは、執事じゃないんです。赤くんがいるわけじゃないんです。弱音くらい、吐いてもいいんじゃないですか?』
桃『お前が来たときから、わかってたよ。青が俺のこと、連れ戻そうとして、ここに来たこと。(笑)』
桃『ほんとはね、凄い戻りたいよ。自分でもわかってる。わかっちゃうくらい、あそこに戻りたい。』
桃『でもね…戻っちゃうと…また…赤の身が危険にさらされるの。』
桃『何回も考えた。』
桃『なんで俺は実家が貧乏だったんだろう。』
桃『なんで俺は、孤児院育ちなんだろう。』
桃『これは、赤の担当になる前からずっと思ってきたこと。』
桃『過去のこと考えたって何も変わらないのに、今でもふと考えること、何回もある。』
桃『俺には与えられなかった愛。経験。俺ができなかったこと全部を赤にあげたいと思った。それくらい、大事にしてる。』
青『だったら…!』
桃『…わかってた。最初から。』
桃『育ちが原因で、辞めさせられること。』
桃『俺と関わった人は、みんな不幸になっていく。』
桃『きっと、赤も青も、ずっと俺といたら殺されるよ。』
桃『だから、もういいんだ。』
桃『気持ちだけ受け取っておくよニコッ』
何度も見てきた、桃さんの笑顔。
小さい時はその笑顔がすっごく大好きだった。
だけど、大きくなっていくにつれてわかる桃さんの笑顔の違和感。
まるで、全部を諦めたかのように笑う。
小さい時は大好きだった。
けど今は…
青『大嫌い。』
桃『は?』
青『今の桃くん、大嫌い。』
青『ほんとは、赤くんのこと大好きなくせに。なんで自分の気持ちをいちばんに考えないの?』
青『もう、執事じゃないのに。』
青『全部できない。やれない。って諦めないでよ。』
青『赤くん、ずっと待ってるんだよ。桃くんのこと。』
青『自分のこと大切にできない人間が、よく赤くんのこと大事に育ててきたって言えるよな。』
青『いちばん大事なのは、表面上の事実じゃなくて、桃くんの気持ちなの。』
青『ねぇ、桃くん。』
青『僕が、なんとかする。』
青『だから、1週間後城の前で待ってて。約束。』
この人が赤くんの執事を続けるべき。
僕の力じゃ桃さんを赤くんのところに戻すことはできない。
だから、一回自分の国に戻らないと。
父さんなら、やってくれるかな。
やったところで、桃くんが本当に来るかはわからない。
けど、来てくれるって信じてる。
だから僕も頑張る。
覚悟を決めて、飲みかけの紅茶を一口だけ口に入れた。
もう冷たくなってしまっている。
けど、それでいい。
冷たくなったってまた温めれば元通りになる。
冷たくなった紅茶はまるで、今の赤くんと桃くんの心情を表しているみたいだったけど、僕がまた温めてみせる。
桃『______っ!』
桃さんがなにか言ってるけど、そんなの聞かない。
僕には今、やることがあるから。
まだ時間には余裕がある。
赤くんのところに戻らなくても、まだお昼。夜までには帰れるようにしよう。
青『帰りたくないなぁ…』
帰りたくない。
それは紛れもなく自分の本音である。
王子といえば、裕福だから幸せに生きてるなんてみんなは思ってるかもしれない。
それは少女漫画の見過ぎ。
単なる想像上の王子に過ぎない。
1日何時間も勉強させられる。
したくもない相手とお見合いをさせられる。
父さんが投げ捨てた仕事は全部王子に回ってきて、ほぼ睡眠時間なんかとれない。
僕のことを本当に愛しているかを装って、金としか見ていない。
執事もメイドもそれにのって僕を縛り付ける。
赤くんの国のほうがよっぽどマシなのだ。確かに、赤くんの国も裏でいろいろなことが起こってる。
だけど、赤くんには桃くんという本当の愛をくれる親代わりの執事がいた。
……僕にはいない。
王国の家庭になんか生まれてこなきゃよかったのに。
執事『青様!どこに行かれてたんですか!1ヶ月間も!』
そうやって言いながら、僕のこと探さなかったじゃん。
探そうともしなかったくせに。
青『………』
執事『無視しないでください!どこに行かれてたんですか!』
青『……………』
執事『御父上様に報告しますけど、いいんですか?』
そうやって言って、僕に反抗させようとしなかったのは、どこの誰だよ。
青『……………』
執事『いいんですね?』
僕を従順な何でも従ってくれる王子に仕上げようとしたのは…!
青『ねぇ。あのさ。』
執事『なんですか?』
青『僕だって人間だよ?隠し事だってするよ。』
執事『王子たる者隠し事などしてはいけません。』
青『城の中の使えない人を殺して、その辺に放置してるのはあんたらのほうなんじゃないの?』
執事『なぜそれを…!』
青『僕はね、国の中のお人形さんじゃないの。何でも従う、おもちゃじゃないんだよ。』
青『今まで何回も、「青様のことを想って」って聞いてきたけどさ、嘘にしか聞こえない。』
青『だっていっつも一緒にいてくれなかったじゃん。』
青『子どもはね、甘えたいんだよ。』
青『僕に甘えさせてくれたこと、今まで何回あった?』
青『子どもが大人になるのは一瞬だし簡単なことだよ。』
青『でもね、大人になったらもう子どもに戻れないの。』
青『生まれたばっかりの王子の執事をするってそういうことなんだよ。』
青『僕が今まで反抗せずに、父さんの言う通りに従ってきたことに感謝してほしいね。』
執事『…っ青様!』
青『なに?』
執事『それは今まで育ててきてくれた人にする態度なんでしょうか?』
青『まともに育ててこなかったやつがよく言うよ。』
執事『この国の王になれませんよ!』
青『……こんな国いらない。』
青『王子っていう肩書きもいらない。』
青『これまであった記憶は全部捨ててやる。』
青『だからさ、父さんに会わせてくれない?』
執事『っ最初からそのつもりです💢』
青『ありがとうニコッ』
もう、こんな国なんて出ていく。
死にたくなるくらい苦しかった。
小さいながらに一生懸命体力つけて赤くんの国に逃げて。また戻される。
その繰り返し。
国を出るための柵が、刑務所の檻みたいに見えてきて、もう逃げる気力なんて無くなっていた。
その時、黄さんが赤くんの執事になってほしいって頼んできたんだ。
きっと、父さんに母さんが許してくれたなんて言ったら、母さんが怒られちゃうんだろう。
だったら、最後まで愛そうとした親にでも、態度の悪い王子でいてやる。
それが僕の運命だとするなら。
国王『青。今までどこに行っていた。』
青『どこ行ってたっていいでしょ…』
国王『私はな、青のためを想って…!』
青『何回も聞いたんだよ…その言葉…』
本当に。うんざりだ。
国王『……お前が私に会いたいなんて珍しいな。』
青『頼みたいことがあるので。』
国王『……私に?』
僕は今日、これを頼みに来た。
青『隣の国。ちょっと変えてほしくて。』
国王『隣の国!?バカなこと言うな!』
青『僕はいつだって本気です。』
赤くんのためならなんだってやる。
今は赤くんの執事なんだもん。
国王『そもそも敵対視してる国と協力するなんてありえないだろ!』
国王『何か企んでいるのか?そうだとしたらこの国から出てけ!』
国王『突然1ヶ月間もいなくなるし、王子としての責任はどこに行ったんだ!』
もう…嫌だ…
何も考えたくない。
苦しい。辛い。泣きたい。
桃くんのところに行って慰めてもらいたい。
赤くんに、バカって言われたい。
僕の居場所はここなんかじゃない。
もっと、別の場所がある。
青『そんなに言うんだったら1人で全部やってやるよ。』
国王『もう二度と帰ってくるな…っ!』
青『…最初からそのつもりです。』
ちょっとでいいから愛されたかった。
ちょっと。ほんのちょっとだけでもよかったのに。
青『ねぇ、父さん…』
青『……この前のお勉強で先生に褒められたんだよ。』
父さんは僕のこと、嫌いかもしれないけどね。
青『……他国との取り引き、こっちが有利になるようにできたんだよ。』
僕は父さんのことを心の底から嫌いになったことなんて、一度もないんだよ。
青『……僕ね…』
青『………、好きな子が……できたんだグズッ、』
青『男の子なんだけど…可愛くて…ニコッ』
最後の最後まで、父さんが僕を、好きでいてくれることを願ってた。
青『…………ごめん、』
青『失礼しました。』
国王『ごめんな…』
青『……っ…!』
がちゃんっ…
僕の方こそごめんね。
国王様。
外に出ると、もう太陽は沈んで、真っ黒な夜空が広がっていた。
星なんて1つもない。
まるで僕の心を表しているみたいだ。
青『変な感じ…ポロ…』
目から水のようなものが落ちたのは、気の所為かな。
気付きたくないから、気の所為ってことにしておこう。
青『もう赤くん寝てるかなぁ…』
青『寝てなかったらどうしよ。僕が桃さんに怒られちゃう。』
青『やべ、早く帰んないと。』
勝負はここからだ。
青『赤様…起きてください!』
赤『まだねるぅ…』
結局、昨日は走って帰ってきたら夜中の3時だったもので、赤くんの寝顔しか見れなかった。
悔しい。
だけど、今日は勝負の日だ。
赤くんにも起きてもらわないと困る。
青『僕、今日急いでるんで。』
赤『青ちゃんが急ぎなんてそんな…』
赤『ぇ?』
赤『その服どうしたの。』
青『あぁ、今日は大事なお話し合いがありまして(笑)』
まぁ執事のスーツでいったら大変なことになりそうだから、威圧感出すために王子の服着てるだけなんだけど。
赤『……ふーん、』
青『…(笑)』
興味なさそうにしながらもほんとはちもっと気になってるの、バレバレなんだよなぁ。
青『僕、1時間くらいで戻るので。それまではメイドになんか頼んでください。』
駄々こねたら困るし。
赤『待って…!』
僕が部屋のドアを開けようとすると、赤くんが急にそう言った。
赤『こっち来て。』
青『……はい?』
いわれるがままの僕。
赤『泣いた跡あるよ。なんかあったの?』
青『……、大丈夫ですよニコッ』
赤『……昨日。何してたの。』
青『秘密です。』
赤『青ちゃんも、辞めちゃうの?』
あら、勘が鋭いこと。
今日、話がうまく通れば、赤くんの大好きな桃くんが帰って来る。
僕はどうなるんだろう。
どっちの国も敵に回して、もう居場所なんて無くなるのかな。
青『どうでしょうね?』
青『ま、話してくるんで。』
居場所なんて無くたって生きていけるか。
僕自身さえいれば。
青『失礼します。』
がちゃっ、
青『赤様……』
赤『あ、青ちゃん。おはよ(笑)』
青『今日は早いですね』
赤『あぁ…なんか、寝れなくて(笑)』
青『はぁぁぁぁいぃぃぃぃ!?』
青『眠れなかったら呼んでくださいって何度も言いましたよね!?』
赤『ごめんっ…』
青『怒られるの僕なんですから…』
赤『今度からは気を付けるから!』
赤『ね…?』
青『………そう言って今日もやったじゃないですか。』
赤『うっ…』
青『次やったら僕と寝るはめになりますよ。』
赤『それだけはやだ!』
青『だったらやんないでください。』
赤くんの取扱説明書①
朝は不安からなのか、僕が起こしに行くより早いことがあります。
しっかり注意をしつつ、メンタルケアを心掛けましょう。(もう必要ないと思いますが。)
赤『ねぇ青ちゃん。』
青『はい、どうされましたか?』
赤『お話し、聞いてくれる?』
青『お話しは夜だけの約束です。夜に聞いてあげますから、今は我慢してください。』
赤『んぇ…ぇ?』
青『ほら、約束は?』
赤『守んないと桃くんに怒られる……』
青『赤くん守んなかったら桃くん戻ってこないよ?一生。』
赤『やだやだやだっ…!』
赤『夜にするっ!』
青『赤様はいい子ですねぇニコッ』
赤『子供扱いすんな!』
赤『そもそも俺と青ちゃん同い年じゃん!』
青『でも赤様のほうが身長低いですよね?』
赤『お前も大概だろ!』
青『てへ』
赤くんの取り扱い説明書②
お話しするのは夜だけにしましょう。
あと、身長をいじるのはやめましょう。
ギッタンギッタンにされます。
青『今日、赤様の大嫌いなダンスのレッスンあるので。』
赤『はぁ!?お前そういうことは前日に言っとけよ!』
青『それは申し訳ありません。』
青『僕にも仕事というものがありますので。』
赤『ゆるさない…💢』
青『それが終わったらもう今日は何も無いので。』
赤『………むすっ、』
赤くんの取り扱い説明書③
やけにダンスのレッスンが嫌いです。
前日に伝えておかないとブチ切れられます。
青『赤様はやくお着替えなさってください。』
赤『はーい、…』
青『こいつは執事がいないとなにもできんのか…((』
赤『聞こえてるんだけどっ』
青『…本音が出てしまいました。』
赤『は?』
赤くんの取り扱い説明書④
別に着替えの時間は部屋の中にいても怒られません。
ただすぐ喧嘩腰になるので気を付けましょう。
青『赤様、今日は朝ご飯食べられますか?』
赤『んーん、いらないや。』
青『そうですか。では、昼が夜どちらか必ず食べてくださいね。』
赤『わかったわかった。』
青『約束…ですよ?』
赤くんの取り扱い説明書⑤
ストレスでご飯は1日1食しか食べないようになってしまいました。
前に何も食べてないことを僕に隠して倒れたことがあるので、注意しましょう。
青『それでは赤様、ダンスレッスン頑張ってくださいね。』
赤『んぅっ…どうしてもやんないとだめ?』
青『駄目ですよ。』
青『こっちだってお金払ってるんですから()』
赤『でもぉ…』
青『ほら、桃さんと一緒に踊るんでしょう。』
赤『う………//』
青『頑張ってくださいねニヤ』
青『僕は部屋でお仕事してくるので終わったら普通に声かけに来てください。』
赤『わかった…』
青『では、』
赤くんの取り扱い説明書⑥
ダンスレッスンは桃さんと踊るためで乗り切らせましょう。
結構いい魔法の言葉だと我ながら思っております。
赤『青ちゃぁん……終わったぁ』
青『あら、もう終わったんですか。お疲れ様です。』
赤『もうって4時間経ってるんですけど。』
青『え”』
赤『青ちゃん時間の感覚おかしいよ…』
青『引かないで?』
赤『青ちゃん、頑張ったよ。ぎゅーして。』
青『ばっ…/』
赤『ん?』
青『失礼しました。』
青『いいですよ。いつでもして。』
赤『んふっ、ぎゅーっ!』
青『……//』
〜5分後〜
青『赤様…長すぎでは?』
赤『俺こんくらい頑張ったもん。』
青『そ、そうですよねぇ…』
赤『なんかちっちゃい。』
青『は?』
赤くんの取り扱い説明書⑦
疲れたらぎゅーをねだってきます。
どんなに長い時間でもやってあげましょう。(支障が出ない程度に。)
あと、すぐ喧嘩腰になるのはやめましょう。
青『結局昼ご飯も食べてませんね…』
青『今日は夜ご飯確定です。』
赤『えぇ〜…』
青『えぇじゃありません。』
赤『俺今自由時間?』
青『はい、そうですよ。』
赤『青ちゃんは…さ、』
青『………?』
赤『俺の執事やるの…嫌じゃないの?』
赤『青ちゃんって普段何してるの?』
赤『桃くんと…会ってきたの?』
青『……赤様、それは執事としてお答えできない質問ですよ。』
赤『なんだったら答えてくれるの!』
青『そうですね…』
青『僕が最近抜いた回数とか…』
赤『やっぱいいわ。』
青『あれ。』
赤くんの取り扱い説明書⑧
時々際どい質問をしてきます。
必ず答えないようにしましょう。
青『ほら、夜ご飯の時間ですよ。』
赤『どうしても、食べなきゃなの?』
青『はい。』
赤『うぅ…、っ、』
青『桃さん戻ってきてくれなくなるよ。』
赤『食べる食べる。』
赤くんの取り扱い説明書⑨
朝ご飯と昼ご飯を食べなかった日は、夜御飯を必ず食べさせましょう。
赤くんがしにます。
青『赤様、寝ますよ。』
赤『ねぇ、お話し聞いてくれるって言ったよね?』
青『あぁ。そうでしたね。』
赤『桃くん、いつ帰ってきてくれるのかなぁ…』
青『いつでしょうね。』
赤『青ちゃん。』
青『はい?』
赤『青ちゃん、俺のこと好きでしょ。』
青『、……いえ。』
赤『嘘つかなくていいよ。』
赤『苦しかったね。』
赤『ごめんね。』
青『……赤くんこそ、桃さんのこと好きでしょ。』
赤『ばっ///』
赤『何で知ってんの!』
青『そりゃあわかりますよニコッ』
赤『俺そんなわかりやすい?』
青『どうでしょうね(笑)』
赤『は?まじでムカつく。』
青『何にキレてんの?』
赤『………』
青『寝てるふりしないの。』
赤『なぜバレた…』
青『ほら寝ますよ。』
赤『青ちゃん…いなくなんないよね?』
青『…はいニコッ』
赤『………zzz』
青『おやすみなさい、いい夢をニコッ』
赤くんの取り扱い説明書⑩
夜になったらちゃんとお話を聞いてあげましょう。
あと、寝てるふりしてるときもあるので、ちゃんと寝かせましょう。
次の日泣かれても困るので。
桃さんと黄さんがやってきたように、僕もこの1年間の赤くんの変化を取扱説明書に残す。
きっと桃さんにはバカにされるんだろうけど。それでもいい。
2人がくっついて、それがこの物語のハッピーエンド。
僕には、ハッピーエンドも、バッドエンドも存在しない。
だって、全部を敵に回してきたんだから。
もう、桃さんいるかな。
いたら、いいな。
少しの希望と、少しの勇気で僕は城の門の前に行った。
そこに見えるのは、見慣れた桃髪。
来てくれた。やっと。
青『来てくれたんですね。』
桃『来たはいいけど、何すんだよ。』
青『珍しく察しが悪いですね。』
桃『バカ。気づいてないわけねーだろ。』
青『んふっ、はい。どーぞ。』
そう言って僕は、前まで桃さんが着ていた、いつものスーツを渡す。
青『赤くん、まだ寝てますよ。』
青『男なら、ちゃんと、幸せにしてくださいね。』
桃『俺は赤と付き合うつもりなんて全くねーよ。』
青『好きなんでしょ?』
青『自分の気持ち、大事にしたほうがいいですよ。』
って、前言ったばっかりなのに。
桃『特大ブーメラン。』
桃『お前、帰る場所あんのか?』
青『……ありますよニコッ』
僕は、親の手違いで生まれた子。
帰る場所も好きな子も全部捨てる。
僕にはそれが合ってるよ。
僕の帰る場所はきっと。
雲の上。
お空。
僕は、お家に帰ったら、どれだけ楽になれるんだろう。
桃『お前じゃ危なっかしいからやっぱ城の中にいろ。』
青『僕は…駄目ですよ。』
桃『いや、勝手に死なれる方がこっち側は迷惑なんだけど?』
なんでぼくのこと、お家に帰してくれないの?
青『…なんで、…?』
桃『赤も、お前も。俺の子供みたいなもんだからよ。』
桃『王子を捨ててきたなら、今俺に精一杯甘えてこい。』
桃『気付けなくて、ごめんな。』
そうなんだ。
僕は愛されてたんだ。
1人の、僕のもう一人の執事に。
この人は完璧だなぁ…
当たり前じゃないことを、簡単にやってのける。
青『桃さん、ありがとう…』
桃『こちらこそ。』
?『赤様、青様、起きてください。』
赤『んぅっ…』
青『朝ぁっ?』
また、違う声。
でも、安心する。懐かしい声。
?『赤、起きないとキスするよ。』
聞いたこと…ある。
これは…夢…かなぁ…
もう、希望を見るのはやめたんだよ。
だからさ…
ちゅっ、…
唇に、何か触れる感覚があった。
赤『パチッ』
気になって目を開けると、
桃『赤、おはよう。ニコッ』
目の前には俺の大好きな、1年間待ち続けた人がいて。
赤『桃くんっ…ポロポロ』
自然と涙が出る。
これはきっと夢なんかじゃない。
桃『うん、桃だよ。』
赤『会いたかったポロポロ』
桃『ごめんね…』
青『(笑)』
黄『青様…?』
全員がハッピーエンドだ。
いや、これからもまだまだ俺達の物語は続いていく。
きっと、これがエンドにはならないだろう。
だから、これからも俺たちは今を大切に生きていく。
どんなことがあっても。
『取り扱い説明書』
end.