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………気づけば僕は喫茶店の前に居た。
見たこともないし、こんな場所知らない。
でも、不思議と不安はない。
そのまま僕は誘われるようにカフェに入った。
「カランコローン」
店に入れば、そこに一人立っていた。
いや、人と言うべきか?本来あるべき頭部は、黒くぼんやりとした影のようなものではっきりとは見えない。
でも、何故だか、そのマスターの影のようなものを見ていると、楽しそうにも見え、苦しそうにも、悲しそうにも見える。
そこで一言
「いらっしゃいませ。ここはお客様の願いを叶える喫茶店です。」
と言われたのに気づいた。
ここはどこだか知らないけど、どうせ帰っても何もやることはないし、もう少しだけここにいてもいいかと思って僕は喫茶店のカウンターに座った。
「心が病んでしまった貴方に最高のひと時を。」
そうマスターに言われてね
……
その喫茶店のマスターは言った。
「ここは、何か願いを叶えたいと心から願ったお客様のみたどり着くことができるカフェなのです。」
「ライチのソーダを頼んだら甘酸っぱい恋の願いが、苦いコーヒーを頼んだら復讐が。」
覚悟ができているお客様だけ願いを叶える注文ができるとも言っていた。
僕は、その「覚悟」について聞くことにした
……
僕には、初恋の相手がいた。でも、その人はとても人気だった。
これまでも、これからも、僕のことだけを見てくれることは無いだろう。
それでもいいと、彼女と隣にいられるならそれでもいいと思っていた。
それは今でもそうさ。
でも、今年の秋、たしかハロウィンの日だったかな
一際美しい彼女の顔や腕にアザができているのを見た。彼女は彼氏からDVを受けていたらしい
「僕ならこんな事しないのに…僕にしてくれれば」
と思ってはいけないことを何度も何度も考えてしまった。そして、僕は彼氏を恨んで恨んで恨んで恨んで、この世から居なくなってしまえばいいと心からそう思った。
これまであったことを僕は全てマスターに話した
そしてとうとう僕は注文をした。
もう僕が彼女の顔を見ることも、家でだらっとスマホを見ることもないだろう
でも、それでも彼女が幸せになるなら何でもよかった。
僕が頼んだのは、カフェモカだった。
一口飲めば甘くて優しいのに、後味だけ少し苦
い。
ちょうど、彼女を思う僕の気持ちみたいにね。
数分後マスターがカフェモカを渡してくれた。僕はそれを飲み、薄れゆく意識の中、ほんのりと苦いあの初恋の匂いがした。
…………
彼は安らかな顔で消えていった。
「心が病んでしまった貴方に最後のひと時を。」
店内に一人残ったマスターはそう呟いた。
ここで願いを叶えるのに必要なのは、
魂――すなわち“命を差し出しても悔いがないと断言できる覚悟なのだ。
彼は自分の魂を捧げても彼女を助けたかった純粋な、まるでカフェモカのような素晴らしい人生だった。
「カランコローン」
お、次のお客様が来たようですね
果たして次のお客様はどんな悩みを抱えているのですかね……
ここは、願いが叶う喫茶店。
貴方は一体何を頼んで、何を叶えるのか?
お代は貴方の魂で。