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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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「××…!」


大好きな声で、大好きな人が、私を呼ぶ。


今、こんな状況を、私は心底喜んでしまっている。


「めっちゃ探した。なんでこんなところにいるの。」


孤爪くんは肩で息をし、私を見る。


「…なんで…。」


孤爪くんは不服そうな顔をしながら私の隣に座った。


「なんでって…もしかして、聞いてないの…?」


孤爪くんは「俺は広瀬と先生にちゃんと聞いたんだけど」と少し目を細める。


あー、その事か…。


私は心の準備も出来ないまま、孤爪くんと顔を合わせてしまった。


「…聞いたよ。ちゃんと。」


孤爪くんは細めていた目を一気に見開いた。


「そっか。」


孤爪くんは小さく口を開いた。


気まずい…。


きっと孤爪くんもそう思ったはず。


私は沈黙に耐えきれず、お弁当の蓋を開け、箸を手に持った。


祖母の作るお弁当はいつも大きくて、端から端までぎっしりおかずが入っている。


こんなに食べきれないよと、私は眉を下げて笑う。


「あ、俺昼置いてきちゃった。親来れないから、コンビニで買っといたんだけど…。」


私のお弁当を見て、孤爪くんは呟いた。


私はお弁当をしばらく見つめた後、孤爪くんを見て言った。


「…食べる?」


「えっ。」




私は自分で言ったくせに心臓が爆発しそうなぐらい恥ずかしかった。


孤爪くんは目を真ん丸にして私を見つめているから余計に心臓の鼓動が早くなる。


「い、いやならいいっ」と、そっぽを向こうとした瞬間、


「卵焼き…ちょうだい。」


孤爪くんは卵焼きを指さしながら私を見た。


その目は子供のようにキラキラしてて、とても可愛かった。


私は「はい…」と気の抜ける返事をして、卵焼きを箸でつまんだ。


その時自分の行動に疑問を持つ。


ん?私が持っていいのか?


普通ならつまむ前に箸を渡すべきで…。


待て。このままいったら。


私の脳内は高速で巡回する。


ここは孤爪くんに、自分で取って___。


私はふいに隣にいる孤爪くんを見て、びっくりして卵焼きが箸から落ちそうになった。


孤爪くんは目をぎゅっと瞑って、口を開けていた。


そんなことされたら、私にもう逃げ道は無い。


私は震える手で、孤爪くんの口に卵焼きを持っていった。


少し顔が赤くて、口を開けて卵焼きを待つ孤爪くんを見て、私は今ニヤニヤしてないだろうか。


可愛すぎて、絶対変な顔になっている気がした。


孤爪くんは卵焼きをパクッと食べた。


私は急いで顔を逸らす。


箸を持つ手の震えは止まらなかった。


「…美味しい。」


孤爪くんの顔は見えなかったけど、お口にあって貰えたようで、私はひとまず安心した。




「××も食べなよ。」


孤爪くんは俯いた私の顔を覗いて言う。


私は心臓がバクバクと音を鳴らし続ける中、頷き、震える箸で綺麗な星型の人参をつまんだ。


なんだか人に見られていると究極に食べずらくなる。


増しては、孤爪くんだ。


私はもはや全身が震えてるんじゃないかと思うぐらいの手と箸で、人参を食べた。


私が口から箸を取り出した瞬間、孤爪くんが口を開いた。


「あ、俺箸に口つけちゃった。」


私は、ぼわっと全身から火がでてきたように熱くなった。


口に人参を含んだまま顔を真っ赤に染めあげた。


絶対変な顔になってる。


けど箸が邪魔で上手く顔を隠せない。


正直、人参の味なんてしない。


そんな私を見て孤爪くんは噴き出した。


「ははっ、耳まですごい真っ赤。意識した?」


孤爪くんはいたずらっぽく笑う。


「もう…虐めないでください…。」


私は出てるか出てないか分からないぐらいの声で呻いた。


孤爪くんに言葉が届いたのか、「ごめんね。」と笑うのをやめた。




「ねぇ、もっと食べていい?」


優しい声でお願いする孤爪くん。


多分私だけじゃこの量は食べきれない。


半々でもきっと2人ともお腹は満たされる。


私は頷いて、箸と、お弁当箱ごと孤爪くんに手渡した。


「え、××も食べるでしょ、?」


「先に好きな物食べていいよ。私は、残ったのでいいから。」


焦って緊張したせいか、少し早口になってしまう。


もう恥ずかしさで死んでしまいそうな私は、目をつぶって、さっきよりも深く俯いた。


「××、こっち向いて。」


孤爪くんにそう言われ、反射的に顔を上げてしまう。


まだきっと真っ赤であろう顔で孤爪くんと目を合わしてしまう。


「えっ。」


「はい。」


私は困惑した。


孤爪くんが卵焼きを箸でつまんでこっちに差し出している。


私は卵焼きを見たまま状況が読めず。唇が震える。


「お返し。ほら、口開けて。」


優しいトーンで孤爪くんは言った。


私はもうどうにでもなれという感情で、目をぎゅっと閉じた。


それと同時に口を開く。


口の中に、甘い卵焼きの味が広がる。


私が卵焼きを噛みながら、そっと目を開けると、孤爪くんの背中が見えた。


私は目を見開きながら孤爪くんの背中を見つめる。


髪は、さっきみたいにくくられてはなかったけれど、横の髪が耳にかけられていた。


少しだけ見えた孤爪くんの耳は、とても赤かった。

君の笑顔が見たいから

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