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rbru 記憶
任務後に珍しく飲みに付き合ってくれたのでふらつく足取りで星空の綺麗な夜を歩く。
「本当、今日はどうしたの? いつもは俺んちで飲もうっていうじゃん」
いつも通りの彼の顔。
変わったとこは無いような気はしてる。
楽しそうに飲んでたし。
「別に気分。夜道を歩きたかったから…」
「そう。あ、海…行ってみません?近くにあるんですよ」
手を引くとおとなしくついてくる。
否定も肯定もしない。
何かが違うのに、いつも通り。
何かを読み取れない俺がすこし、もどかしい。
「…綺麗ですね。月明かりと海」
砂浜に足を踏み入れる。
真夏だけど海風が涼しい。
闇に紛れてしまいそうな彼を見つめると困ったように笑った。
不安そうな顔。
「僕小柳くんのこと好きですよ」
突然僕がそういうと悲しそうに、
俺も。と呟く。
嘘吐き。
「記憶が欠けたぼくじゃ…役不足ですか?」
「…別に長く生きてりゃ
忘れることもあるだろ。」
するりと繋いでいた手が離れて海の近くに行く。
「ねぇ、まだ返事聞いてない」
「何の?」
「好きです、って言いました」
「あ?俺もっつったろ」
俺は追いかけて後ろから抱きしめる。
「っ!?」
「そんなだめ彼氏みたいなこと言うのやめてください。」
「おま…っ」
「忘れないように…ちゃんと言ってください!」
震えた情けない声で言うとはぁ、とため息をつかれて体重を預けてくる。
「めんどくせぇ…ってかもう忘れんなバカタコ。」
小柳くんが後ろを向く。
俺の頬を撫で唇同士が重なる。
「もう…好いたやつに忘れられるなんて、あってたまるかよ」
好いた奴…
あぁ、そうか。
「忘れないですよ。こんな綺麗な海でしてくれた小柳くんの告白なんて」
もう、記憶は戻ってこないかもしれない。
俺が知っていたはずの小柳くんが居ないのは少し寂しい気がするけど。
「絶対…だからな。」
この、力強い声がこのままでいいんだと思わせてくれる。
「これからいっぱい楽しいことしましょうね」
新しい記憶を2人で作って…2人で大切に覚えていよう。
また…なんて杞憂をしないくらい。
大切に、大切に…