テラーノベル
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最終話 静寂の後で、、、
――まぶしい。
瞼の裏を白い光が刺し、晴明はゆっくり目を開けた。
天井は真っ白なパネル。
雨の音も、霧の匂いもない。
代わりに、消毒液の匂いと、一定のリズムで鳴る心電図の音が耳に広がった。
「……ここ、は……?」
声はかすれていた。
喉が乾き切って、ひどく遠いところから戻ってきたようだ。
身体をわずかに動かすと、点滴の管が揺れた。
ベッドの横には、見慣れない医療機器が並び、窓の外には薄い曇り空が広がっていた。
(……病室……?
どうして僕は……)
混乱のまま目を動かすと、
「……っ、晴明くんッ!!」
扉が勢いよく開き、焦った声が飛び込んできた。
駆け寄ってきたのは同僚の凛太郎くんだ。
普段は落ち着いた物腰の彼が、今は顔を真っ青にしている。
その後ろには明くんもいて、じっとこちらを見ていた。
「晴明くん……! 気ぃついてよかった
ほんま、ほんまによかった……!」
「……凛太郎くん……? どうして……僕……病院……?」
凛太郎は息を吸い込み、言葉を選ぶように口を閉じた。
そして、そっと晴明の手を握る。
「……びっくりしたんやで、?
先生、学校で倒れはって……階段の踊り場で。」
「階段……?」
続けて明くん言う
「ええ。
あの日、天気も悪かったし、足滑らせたんだと思いますよ。
救急車で運ばれて……ずっと意識なくて……心配したんですよお兄さん。」
晴明は目を閉じた。
その瞬間、夢の中の“霧”と“水音”が一瞬、胸に蘇った。
(……じゃあ、あれは……全部、僕の……)
しかし、たった一つだけ夢では説明できない存在がいた。
「……学園長は……?」
2人の表情が、はっきりと変わった。
驚き――そして、深い悲しみが浮かぶ。
「……晴明くん、覚えてへんのかいな……」
「……何を……?」
「学園長先生は……
お兄さんを助けようとして……」
2人は拳を握りしめた。
声が震えている。
「階段から落ちかけた晴明くんを掴んで……
そのまま、自分だけ……」
沈黙。
病室の時計の針が、静かに進む音だけが響く。
「……亡くならはったんよ。」
晴明の胸に、冷たい衝撃が落ちた。
夢の中で学園長が言った言葉が、ゆっくりと蘇る。
『――あなたが目を開ければ……私の姿を見ることは、もう……』
その意味を、ようやく理解した。
現実ではもう、どれだけ呼んでも学園長の声は返ってこない。
夢の中の優しい手も、もうない。
「……僕を……助けて……?」
「そうやで…」
凛太郎は涙を拭い、無理に笑おうとした。
「学園長は……最後まで人を守る人でした。
晴明くんのこと……ほんまに心配して……」
言葉が喉で途切れ、凛太郎は俯いた。
晴明の瞳から、ゆっくりと涙が落ちた。
夢の中で手の届かなかった温度が、今になって胸の奥を焼いていく。
(……学園長……
僕は……あなたのことを……)
「お兄さん昏睡してる時もずっと学園長って、戻らなきゃって言ってたんですよ。」
「夢の中に学園長先生でも出てきたの、?」
唇を少し噛み締めて晴明は口を開く
「…ずっと、学園長は夢の中にいて僕を夢から出さないようずっと止めてたよ…
よくないものを見てしまうからってさ」
病室には静かな時間が流れた。
凛太郎がそっと肩に手を置く。
「……ゆっくり、休むんやで、?
まだ無理したらあきません。」
晴明は小さく頷いた。
けれど胸の奥にはひとつだけ、決して消えないものが残った。
――霧の中で消えていった学園長の微笑み。
――“戻ってはいけません”と叫んだ声。
――そして、あの伸ばされた手。
その全てが、現実の“最期”とつながっていた。
晴明は涙を拭き、天井を見つめる。
(……さようなら、学園長……
あなたが守ってくれたこの命、僕はもう……捨てません)
そう静かに誓った。
命日の空の下であなたを待つ
退院してひと月後の6月21日――夏至の日。
学園長の命日はこの日だ。
太陽が一年で最も長く空に留まる日。
その眩しさは、彼が最後に見せた“光のような優しさ”を連想させた。
晴明は、墓前に花を供える。
凛太郎も隣に立ち、静かに手を合わせていた。
「学園長……
僕、ちゃんと前を向いて生きます。
あなたが守ってくれた世界で。」
風がそっと吹き、供えた花が揺れた。
まるで、
“よく来ましたね、晴明くん”
そう言っているかのように。
晴明は小さく微笑み、空を見上げる。
雲ひとつない空だった。
主です
以外と溜め込んでたのでボンボン出せました
ゆっくり見たかった方ごめん🙏
感想待ってますわ♡(^з^)-☆
急展開でごめんなさい!
誤字などなどありましたら申し訳ないです〜!
もう一回言うけど、、、これは捏造だよ、?
いいかい????
妖怪の学園長が階段から落ちて死ぬ訳ねぇだろって思った君?
こっちだって知ってるんだよォォォォォォォ!
最初にほのぼのしてるって書いたのは謝るね🙇
みなさまが感動や考察などなどができたら嬉しいです☺️
コメント
3件
部下を庇うってどんだけ優しいんだよ!ってなりましたね。そこが好きだから辞められへんのよ(´இωஇ`)
やはり学園長は亡くなってたのかしかも晴明君を助けて… 晴明君前を向きながら頑張って学園長の分まで生きてくれ( ω-、) 本当に素敵なお話しでした!