テラーノベル
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⚠️LANと暇72ではなく桃乃と暇ちゃんです
⚠️先天性女体化
⚠️桃乃が少しメンヘラ味強いです
⚠️前編です
⚠️構造しかないです
なんでも許せる方だけどうぞ
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「大丈夫だよ、ここは誰もいないし絶対に見られない。私だけは何があっても暇ちゃんの味方だから」
優しく響く甘い声が、悪魔の囁きの様に横から聞こえてきた。手も足も震えが止まらない。背中に重く伸し掛る重圧と焦りから、真冬にも関わらずぶわっと汗が吹き出てくる。
「こんな可愛い女の子を傷つけたんだから、殺されちゃっても文句言えないよ。神様もきっと許してくれる、大丈夫、大丈夫」
「ごっ、ごめ、無理、出来ない…桃乃、私のために、こんなっ、ありがと…けど、私には、無理…殺せなっ「なんで?」
桃乃の声から、温度が抜け落ちた。感情が全くとして入っていない、冷たい声になった。
ああ、やっぱりダメだ。また間違えた、また桃乃に迷惑かけた。やらなきゃ、ちゃんとやらないと、涙が視界を覆い、目の前の世界が曖昧になる、それでもなんとか重い腕を持ち上げ、私は―――
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小さい頃から、可愛いものが好きだった。ネイル、コスメ、ぬいぐるみ。私の周りは可愛いもので溢れていた。もちろん、可愛い女の子も大好きな訳で。だから、あの子を見た時は絶対に手に入れないといけない、そう思った。
暇ちゃん、この子とは高校一年生の時に廊下で偶々すれ違ったのが初めましてだった。短く、艶のある髪も、大きい目も、高い鼻も、全部全部可愛くて。一目惚れした、好きって思った。それと同時に、欲しいって感情が、身体全体を覆いかぶさった。
気づいた時には声をかけていた。肩に手を置いた時触れた色素の薄い髪の毛は、想像通り柔らかかった。
「ねえ!名前、なんて言うの?」
「えっ?ああ、暇だけど…」
「いとまちゃん…私桃乃っていうの!よろしくね暇ちゃん!」
「え、うん…」
若干引かれた気がするけど、その時は気にならなかった。だってこれから仲良くなっていくんだから!
それから私は、暇ちゃんの教室に毎日の様に通うようになり、最初は迷惑そうにしていた暇ちゃんも私のしつこさに折れ、いつしか親友とまで呼べる仲になっていた。
「桃乃ってなんであんな喋りかけてきたの?あの時初対面だったよね」
「そりゃ暇ちゃんが可愛かったからだよ、運命だって思ったの」
「桃乃面食いだもんね」
「今は性格も込みだし!」
一目惚れから始まる関係も悪くない、言葉の通り私は暇ちゃんの内面も含め全てに惚れ込んだ。つり目で強気な態度の割に、暇ちゃんは繊細だった。ふとした時に不安になって一人で抱え込む、嫌われるのが怖いのだ、この女の子は。そんな性格がどうにも愛おしくてたまらない。
暇ちゃんが私の事を好きになった時には、直ぐに気がついた。私の横顔をバレないよう盗み見る視線が、いつからか熱を帯びるような物になっていたから。私はその時、圧倒的な高揚感を覚えた。私と目が合うと頬を赤く染めハッと視線を逸らす姿が、小動物の様に愛おしく思えた。
あれだけ大きな怒りを覚えたのは「親友」になってから5ヶ月程経った時だった。いつもの様に教室へ迎えに行った時、暇ちゃんはクラスの友達と話していた。それ自体は珍しくない。暇ちゃんは社交的だし、顔も可愛いから。だけど
教室での暇ちゃんは何処か無理をしている様に見える、廊下から話を盗み聞きした所、どうやら過度なイジリを受けているみたいだった。暇ちゃんは傷つけられていた。それはダメだ。いけない。私は咄嗟に彼女の名前を呼び、こちらを向いた暇ちゃんの顔も見ず、腕を引っ張って連れ出した。
振り返って見た暇ちゃんの顔は、少し俯いていたせいで影がかかっていて、いつもの暇ちゃんとは別人の様だった。大丈夫?と声をかけると、暇ちゃんは小さく頷いた。それでも顔を上げない暇ちゃんを疑問に思って、私が少ししゃがんで覗き込むと、暇ちゃんの顔は涙で濡れていた。
「大丈夫じゃないじゃん、辛いなら無理しなくていいよ」
「…ごめん、」
「何があったの?誰に傷つけられたの?」
「今までは、普通だったんだけど…最近、イジリ、酷くなってきて、それでも仲良くしてるつもりだったんだけど、最近陰口言ってるとこ聞いちゃって、キツくて…桃乃に迷惑かけるつもりは無かったの、ごめん…」
「迷惑じゃないよ!!暇ちゃん傷つける奴が悪いんじゃん!」
急な大声に驚いたのか、暇ちゃんは大きい瞳を更に大きくした後、聖母みたいに静かに優しく微笑んだ。
「ありがと」
嬉しそうにそう言った暇ちゃんに対して、私の心は荒れていた。私の暇ちゃんを泣かせた、それがどうしても許せなくて、怒りが顔に出てしまいそうになってくる。その顔を隠すため私は暇ちゃんに抱きついた、すると暇ちゃんは細い両手を伸ばし優しく抱き返してくれた。その温もりを感じながら私は暇ちゃんを虐めた犯人について考えていた。
候補は4人、そのうち2人は迎えに行った際に見えたのでもう確定している。私は次の日、その2人を放課後近くの公園に呼び出した。周りに人がいるかは確認しなかった。最悪バレてもいいし、この周辺に人通りが少ないのは知っていたから。まず一人殴った、そしてもう一人も殴った。暇ちゃんが嫌がることをしたらまた来る、そう伝えながら。数十分そうしていると、後ろから慌ただしい足音が聞こえてきた。暇ちゃんだった。私は大丈夫、桃乃が手を汚す必要はない、そう焦りながらも強く伝えてきた。綺麗な手が台無しだよ、そんな事も言っていたのを覚えている。その日は帰り際に2人を睨んで釘を刺して終わりにした。
帰り道、暇ちゃんは慎重に言葉を選びながら私に訴えかけた。
「ありがと、けど大丈夫、私、桃乃に守られるほど弱くないよ。それに、こんなに可愛い顔が歪んじゃう所も見たくない」
私の頬に手を置いて正面からそう言った。幼い子に物事を教える時の様な、そんなニュアンスを感じた。
「私の事、嫌いになった…?」
感じた不安からあまり考えずに言葉を発した。
「そんな訳ないじゃん、そういう桃乃も好きだよ」
返してくれた言葉は私の心に深く、甘く染みた。
「私も好き、暇ちゃんの事大好き。だから嫌なの。可愛い暇ちゃんが傷ついちゃうのも、どこかに消えていっちゃうのも。あの時の暇ちゃん、どっかいっちゃいそうだったもん」
私も暇ちゃんの真似をする様に、目の前の小さな頬に触れた。
「大袈裟、じゃあ約束しよ。私は絶対黙って消えない、だから桃乃もどこにも行かないで」
そう言って暇ちゃんはあの時の私みたいにハグをしてくれた。私は黙って頷いた。
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