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若井にも、誰にも言えない過去があった。
彼は元貴とは違った形で、闇を抱えていた。
子供の頃、若井の家は裕福だったが、厳格で冷たい家庭環境だった。
父親は感情を表に出さず、厳しい規律を押し付けてきた。
若井はいつも「完璧であれ」と言われ続け、失敗を許されなかった。
その重圧に押しつぶされそうになりながらも、
彼は表向きは強く、無口で誰にも頼らない態度を貫いた。
しかし、心の中は孤独と不安で満ちていた。
中学時代、初めて薬物に手を出したのもその頃だった。
薬は一時的にその重圧を忘れさせてくれた。
けれど、依存は彼の人生を蝕んでいった。
そんな若井が、偶然出会ったのが元貴だった。
元貴の孤独と痛みが、若井の心の闇と重なり、
彼は自分を重ねていた。
だからこそ、元貴を見捨てることができなかった。
自分もあのまま堕ちていった過去があるからこそ、
彼の痛みも、葛藤も、理解できる。