テラーノベル
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朝方から優しく町を照らし続けていた
春の日差しが少しづつオレンジ色になり、
1日の終わりを告げようとしていたころ。
「………ん……ひろと…?」
それまでゆったりと夢見心地に浸っていた
元貴が目を覚まし、
滉斗の存在を求めるように
あるいは確かめるように
その名を口にしました。
それに気がついた滉斗はすぐにベッドに駆け寄ると、まだ少し微睡んでいる元貴の手に
自分の両手を重ね、包み込みました。
そして、
「……大丈夫…いる」
と、元貴の耳元でそっと囁きます。
元貴は安堵の息をつくと、
滉斗の手を自分の頬に寄せ、
甘えるようにびったりとくっつけました。
元貴の頬から全身へと、滉斗の温かさが
広がっていきました。
そしてそれをしばらく堪能した後、
「きょう……ごめんなさい……」
元貴はしょんぼりとした声で滉斗に
謝りました。
「どうして?」
滉斗は元貴が何に謝っているのか
わからなかったのか、 意味を問い返します。
「 ひろと……来てくれたのに………」
元貴の顔がさらに曇り、
ふっと目が伏せられました。
滉斗はそんな元貴の目を覗き込むと
「俺は元貴が元気なら、それでいい。」
そう淡々と口を動かします。
「でも………」
しかし、元貴はそれでもと食い下がります。
「でもじゃない。
元貴が幸せなら俺の事なんてどうでもいい」
滉斗はそう続けると、
元貴の頭の上に手のひらを優しく置くと、
滑らかに滑らせるようにして撫でます。
そして、まだ何かを言おうとしている元貴に
もう何も喋るなというように
元貴の柔らかい唇に
そっと人差し指を重ねました。
元貴は少し目を見開き
驚いた素振りを見せましたが、
すぐに ふっと肩の力を抜き、
窓の外に目を向けました。
そこには満開の桜が1輪、
優美になびいています。
まだ、窓の外に朝日が煌めいていたころ、
元貴の指先を掠めた、あの桜です。
逢魔が時を迎えた病室が静寂に包まれます。
「あのね…」
そんなオレンジ色の病室の静寂を
元貴の小さな声が破りました。
遠慮がちに発せられたその声は
春風に乗ってやってくるさわさわという
新緑がひしめき合う音にかき消されて
#omr
ohmori.
10
さみし
329
#独り言
ohmori.
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しまいそうな程でした。
注意して聞こうとしなければ気がつくことが
できずに聴き逃してしまうでしょう。
「…どうしたの?」
しかし、滉斗の耳はそんな元貴の声を
聞き逃さず、しっかりと拾いました。
「……えっ……と…………」
しかし、
すぐに元貴は言葉にすることができません。
何かを言おうとしても喉元で空回り、
口から吐息となって、すっと抜けていって
しまいます。
元貴からは普段感じることのない
不安や申し訳なさなどが溢れ出ていした。
「…無理に言わなくていい。
ずっと待ってる。
それに…また すぐに会いに来る」
滉斗はそれを感じ取ったのか無理に急かす
ことはせず、ただただじっと次の言葉を
待ち続けます。
しばらくして元貴の口がゆっくりと、でも
確かに動きました。
「あのね……きょう____。」
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コメント
1件
ああ、もうほんと……この2人の空気感がたまらなく好きです。元貴が「ごめんなさい」って謝るところ、胸がぎゅっとなりました。それに対して「元貴が幸せなら俺の事なんてどうでもいい」って言う滉斗の台詞、重すぎず軽すぎず、その距離感が絶妙で。それから人差し指で唇をそっと塞ぐ仕草、言葉にできない想いを大事に扱ってる感じがして、すごく印象に残りました。最後の「あのね…」の後の台詞が気になって仕方ないです。次が待ち遠しいです🌷