だからって許されていいわけがない。実際に手を出してしまったのが私で、小学生の彼女は被害者なのだから。
「さとちゃん!」
実家に帰ると、その広い廊下をどたどたと駆け抜けて、ちりちゃん私の膝に飛び付いた。前もって帰省する日を伝えていたはずの両親は、何故か社員旅行を優先し、留守番に隣の家の子を置いといたから、とだけ言われた。田舎だからってそんないいかげんなことある? と思ったが、そんな田舎で育ったのだからしょうがない。
「ひさしぶり、ちりちゃん。元気?」
大学に受かって上京する時は、まだ腰のくらいだったってのに、いつのまにか髪の毛がおっぱいに触れるほどちりちゃんは成長していた。
「えっとね、もう四年生なんだよ! ペア組んでね、おねーさんって呼ばれるんだよ! 三年生の子に手繋いでね、裏山のぼったんだよ!」
おうおう矢継ぎ早に。その間も足にしがみ続けて、私の右足を左右に揺さぶってくる。
「でね、かわいかったから頭撫でてたらね、休み時間にね、そしたらキスされちゃったの! とかい? だと良くするって! その子東京からなんだけどね」
……は? おいおい、は? 小学生? 私は都会に行ってもそんなこと聞かなかったが?
「でもね、さとちゃんのほうがさ、あ、そうださとちゃんしゃがんで!」
ここで初めて足の拘束が解かれ、私は最近の若者事情の衝撃のまま、呆然としながら床にぺたりと落ちた。
「さとちゃん、ちゅ!」
そう言いながら、私の唇はもっと柔らかいものにぶつかって、ちりちゃんはぐりぐりと頭を振りながら私を押し倒した。
「あれ、もっと気持ちよかったのに。それで前にね、さとちゃんにされたキスのほうが良かったからね、三年生の子のね、ダメって言ったの! さとちゃんのほうが好きって!!!」
そうだ、私は一年前、ちりちゃんを襲った。好かれていたからとか、向こうからスキンシップしてきたとか、受験勉強のストレスだとか、そういう言い訳は通じない。無知な幼女の口をこじ開け、貪った。逃げるようにして飛び出した一年前の冬を、思い出した。