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#追放
紅葉まんじゅう@桜ノ国🌸
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先導するリアナがにおいを辿った先は、アーテム川と小山を挟んだ狭き森の通路を進んだ先にあった。
ごつごつした岩場がぽっかりと穴を開けていて、その先を少し入ったところに、湯の湧き出ている泉があった。ドーム上の天井の一部は出入り口にもなりそうな穴が開いており、それが太陽光を差し込む天然の照明となっていた。
「問題なさそうだな」
洞窟内の確認を終え、慧太は、すぐにでもリフレッシュしたそうな女性陣を見た。
「じゃあ、オレたちは外を見張ってるから。ごゆっくり」
ユウラ行くぞ――と、慧太は魔術師と共に洞窟から出て行く。残された少女たちは顔を見合わせる。口火を切ったのはアスモディアだった。
「じゃあ、入りましょ」
・ ・ ・
「あつ……」
湯に浸かった時、セラは思わず声に出ていた。
立ち込める温泉特有の臭い。外は心持ち肌寒さを感じていたのだが、洞窟内は温泉の熱によって温められ、実際、お湯は熱かった。
キアハとアスモディアは、ワームの体液を念入りに洗い流してから湯船に。リアナは以前グノーム温泉で見せたように、まず尻尾を手入れしながら足だけ湯に浸かっていた。
「ふぁあ~、生き返るー!」
アスモディアが気持ちよさそうな声を上げれば、すでに湯に半身を沈めくつろいでいたサターナが皮肉げに言った。
「でもあんた、一度死んだでしょ?」
「うっさい。貴女だって死んだくせに」
アスモディアが、べぇ、と舌を出した。はしたないわよ、とサターナがたしなめるように言えば、赤毛の女魔人は好戦的な笑みを浮かべた。
「もう、七大貴族の順列なんて関係ないもの。わたくしは、貴女に遠慮なんてしないわよ」
「……ねえ、セラ? アスモディアはこんなこと言っているけれど」
サターナは、セラのほうへ顔を向けた。
「この娘、縛られてヤられるのが大好きな変態さんなのよ」
シアードの町の宿で、肌を密着させていた二人の図が脳裏に甦り、セラは一瞬噴出しそうになった。
「可愛い声で、アンアンと泣いて……」
「ちょ、サターナ! こんなところでやめなさいよ!」
アスモディアが慌てて止めに入る。恥ずかしいのか顔が赤かった。
「ふぅ」
キアハが吐息を漏らした。すでに大人顔負けの体格を持っている少女は、その大きな胸を湯船に浮かべながら、緩んだ表情。
「……でかいわね」
アスモディアが、そんなキアハの胸をガン見すれば、ひとり毛づくろいしていたリアナが「大きい」と見ていないのにポツリとつぶやいた。セラはとっさに自身の双房に視線を落とす。
……わりと普通にあると思っているが、ここの面子と比べると、小さいほうに分類されてしまう。
一番小さいのはリアナだ。サターナはいま少女体型だが、それでもセラと同じくらい。これが大人モードになれば即巨乳側になる。
「ねえ、キアハ♪」
アスモディアが楽しそうな顔をしながら彼女に近づき。
「ちょっと計りっこしよ!」
唐突にキアハの大きな胸を両手で鷲づかみにした。
「ふあっ!?」
顔を赤くして驚くキアハを無視するように、アスモディアが自身にも匹敵する胸を揉みしだく。
「や、やめてくださいっ!」
「ああ、いい。この張りに弾力……」
恍惚とした表情のアスモディア。何をやってるんだ――呆気に取られるセラ。サターナは「あーあ」と嘲笑する。
「彼女、昔から可愛い子に目がないのよね。知ってる、セラ? アスモディアって成人前から、女の子ハーレム作ってイチャイチャしていたスケベっ子だったのよ」
「ハ、ハーレム……?」
そういうのって男性が作るものじゃないのか、と思った。遠い国の話で、ハーレムなるものが存在していることは知っているセラである。
「昼間はクソがつくほど真面目な秀才面しているけど、夜になるとエロ三昧。七大貴族の間でも、彼女がいまいち主導権握れないのは、そういうところがあるから」
「キアハ、キアハ! わたくしの胸に触っていいから、許してよ!」
アスモディアのテンションが高かった。当のキアハは自身の胸を腕で守りながら、恨めしそうな顔で女魔人を見やる。
サターナが呆れたように言った。
「女の子が裸になると、ああなっちゃうのよね」
「近づかないようにしよ」
セラは呟いた。アスモディアがキアハとじゃれている間に、リアナがセラの隣で湯船に浸かった。肩まで沈み、ほっと息を吐く。
「ねえ、リアナ」
セラは狐娘の横顔を見つめる。
「聞きたいことがあるんだけれど、いいかな?」
「なに? 改まって」
碧眼に怪訝な色を浮かばせる。
いいのかな、とセラは俯く。以前からリアナに聞きたかったこと。それは彼女が相棒と呼び、さらに戦友である彼のこと。
「ケイタのこと、リアナはどう思ってる……?」
口にして、気恥ずかしくなってくる。顔が熱を帯びているように感じるのは、お湯に浸かっているせいだけとは思えなかった。もじもじ……もじもじ。
「どうって?」
リアナは意味を図りかねたのか聞き返した。サターナも口を閉じて、やりとりを注視する。
「その……リアナは、ケイタと親しいじゃない……?」
「……それって、好きとか嫌いとかの話?」
狐娘は微塵も表情を変えずに言った。
「ケイタのことは好きよ」
「!? ……それって、こ、恋人――」
「それはない」
びっくりして顔を見た直後の即否定だった。動揺するセラをよそに、リアナは顔を上げた。
「好意の感情はあるし、信じてる。けれど恋愛とは少し違う。そもそも、わたしとケイタでは、種族が違うもの」
「種族……」
そうだ、ケイタは人間。リアナは狐人だ。異種族間における恋愛は、自然の摂理に反している。それは聖教会も口をすっぱくして言っていることだ。人間は人間を好きになるべきであり、結ばれて家庭を持つのに別種族のパートナーを選ぶべきではない。
「そ、それもそうだね」
狐人が人間に近い姿をしているから、つい忘れそうになる。
「なぁに、セラ姫。ケイタのことが好きなの?」
アスモディアが、すすっと近づいてきた。セラはとっさに背筋を伸ばして胸を守る。赤毛の女魔人は真顔になった。
「あ、いや、そこで本気ガードされても……触らないわよ」
「え、小さいから?」
「なに、触って欲しかったの?」
「嫌です!」
きっぱり言えば、アスモディアは肩をすくめた。この中で一番大きなお胸が揺れる。
「わたくしは、女の子が嫌がることはしない主義よ」
「ええっ! 嘘ついてます、この人!」
後ろでキアハが指差した。たっぷり胸を揉まれて犠牲者である。
アスモディアはリアナとは反対側の、セラの隣に位置を移動した。
「で、なに、セラ姫、ケイタと寝たいとかそういう話?」
「ね、寝たいとか何ですか! 破廉恥なっ!」
反射的に叫ぶ。寝るとか……。
セラは思い出して赤面してしまう。あるのだ。性的ではないが、一糸纏わぬ姿で、彼と肌を寄せ合ったことが。雪のナルヒェン山がその脳内に甦る。
「ハレンチ……」
すっと、視線を逸らすキアハ。セラは慌てた。
「いや、あれはキアハのことじゃなくて……! サターナにそそのかされただけで、あなたは悪くないわ!」
サターナにそそのかされて、慧太のベッドに裸で寝たキアハ。……もっともキアハを弁護するなら、性的知識はほとんどなく、ただ添い寝する程度という認識しかなかった。それでも裸で、というのはそれだけでも十分恥ずかしかったようだが。
リアナは淡々と言った。
「つまり、セラは慧太と人生を共にしたい……つがいになりたいということ?」
「つ、つがい……!?」
それはつまり夫婦。家庭を持つということ。セラは俯いてしまう。
――私は……。