テラーノベル
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お久しぶりです
触れたい。 その横顔を見るたび、喉の奥がひりつく。
白いシャツの袖からのぞく手首。伏せられた睫毛。笑うと少しだけ下がる目尻。
触れたい。
けれど。
「ろれ、どしたん、?」
名前を呼ばれて、はっとする。
湊は、何も知らない顔でこちらを見上げている。
知らないでいてくれ、と思う。
俺がどんな目で君を見ているのか。
どんな邪な想像をしてしまうのか。
その柔らかそうな唇に触れたらどうなるか。
細い腰を引き寄せたら、どんな声を出すのか。
考えるたびに、自分がひどく汚いものに思える。
「いや、なんでもない」
距離を取るように一歩下がると、湊の表情が少しだけ曇った。
それだけで胸が痛い。
本当は抱きしめたいくせに。
本当は、彼の体温を確かめたくて仕方ないくせに。
でも。
こんな欲にまみれた手で、彼に触れる資格なんてない。
湊は優しい。誰にでも笑って、誰にでも手を差し伸べる。
そんな彼の隣に立つなら、もっと清くなければいけない気がしていた。
「ろれ、最近さ俺のこと避けてる?」
不意に、低い声でそう言われる。
逃げ場がなくなる。
「……避けてない」
「嘘。目、合わせない」
図星を刺され、息が詰まる。
違う。
合わせられないだけだ。
目を合わせたら、欲望まで見透かされそうで。
沈黙の中、湊が一歩近づく。
甘い匂いがした。だいすきな湊の匂い
「俺、何かした?」
その問いに、胸がきしむ。
してない。
何もしていない。
悪いのは全部、俺だ。
「……俺さ」
声が震える。
「湊に触りたいって、思う」
言ってしまった。
空気が凍る。
「でも、それってさ、なんか……すげえ汚くて」
視線を落とす。
「こんな気持ちで触ったら、湊まで汚れる気がして」
沈黙。
終わった、と思った。
軽蔑される。引かれる。距離を置かれる。
当然だ。
だが次の瞬間、頬に温かい感触が触れた。
驚いて顔を上げると、湊の指先がそこにあった。
「……え」
「俺だって」
湊は少しだけ赤くなっていた。
「触りたいって思ってるよ」
心臓が止まったかと思った。
「好きな人に触れたいの、どこが邪悪なの」
まっすぐな目だった。
「それ、汚いんじゃなくて、ちゃんと好きってことじゃない?」
言葉が出ない。
湊の手が、今度は俺の手を握る。
絡めるわけでも、引き寄せるわけでもない。
ただ、触れるだけ。
それだけで、体温が混ざる。
「怖いなら、ゆっくりでいい」
湊は微笑んだ。
「でも、俺は君の手、嫌じゃない」
胸の奥で、何かがほどけた。
触れたい。
でも、壊したくない。
その両方を抱えたまま、そっと指を握り返す。
邪悪だと思っていた気持ちは、
ただの どうしようもなく、純粋な恋だった。
エモい感じだしました
コメント
4件
いや、ひっさびさ