続きです!!
視点無し
満州「残念ながら日帝、運がなかったようです。あみだくじで決まりました。でも、係になった者はスポーツに参加しなくてもいいので楽ですよ。私も今年は企画に選ばれましたので、存分に中国さんだけを応援することが出来ます」
こんな面倒な係をくじで決めないで欲しい。
ただの撮影係ならまだしも、日帝はもう一人の男の名前に大きなため息をついた。
日帝「いや、それもそうなんですが。……この人、戻ってきたんですね」
満州「ああ。知らなかったんですか?確か2週間前くらいです。女性社員が連日あんなに騒いでいるというのに」
日帝「知りませんよ。あぁ、撮影係なんて最悪だ」
食欲が失せた日帝は箸を置いて天を仰ぐ。
日帝は、お昼休み以外は基本的に研究に没頭している。
似た者同士しかいないので、仕事中の私語はあまりない。
完全にないわけではないが、「この微生物、ちょこちょこ動いて可愛い」といった研究室以外の人間には同意を得られないような内容だ。
つまり、社内の噂話をするような者は一人もいない。
アメリカとは日帝よりも一年先輩で、営業1課に所属している若手のエースであるが、その実、会長の長男にあたる男だ。
営業成績はダントツ1位で、次期社長だと噂されている。玉の輿を狙う女性社員を惹きつけるのはその肩書きだけではない。
顔がとにかくいいのだ。眉目秀麗で好青年なアメリカは、憧れの的として社内でも有名な男だった。
そんなアメリカは去年から海外の支社に勤務していたはずだが、一年で戻ってきたらしい。
満州「そんな事を言うのは日帝くらいですよ。誰もがこの方の隣を狙っています」
日帝「ならその“誰か”が代わってくれないでしょうか」
満州は首を振る。もう決まったことだ、文句を言うなと言いたげな顔だ。
満州「この方のおかげで、今年は参加者が多いんです。私も面倒な係になりましたので、日帝もがんばってください」
大好きな中国の応援ができると張り切っていたじゃないか。
日帝には何の得もない。何が楽しくて面倒な男と、興味のない社員たちの写真を撮らなければならないのか。
日帝「あ〜面倒臭い。満州は知ってるだろ。一年目のあの事件」
満州「懐かしいですね。日帝のファースト…ぶっ。すみません。人工呼吸、見事でした」
日帝「だから、ファーストキスではありません。それに、人工呼吸はこれまで何度か経験したことがあります」
一年目の親睦会の思い出は、日帝にとって忘れがたいものとして心に刻まれている。
あの年の会場は海で、ビーチバレーがメインイベントとなっていた。参加者たちは砂浜を駆け回り、賑やかな声が絶えなかった。
しかしアメリカがひとたび海に入ると、女性社員たちは瑞月を囲い込み、水中で揉みくちゃに合ったアメリカは溺れてしまったのだ。
幸いアメリカはすぐに引き上げられたものの、その後がまた騒がしかった。
周囲の女性社員たちは誰が人工呼吸をするかとじゃんけんを始め、はしゃぎ出したのだ。
その様子に、日帝は堪忍袋の緒が切れた。
「おまえらはバカか!」と鋭い声で恫喝し、ひるんだ社員たちを尻目にすぐさまアメリカの鼻をつまんで人工呼吸を施した。
真剣な日帝の姿に周囲は一気に静まり返り、日帝の冷静な判断と行動によって、アメリカは無事に息を吹き返したのだった。
満州もあの日のことを思い出し、哀れみの目で猫猫を見る。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!