春風が俺の髪をなびく。
3月の暖かいこの季節に、俺は学校の校門を出た。頭の上に桜の花びらが乗るがあえて取ろうとしない。
茈「なつー」
赫「!」
名前を呼ばれ振り返れば3年間、いや、中学から知り合ったアホ毛頭の俺の初恋の相手がこちらに歩み寄って来ていた。
茈「あれ?泣いてんかと思ったけど、泣いてなかったんだ?w」
赫「…だよなw なんか、実感なくて」
茈「ま、そこまで寂しくはねぇよな?中学の時は一気にみんなどっか行ったし」
中学の時はコイツ以外にも仲良かった奴らが4人いた。6人ずっと一緒に過ごしてた。
でも4人とも、やりたい事がバラバラだった。だから、中学の卒業式はいるまと俺以外の全員は違う道に進んでしまった。
孤独になる寂しさと卒業への祝いで6人全員で泣いた記憶が鮮明に覚えてる。特に俺とあの天然王子は馬鹿みたいに泣いてた。
赫「何お前、俺に泣いて欲しいの?w」
茈「ずっとお前の世話を見てきたのは誰だったけな?卒業前にも『俺が泣きそうだったら慰めろ』って言われてたのにw」
赫「変なことしか覚えてねぇなお前…」
隣で笑いながら俺の歩幅を合わせて歩いてくれてる彼を見ながら、記憶を探る。
赫「……いるま」
茈「ん?」
赫「…さんきゅな、俺の傍に居てくれて」
茈「…!」
中学の緊張混じりの教室で彼に話しかけられた所から始まって、4人と出会い、屋上で昼飯を食った後にスポーツが嫌いな俺でもバレーをするのが唯一の楽しみだった。
俺達がバラバラになっても、俺の隣に座っては慰めてくれたのは最初に出会った彼だった。
入学式で校門に踏み入れる時も、ふざけては先生に見つかり怒鳴り声が響く廊下で一緒に走って逃げた時も、文化祭だって体育祭だって、どんな時も、彼は俺の隣に居続けた。
そんな彼がいたから、俺は今までの学生生活に悔いなんてなかった。
言ってしまえば、告白できない事くらい、なんて事はなかった。
赫「っ…隣に居てくれて、ありがと」(ポロッ
茈「…ん、おかげで楽しかったわ」(ニコッ
俺が泣いてしまえば、彼ははぐらかす事もいじってくる事もなく俺の隣で暖かく笑ってくれる。 そんな笑顔が、俺の恋心を実らせた。
泣きながら思い出話に花を咲かせてしまえば時間が進むと共に、それぞれの帰り道の分岐点へと迫って来てた。
彼が乗る電車が来るまで、あと10分。
茈「…別にさ、俺らはもう一生会えないって訳じゃねぇんだからな?」
赫「!」
茈「今でも6人で遊んだりもしてんだし、連絡入れてくれれば俺だって反応するし」
赫「…未読スルーが何言ってんだっw」
茈「それはそうw」
こんな時でも、彼は笑わせてくれる。
この時間が、続いてくれればいいのに。
赫「…じゃあ、毎日すんね?」
保険をかけるように、重い約束をする。
彼と話すこの時間が大好きで、必死にすがりついては手離さないようにする。
そんなの、自分勝手なのに、
茈「じゃ、忘れてたら俺からしてやんよw」
そんな彼は、否定しない。
茈「もうそろ、改札通るわ」
赫「ん、」
茈「じゃあな?なつ」
赫「ん、じゃあ、なッ」
俺に背中を向けて帰路を進んでく彼。 6年間実らせた恋心を押さえつけながら彼の背中を見つめる。
赫「っいるまッ!」
茈「…ん?」
それでも、俺の身体は正直で
電車までの残り時間が少ないのに、それでも彼は俺の方へと向いてくれてる。
彼の顔を見るだけで、俺は顔が熱くなってしまう。 この恋心が今にも喉から出てきそうで、吐いてしまえば楽になるこの口を開いてしまう。
赫「っ…なんでも、ないッ…w」
だが彼を困らせたくない、傷つけさせたくない、そんな気持ちが心の真ん中にぽつんと佇んであって。口から吐き出しそうな 恋心を、俺は飲み込んだ。
茈「…なんかあったら、連絡しな?w」
離れ離れになって寂しいと意図したのか、そう言いながら彼はまた俺に笑いかけてくれる。
そしてまた背中を向けて改札に入り、姿は見えなくなってしまった。
それからは覚えていない。
別にしょげてる訳でも、卒業した実感が今更出てきた訳でもない。ただ、 古びた駅前から気づいたら自分の家へと着いていた。
ただ、家に入ったら今更彼が居なくなった実感が急に湧き出てきた。今は俺しかいないが、こんな時でも帰ってくる家が安心するから泣かないように堪える。
自分の部屋まで歩きながら、彼が何回も俺の家に来ては遊び、高頻度で泊まっていった記憶が頭に出てくる。
部屋の扉を開けて、目の前にあった自分のベッドへと倒れ込む。このグレーのシンプルな狭いベッドも、客用の布団を出すのがめんどくさいからとノリと好奇心で2人で眠ったり、俺が泣いてる時にはここに一緒に座り、嫌になるまでずっと慰めてくれてたりした。
赫「ッ…いるまぁ”…」(ポロポロ
頬に温かいものが伝っては布団を濡らす。堪えてた涙が目から無数に流れる。
それから薄暗い部屋の中、彼の笑顔を思い出してはずっと泣いていた。もう泣き枯らして、すっきりしてしまおうと抑えてた感情をここで吐き出した。
彼に伝えてたら、変わってたかもしれないこの感情を。
途中、泣き疲れたのか急に瞼が重くなった。鍵の戸締りをしたか覚えていないけど確認する気力もない。 着替えなきゃいけないこの制服なんかもう着なくなる。
全てが嫌になって、諦めて俺はベッドに身を任せた。
そんな時でも、いるまの顔が思い浮かんだ。
赫「____……んッ…?」
窓から差し込む太陽の光が俺の顔を照らす。目を開ければ何も変わっていない俺の部屋。
最後に思い出すのは彼の事を想って泣いて、眠ったくらいしか分からなかった。
それからどれくらい眠っていたのか、寝たのがだいたい15時くらいだったのが、今は朝の8時になっていた。
赫「…俺、どんくらい寝てんだよ…w」
((コンコンッ
「なつーッ!」
時計を見ながらそう呟くと扉の向こうから母の呼ぶ声が聞こえた。
赫「ん?おかえり、帰ってきてたん?」
「は?何言ってんの?」
挨拶をしただけなのに母は訳が分からないと言ってるような怪訝そうな顔をした。
「アンタ今日卒業式でしょ?」
赫「…え?」
「始まんのはお昼からだからいいけど、あまり寝すぎちゃ遅刻するからね?」
そう言って母は俺の部屋から出ていった。
だが、今の俺はそんな言葉なんか耳にできなかった。母は今日が卒業式だと言った。
焦りながらスマホを見てみたら今は8時過ぎの時計が表示される。だが、上の日付を見れば昨日、卒業式の日になっていた。
起きてから気づかなかったが、俺が着たままで眠った制服姿から、寝巻きで使ってるTシャツとスウェット姿になっていて制服は綺麗にハンガーにかかっている。
赫「…時間が、戻ってる…?」
ありえない事態に困惑をしていると、スマホから着信音が聞こえた。
『今日一緒に登校しね?』
それは昨日別れたばっかの大好きな彼からの登校のお誘いだった。
茈「___お、なつ!」
赫「ぉ、おおう、おはよ…」
いつも降りる駅前で待っていれば昨日と変わらない制服姿のいるまがいた。
昨日で終えたばっかなのに、何もなかったかのように目の前の男は俺に挨拶を交わす。
茈「もう卒業なんてはえーな?」
赫「…ぅ、うん」
茈「俺、先週入学した気がすんだけど」
赫「っ…俺との思い出がねぇってか?w」
茈「ダルっw、お前となんて沢山あるわw」
……やっぱり…
この会話も、昨日したのと丸々同じだった。少し前を歩く彼は昨日と同じ事を話しては同じリアクションをしている。
周りにいる同じ制服を着た学生も、隣のクラスで1番可愛いと言われてる女子や、去年の体育祭で競技が一緒になったクラスメイトの男子達が学校に向かって歩いている。
世界が本当に、昨日に戻っていた。
赫「…いるま、」
茈「ん?」
赫「…もし、さ、今日の夜寝て、 起きたら、また今日にタイムスリップしたってなったら、どうする?」
俺への問いかけに対して、いるまの顔はキョトンとしている。それから数秒待ってれば眉間に皺を寄せて疑問そうに顔を傾けていた。でも、俺が面白い事を言ったからか口角は少し上がっている。
茈「んーとっ?…どういう質問だそれ?w」
赫「…いや、なんでもねぇw」
こんな事が起きてるのはきっと俺だけ。
俺の事はなんでも知ってる彼が、俺が今起きてる事なんて知ってるはずない。
はぐらかしてから前で歩いてる彼を早足で通り過ぎた。
昨日行って終わったはずだった、2回目の卒業式は終えて、桜が舞い散る木の下で歩く。
今になって俺だけ時間が巻き戻っているって事は正直どうだって思わなくなった。周りが何も変わっていないからきっと、現実味が出ていた夢を見ただけなんだろうと思い始めていた。
すると俺の横を通った女子生徒が嬉しそうに話してるのを耳にする。リボンの色が俺の学年の色ではないため、年下の生徒だと分かる。
「いるま先輩からボタン貰っちゃった!」
「私も!大切にしよ!」
甲高い声で笑いながら話す2人の生徒はそのまま学校の中へと消えていった。
そういやあいつモテている。中学でも高校でも昼休みに女子生徒に呼び出されては、顔を真っ赤にしながらいるまに告白してる姿を窓の外から泣いてる非モテ男子達と一緒に見ていた。
それでも、後で告白の返事を聞いてみれば毎回振ったと言われる。
赫「試しに付き合ってみりゃいいじゃん?」
隣のクラスの学年1可愛い女子生徒から告白を貰っても振ったあの時。
他の女子生徒と同じ、彼に向けてる辛くて痛かった恋心を隠しながら彼に提案してみた。すると、彼は考える素振りをしてから息を吐き出し、「やっ、いいや」と答えた。
茈「なつといる方が楽しいしw」
そう言ってくれたこと、俺は未だに嬉しかった気持ちと一緒に覚えている。
だから、きっと、彼は今たくさんの女子生徒に告られてるだろうけど、全部振ってるだろうと信じて、俺は桜の木の下で待っている。
すると、校庭から走って戻ってくる紫頭が見えた。制服はボロボロでジャケットの他にも、シャツのボタンまでもが全てなくなっていて、下に着ている黒いタンクトップが見えている。
茈「___あ、いたいた…!」
赫「……終わった?」
茈「ん、めっちゃ居たもんだから…w」
その答え方はきっと全員振ったんだろう。 そのことに少し安堵する。
女子の大軍を全て避け、こちらまで走って来たのに疲れて荒い息を整えてる彼の頭には、紫髪に映えるように桜の花びらが数枚くっついていた。
赫「ッんふふっw、桜ついてんよ?」
茈「ん、あぁ、ごめん」
ふわふわな彼の髪を触りながら頭に乗っている桜の花びらを取ってあげる。すれば俺の手から花びらは離れ、春風に乗せて青い空へと消えていく。
赫「…そろそろ、帰る?」
茈「ん、いーよ」
そう言って校門を通り過ぎようと、また彼の隣で歩き始める。
昨日見た夢と同じ、彼と離れたくない気持ちがまた芽生える。でも、そんな事忘れたくて隣にいる彼に無理やり話を振った
赫「結局、誰とも付き合わんかったね?」
茈「ん、無理に付き合っても悪ぃだろ?」
そんなとこでも優しさを見せる彼に呆れつつも、俺もほんの少しだけ惚れてしまってる。
茈「って言って、なつも誰とも付き合わんかったじゃん?」
赫「え?」
茈「お前だって、モテる方じゃん?」
だって、お前が好きだから___
そんな事も言える訳がなくて、頭の中で必死に理由を考える。
赫「…可愛い子がよかった、から」
茈「んだそれw…まぁ、なつっぽいなw」
笑いながら歩く彼を見ながら、あの時言ってくれた言葉を思い出す。俺はその時に言ってくれたお前からの言葉を、今でも嬉しくて覚えているから。
赫「…うそ、」
茈「え?」
赫「いるまと、一緒が楽しいから」(ニコッ
数年間の告白が言えなくても、これだけ伝えればそれでいい。
目の前にいるいるまを見れば驚いてる。
でもすぐに、今まで見た事ないくらいの嬉しそうな笑顔で、はにかんだ。紫髪で隠れていた耳は、ほんの少し赤く染まっているのが見える。
茈「うれしっ!w」
そんな笑顔、見たことがなかった。
芽生えて、とっくにつぼみまでに育っていた恋心がまた、水を与えられて育っていくように騒ぎだしていた。
赫「っ…そんなに嬉しい?w」
茈「嬉しいよ、俺と同じ気持ちだからw」
___なつといる方が楽しいしw
赫「…!…よかったっ…///」
まだ、俺に伝えてくれた気持ちが消えていなくて。
でも、一緒が楽しいって気持ちより、
俺に対する恋愛対象が一緒の方が良かったなと、わがままな想いが出てしまっていた。
赫「……なんで???」
そう言いながら、持っている焼いたトーストを齧り付きながら祝福な今日の天気予報を見ている。
「?今日1日中晴れじゃない?」
赫「あ、ごめん…そういうんじゃなくて、」
あれからというものの、俺はずっと卒業式を何回も繰り返していた。理由は未だに分からない、寝てもまた今日になっている。何回か無理して朝になるまで起きていた時もあったが、全て眠ってしまい気づいたら今日を迎えていた。
何が正解なのだろう。そう思っていればテーブルに置いてある自分のスマホが鳴った。見なくても彼からの登校の誘いなのは分かっていてスルーした。
いつも通り(?)、彼と一緒に登校して、教室に着いてはまた彼と話を交わしつつ、1年間一緒に居た仲間たちとも雑談を交わして卒業式が始まる数分前になった。
赫「…俺、トイレ行ってくるわ」
茈「?もうちょいで始まるから早く帰ってこいよ?」
適当に返事をし、俺は廊下を走る。
本当はトイレなんかには行く予定はなかった。別に体調が悪い訳でもない。ただ、何回も卒業式をしたからかもう嫌になったってだけの適当な理由で。
俺は、中庭に続く扉を開けては、左手にある茂みに隠れてた人が入れる大きさに穴が空いてる柵をくぐって、小さな桜の木の下に行った。
ここは先生にも、クラスメイトにも、誰にも教えていない、俺といるまの秘密基地みたいな場所。
ここでよくいるまと一緒に昼飯を食べた場所であり、授業をサボっては木の下でゲームや昼寝をしたり、俺の苦手な種目が出た時は体育のテストの前とかにここで2人で練習したりと、3年間お世話になっていた場所
小さな木に芽生えてる桜を1輪取っては眺める。綺麗ではない、むしろ花びらが切れていたり泥が付いてたりして汚かった。 でも、こんな小さな木でも頑張って咲き誇ってるだけでも、俺は綺麗だと感じた。
茈「お前、サボってんな?w」
赫「!?」(ビクッ
後ろを振り返れば、体育館に向かったはずのいるまが立っていた。サボっている俺なんかも気にもとめずに歩み寄って俺の横に立つ。
茈「おー、ちゃんと咲いてんね?」
赫「なんで、お前ここにいんの?」
茈「んー?サボり」
何も考えてないのか適当な理由を言って桜の木を見つめてる。
それからは2人して静かに桜の木を見た。
会話の内容を探す必要はない。
ただ、大切な人が隣にいるだけでも、俺は意心地はよかった。それは、彼も思っているのかは分からないけど。
赫「なあ?いるま?」
赫「俺が、卒業式の日を毎回タイムスリップしてるって言ったら、どうする?」
1番最初に始まった時に聞いた質問を、彼に問いただしてみる。
あの時と同じ顔をするかと彼の顔を見れば、俺の顔を見つめた後、フッと笑みをこぼした。
茈「なんか、ほんとにしてそうな顔だな?」
それだけ言ってまた桜の木を見つめた。
否定もしないし肯定もしない、俺を真っ直ぐに見てくれる彼が、俺は大好きだった。
数時間が経ち、もう卒業式が終わったのか在校生のざわめく声が聞こえてきた。
名残惜しいが俺らの秘密基地はこれで使う事はないのだろう。小さな桜の木を最後に撫でつつ、また空いてる柵を潜り茂みで穴を隠す。出入口が1個しかない扉を開き、玄関まで2人で並んで歩いてく。
途中、仲良かったクラスメイトからサボりだと笑われ、担任からは怒られるも俺らは顔を合わせては意地悪そうに笑った。
そして俺はまた、女子からの呼び出しを食らったいるまを待ちながら桜の木の下にいる。 こういう卒業式も悪くないなと、次のループの時にサボろうと計画をしていた。
茈「おまたせっ」
赫「ん、おかえり」
思ったよりも早く女子からの呼び出しが終わったのか、またシャツとジャケットの前を開けながら帰ってきていた。 何も言わずとも俺らは校門へと、足を向けていた。
赫「…相変わらず、モテてんな?」
茈「………」
赫「…?いるま?」
彼に少し茶化しを入れようと話題を振るが、返事が返ってこない。疑問に思い、彼の顔を見れば何かを考えてる素振りをしていた。
茈「……なんか、」
赫「?」
茈「ほんとに、ループしてそうだな?w」
なんの話かと思えば、秘密基地で明かした俺への質問の内容だった。驚きつつも顔に出ないようにと平然を見繕って返した。
赫「それ、まだ考えてんの?別にそこまで気にせんくていいよ?w 」
茈「えー?んじゃあ、知ってたらでいいから教えろよ?違う世界線の俺を」
俺の話を聞かずにそんな事を聞いてくる。
本当に答えてもいいのか、分からなかったが、このループを終わらす鍵にもなるかと口を開いた。
赫「…今と、変わってねぇよ」
茈「………」
赫「いつも通り、駅でお前を待って、卒業式を受けて、呼び出し食らってるお前をまたここで待って、駅まで一緒に帰る」
赫「帰りとか、たまに違う話を振ればお前はなんでも答えてくれてたわ。おかげで、まぁ今更だけどお前の事、なんでも知ってる」
赫「初めて卒業式サボったけどさ、案外悪くねぇなって、次のループの時からサボっていこうかなって思っとるw」
一方的に話を出してれば、いるまは静かに俺の話を聞いてくれてる。顔は見えないけど、息遣いで何となく聞いてる事は分かる。
茈「…じゃあさ、そん時の俺から、なんか言われてる?」
赫「…?特に?」
茈「んじゃあ、俺が1番最初って訳か!w」
訳の分からない事を言ってるいるまに目を向ければ何かを握ってる手をこちらに渡してきた。疑問に思いつつ俺は彼の握ってる手の下に手のひらを添えてみれば、ずっと握ってたのか温かくて小さい何かが手のひらに落ちてきたのが分かった。
見てみればそれはシャツのボタン。
茈「…それ、俺の第二ボタン 」
赫「え?」
世間で言う第二ボタンは、好きな人にあげるって意味が込められてる。それが欲しくて、卒業式の日はいるまみたいな奴らは女子から呼び出されてるようなもん。
こんな大切なものを、俺に渡されたら。
何とか心の中にある邪魔な気持ちを必死に抑えようとするが、そう考えるだけで耳が熱くなるのが分かる。
赫「っ…ねぇ、分かってんの?これ…」
茈「渡したくて渡したんだけど?」
それでも目の前の男は俺に向けて温かい笑顔でこちらを見ている。
赫「っ…俺に、勘違い、されんぞッ…」
茈「うん、していいよ」
茈「だからさ、きっと、俺はお前への気持ちは変わらないだろうからさ、」
茈「もし次のループがあったら、男気ない俺に言って、それ渡してやって?」
赫「…今、言ってくんねぇのッ…?」
茈「叶ったとしても、明日になったら辛いだけじゃね?」
赫「ッそれでも、いいッ…」
赫「いるまの声で、今、聞きたいッ…/////」
茈「っしゃあねぇなぁッ…w///」
俺、なつのことが____
朝、また目を覚ます。 時計を見れば今は8時
窓から差し込む日の光が、俺の薄暗い部屋を照らしては明るくしてくれてる。
「なつー?」
下から聞こえる母の声を耳にしつつ、窓の外で流れてる雲を眺める。
「今日お休みだからっていつまでも寝てんじゃないわよー?」
そんな言葉を聞いて、傍にあった充電中のスマホを開いて日付を見る。
「おはよう、これ送れてる?w」
それと同時に、彼からの朝の挨拶と昨日話したばっかの話の内容が書かれてる通知が送られてきて、笑みをこぼし返信をした。
コメント
3件
コメント失礼します。 いつもりんごさんの作品見させてもらってるんですけど、全て好きすぎるシュチュエーションに加えて語彙力の凄さに、書き方が上手過ぎて見惚れてしまう物語で大好きです!!頑張って下さい!
即興約5時間の作品です。 恋が叶うまではキツくて辛いけど、叶うと明日からは輝いて見える事があるよね、って事です。私は恋した事あまりないんですけどね(おい) 変なとことかあるかもなんでそこは見逃して欲しいです🙏
ありがとうございます どストレートです。 好みすぎてびっくりしました しかも即興って...頭の中どうなってるんですか何食べてたらこんなに神作が即興で出てくるんですかね!?!?!?!?(逆ギレ)