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リーナと待ち合わせたのは、ハイデル王立第一魔法学校へと案内をしてもらい、各種手続きをするためであった。
契約後の身体チェックや講師用制服の採寸など、時間は要したが、それらすべてが無事に終わる。
契約では、勤務は3日後からとなっていた。リーナが王都での生活に慣れるように、と配慮してくれたためだ。
だが、もう直前であることは変わらない。
最後には、他の講師への挨拶なども行う。
ちょうど講師会議で、一堂に集まっていたのだ。
「アデル・オルラドです。魔術学を担当させてもらいます」
中には、前に勤めていた時と同じ顔もいた。
当然、そいつらは俺を胡散臭い人間だと思っている。
一部の講師らからは、かつて同様に白い目も注がれた。拍手もまばらで、歓迎されていないことはひしひしと伝わってきた。
中でも、とくに俺を睨みつけてきていたのは……魔法学会の権威である老爺・シモーニ。
5年前からずっと俺を目の敵にしており、ことあるごとに突っかかってきた。
俺を学校から追放した中心人物と言ってもいい。
変に最初から争うつもりはなかった俺はそれをスルーして、その場を後にした。
挨拶が終わり会議室を出た後、リーナが申し訳なさそうに言う。
「気にしてないさ。オファーを受けた時から分かってたことだ。これからだよ」
そう、批判の目があるのは承知の上で戻ってきたのだ。
だから、変に媚びて下手に出るつもりはない。
魔術の有用性、安全性を伝えるためにも、堂々としているべきだろう。
変に敵を作ることはなくとも、正しいと思ったことを曲げる必要はない。
「今度は、リーナみたいな強力な味方もいるしね」
「……たしかにそうですね。可能な限り力を尽くします。先生は、お好きなように振る舞ってください。それが先生らしさでもありますから」
「うん。そう言ってもらえると百人力だよ、リナルディ理事様」
「か、からかわないでください!」
その後リーナは、理事としての決済業務があるからと、そのまま学校に残った。
高い身分に甘んじるのではなく、立派に仕事をこなす元生徒を見て、その成長を実感する。
一方の俺はといえば――
王都の中心街を、あてもなく練り歩いていた。
……単純に新生活を始めるにあたって、王都の5年間での変化を知りたかったのだ。
夜は酒場の出店ばかりだったが、昼はまた雰囲気が異なる。
八百屋や肉屋、衣服屋など、生活に必要な様々な店が立ち並んでいて、人であふれかえっている。前に行ったことのある店もあれば、目新しいものもあった。
その代表的な一つの店が、『フェルショップ』なるアイテムショップだ。冒険者が使うような戦闘具から、一般人でも使えるような便利アイテムまで幅広く取り揃えているとのこと。
急にここまで展開しているのだから、なにか理由があるに違いない。
そう考えた俺は王都内にいくつかある店舗のうち、せっかくだからと本店を覗きに行く。
店舗自体の大きさは周りの店とあまり変わらない。
が、いくつか展開されている店の本店だけあって、水色と白色を基調に塗られた家壁などはかなり立派で目を引いた。
中へと入る。
売られていたポーションの効果を確認していたところ
「え、アデル先生⁉ え、あたしの見間違え?」
……よもやの再会をした。
店内で棚の整理を行っていたのは、かつての生徒。
フェデリカ・フェルミだったのだ。