俺たち稲荷崎は春高で優勝した。
今夜まで宿に泊まり、明日に兵庫に帰る。
摩浪『ふぃ〜』
俺はまた1人バルコニーでくつろいでいる。落ち着く場所だから気に入ってるけど、ここに居られるのも今日までなんだよな。
摩浪『でも寒い』
赤木「やろうな笑」
後ろを振り向くと赤木さんが立ってた。この前と一緒でジャージのポケットに手を突っ込んだまま。
摩浪『お疲れ様です』
赤木「ん、お疲れさん」
摩浪『他の先輩方は?』
赤木「部屋で遊んどる。双子が喧嘩しそう笑」
摩浪『あらあら笑』
俺の横に立って空を見上げてる。でもすぐに俺の顔を見て口を開く。
赤木「摩浪、約束覚えとる?」
摩浪『はい。優勝したら隠してる事を教えるって話ですよね?』
赤木「そうそう。優勝したからな話そと思て」
赤木さんが誰も居ないことを確認するために1度宿の中をかくにんする。そこまでする必要あるのかな?それとも真剣な話するためなのかな?何の話しをされるのか全く検討がつかない。
赤木「よし!大丈夫そうやな」
摩浪『あの…一体何の話を』
赤木「インハイの時の話なんやけど。白鳥沢との試合前に怪我したやろ?」
摩浪『あー、はい』
赤木「試合の後に車で待機しとった時に、その…」
顔を赤くしたと思ったら次は顔隠すし。なんか変だな赤木さん。2、3秒ぐらいして、また俺の顔を見る。
赤木「ここにキスしたんや」
摩浪『はぁ……、、、、は?』
ちょっと動揺してる。俺の額をつついて「キスした」なんて言うから。しかも赤木さんの顔は赤いままだし。
摩浪『な、んで』
赤木「気づかれんと思った。それに、あん時は自分の気持ち確かめたかったから」
摩浪『自分の気持ち?』
赤木「摩浪、俺、お前のこと好きや」
まさかの告白だった。いつもと様子違うし、何かあるなとは思ってたけど告白だなんて。
摩浪『ふぇ?//』
赤木「多分、初めて会った時からずっと。一目惚れやったんやと思う」
摩浪『え、いや、でも……えぇ』
赤木「摩浪は?俺の事どう思う?」
「どう思う」。今まで告白の最後には絶対聞かれてきた言葉だから、聞き慣れてきたつもりだったのに。そもそも告白は慣れてたつもりだったのに、何でかな顔が熱い。
摩浪『お、俺は…、そのッ』
赤木「うん」
摩浪『好き…です』
赤木「!。ほんま?」
摩浪『嘘は言いません。でも、1つだけ聞きたいことがあります』
俺の気になってること。それは
摩浪『何で俺のことが好きになったんですか?』
赤木「摩浪の全部や。特に好きなんは誰よりも頑張り屋で優しいとこやな」
摩浪『え、』
赤木「どんだけ辛くても頑張ることをやめんかった。そんで、誰にでも分け隔てなく接するとこが」
その言葉を聞いた時、俺の目には涙が溢れてた。そんな俺を見た赤木さんな驚いてる。
赤木「どないした!?」
摩浪『そんな風にッ…』
赤木「?」
摩浪『言ってくれる人あんたが初めてだ』
赤木「誰かに何か言われたんか?」
摩浪『今まで俺に告白してきた人たちは、みんな見た目だけ。そして肩書き』
正直嫌だった。俺の外側しか見てくれない、誰も内側を覗きすらしない。今までそんな事の繰り返しだった。けど……
摩浪『俺の内側をちゃんとみてくれる人……いたんですね(泣』ポロポロ
赤木「当たり前やろ。俺だけやないで、バレー部みーんな、お前の中身ちゃんと見てくれとるよ」
俺が泣き出すと彼はゆっくり抱きしめてくれた。何回もやってもらったのに、今日だけは違う。「全部受け止める」って言ってもらえた気がする。
赤木「摩浪、こっち向き」
摩浪「?」
赤木「俺と付き合うてください」
摩浪『はい。お願いします』
彼は俺をもう一度強く抱きしめた後、額と頬に触れるだけのキスをする。
摩浪『ち、ちょっと//』
赤木「ええやんか〜。やっと付き合えるんやし」
そんなもんなのか?分かんないや。ほんの数十秒前まで先輩後輩の関係が、恋人の関係になった。その分距離が一気に縮んだ。
赤木「ここにもしたい」
摩浪『いや早っ。もう少し後でしょ』
て言ったけどムダだった。何度も何度も唇に触れてくる。その度に鼓動が早くなっていって、俺の頬は熱を帯びていく。
摩浪『ストップ…//』
赤木「あと1回だけ」
摩浪『我慢してください』ムス
赤木「わかった笑」ナデナデ
俺がいじけたら笑いながら頭を撫でてくれた。寒いけど、この人の近くにいると本当に心地がいい。俺が入学してからずっと、この人が近くにいたから、成長出来た。
摩浪『本当にありがとうございます』
赤木「何が?」
摩浪『俺の傍にいてくれて』
赤木「これからもずっと傍におるよ」