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K-Takasaka
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#スクラッチャーズ
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K-Takasaka
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古い研修施設は、山あいの道路から少し離れた場所に建っていた。
かつては企業の研修所だったらしく、長い廊下には使われていない教室がいくつも並んでいる。壁の避難経路図は色あせ、食堂の窓からは、遠くの塔と幹線道路が見えた。
そこを拠点に活動しているのが、クリエイター組織「スクラッチャーズ」だった。
メバル、カキ、マサカゲ、ミステー、アオノ、そしてK-T。六人は動画や記事を制作しながら、施設で共同生活を送っていた。
ある午後、K-Tは五人を食堂に集めた。
テーブルの上には、箱に入ったスマートフォンが五台並んでいる。
「これ、今日から使っていいの?」
メバルが箱を持ち上げた。
「スクラッチャーズのデビュー記念だ」
K-Tは短く言った。
「やった! 俺もついに現代人だ!」
カキがオレンジ色のヘルメットを揺らした。
マサカゲは箱の裏面に書かれた説明を読み、アオノは端末の仕様を確認している。ミステーは画面をじっと見つめていた。
「これは、眠らない箱?」
「使い方に注意しろよ~」
K-Tは折りたたみ式のガラケーを取り出した。
「パスワードを使い回すな。二段階認証を設定する。知らないリンクや添付ファイルは開かない」
K-Tは一人ずつ設定を確認した。
「写真を投稿するときは背景も見る。看板、道路標識、建物の形、窓の反射。位置情報が入っていないかも確認しろ」
「顔を隠せばいいんじゃないの?」
カキが尋ねた。
「顔だけが手がかりになるわけじゃない。現在地と投稿時間を同時に公開するな。投稿するなら、そこを離れてからだ」
K-Tは続けた。
「課金前には内容、金額、合計額を確認する。イベントの期間も見る。無料期間のあとに自動更新されるものもある」
カキは少しだけ姿勢を正した。
「怪しい警告が出ても、表示された番号へ電話するな。支払いもしない。誹謗中傷を受けても返信せず、証拠を保存する」
最後にK-Tは、五人のスマートフォンへ同じアプリを入れた。
「デジタルバランス計。アプリごとの利用時間、端末全体の使用時間、通知を開いた回数、課金額を記録する。一定時間を超えると警告が出る。仲間と共有することもできる」
「管理者は?」
マサカゲが聞いた。
「俺」
「監視ではなく、管理だな」
アオノが言った。
「困ったら一人で対処するな。俺か、公式窓口、専門機関へ相談しろ」
メバルは新しいスマートフォンを両手で持った。
「Kさん、ちゃんと使えるように見ててね」
K-Tはうなずいた。
「最初だけじゃなく、ずっとだ」
コメント
1件
わあ、第1話からすごく好きな空気感でした……! 廃校のような研修施設のひんやりした感じと、六人の距離感が静かに伝わってくる冒頭、いいですね。特にK-Tがスマホを配って一人ひとりにセキュリティを教えるシーンが丁寧で、「監視じゃなく管理」というアオノの返しにグッときました。最後の「最初だけじゃなく、ずっとだ」で、K-Tの覚悟みたいなものがふわっと見えて、続きがとても気になります。デビュー記念の箱、素敵なタイトルです🌷