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─これは、とある、おバカ男子3人と女の子がドタバタで送る学校ストーリー。
――昼休み。
私、春川明香里は私立ほしぞら小学校に通う小学5年生だ。憂鬱なことに、廊下で怒られたばっかりである。「廊下は走らない!」って言われたけど、むり。のそのそ歩いてたら、あっという間に昼休みは終わってしまう。せっかくなら、早く外に出て遊びたい。
足も口も考えるスピードも速い。だけど、通知表の「落ち着き」は、毎回”がんばろう”。成績も悪くないし、勉強だって真面目にやっている。
そんな私だけど、なやみがある。そう、「委員会」だ。小学5年生になってから、気になっていた。今まで入ることなんてしなかったが、やってみてもいいかもって思うようになったんだ。
すると、私の担任の先生である佐々木先生が声をかけてきた。
「あっ!春川さん!ちょっといいかな?」
正直、外で遊びたい私にとって、ひまではない。でも担任に呼び止められては仕方ない。
「はい、いいですよ。どうしたんですか?」
先生は、顔色をうかがうように聞いてきた。
「春川さんってまだ委員会に入ってなかったよね?」
嫌な予感がする。
「は、はい。入ってないですけど……?」
「あのね……実は放送委員会なんだけどね、男の子3人しかいなくて人手が足りないんだよね。よかったら春川さん、手伝ってもらえたらな……なんて。」
やっぱり。”放送委員会”は、ちょっと変わったメンバーがいる。男の子が3人だけ。担当の先生はいるものの管理が行き渡っていないどころか、先生が来ないらしい。
それに、みんなからは少し変わった目で見られている。
この前の放送だって、ザワつくような不思議なものだったもの。
――数日前
「……えー……マイクの調子が……あっ……いけますか……えっと……おはようございま……した?」
給食中の校内放送だ。え、だれ今の。しかも、声ちっさぁ!……「おはようございました?」って……なに?時間バグってるし!結局そのあとも、放送にトラブルでもあったのか、不調な様子が続き意味がわからないまま終わってしまった。もちろん、教室はザワつき「ゾンビみたいな放送だった」と言われるほど。
「すみませんが、私は入りません。無理です。」
「そこを…なんとか!!困ったことがあったら助けるから。ね?」
……ぐぬぬ。
先生の顔、本気で困ってる……。
こんなふうに頭を下げられて、それでも「ムリです〜」って突っぱねられるほど、私、冷たい子じゃない。
……それに……
(このまま誰もいなかったら、放送委員会って……どうなっちゃうんだろう?)
ボロボロのまま見て見ぬふりするのも、ちょっとモヤモヤする。
私、そういうの嫌いかも。
っていうか、私が入ったら少しは変わるんじゃない?って、なぜか思ってしまった。
(いやいやいや、なに自分に期待してんの!?)
と、心の中でツッコみながらも、もう口が勝手に動いていた。
「……分かりました!私が入ります。」
先生は、今にも泣き出しそうな顔をしながら、「ありがとう」と言った。先生から委員会入会の紙をもらい、丁寧に名前を書いていく。半分、気分が沈んではいるものの了解したからには、がんばらなくてはならない。
――――――――
――――
――
ひとまず、家へ帰り、これからどうしたものかと思いながら湯船につかる。お湯がぶくぶくと音を立てて空気が入る。いまさら考えていても仕方がない。
長くつかっていたせいか、お母さんの怒声がひびく。
「あかり!?いつまで入ってるの!?!?早く上がりなさい!!」
(やばっ!!忘れてた……ふぁ…ひとまず寝よう。)
お風呂からでて、自分の部屋のベットへと転がる。綺麗な月の光がカーテンをゆるく照らしていた。そして、不安になりながらも私は眠りについた。
─明日から忙しいことになるとは、この時は思ってもいなかった。
――翌日
「失礼します。」
朝、学校に登校し委員会の拠点となる放送室へ向かった。挨拶をしたものの、返事がないので入ることにしよう。
「……お前が、新人か!?!?!?」
─バタン。
私は、ドアを閉めた。無理だ。帰ろう。見るからに一線を引きたくなるような男の子が出迎えた。
すると閉めたドアが勢いよく音を立てて、また開いた。
─ドタッ!バタン!!ガラガラ!!
「おい、なんで閉めるんだよ、ばかやろう。」
「なんでって……」
言葉を返そうと思って顔を上げると、顔立ちの整った男の子が立っていた。一瞬、ドキリとした。だって、すごく綺麗な顔だったから。
って……そうじゃなくて!!
「と、とりあえず!あなたは?名前は?」
会ったことなんてもちろんないし、初対面なわけだから名前ぐらい聞いておかなくては。凛と光った目が私を見つめる。
「俺様か?名前は……天野渚だ。お前は?誰だよ」
……えっ……お、俺様!?見た目はそんな感じが1ミリもない。すごく透き通った瞳に、オレンジが強い綺麗な茶髪だ。爽やかな感じがする青少年。
(主語が俺様なんだ……なんか残念なイケメンだ。)
渚と名乗った男の子は、こちらをマジマジと見つめてくる。なんだろうと思ったら、相手が先に口を開いた。
「で?」
「……はい?」
不機嫌そうな顔で聞いてくる。怒ってるのかな。
「”はい?”じゃないだろ!お前は誰なんだよ。名前。俺様だって知りたいんだからさ。言わないと呼べないし、分からん。」
はっとした。そうだった。私が誰なのか名乗ってなかった……。不機嫌そうな理由はこれか。すっかり忘れていた。
「まあいいや。とりあえず自己紹介は、入ってからにしてくれ。メンバーも紹介するし。来いよ。」
「は、はい……。」
ど、どんな人達なんだろうか。先生は3人と言っていた。彼をのぞいて、後2人。おずおずと彼のあとに続いて、私は放送室の中へ足を踏み入れた。
室内は思ったよりも広くて、静かだった。……というか、変な静けさがある。
壁にはマイクやスピーカー、ヘッドホン、スイッチのつまみがぎっしり並んでいて、まるでちっちゃなラジオ局みたい。
机の上には原稿の束や、カセットテープみたいな古い録音道具も置かれていた。何十年も前から使ってます、って顔をしてる。
ふと掲示板を見上げると──「放送委員会SNS、更新中!」の文字が手描きで貼られていた。
(え、SNS……?それ、放送委員会でやるやつなの?)
なんだか、機材のごちゃごちゃした感じと、SNSっていう現代感が変に混ざってて……へんな部屋だな。……聞くのは、後でにしよう。空きスペースにある、四角いテープルと椅子に2人の男の子が座っていた。
「おい、お前ら!新人が来たぜ。」
雑談で盛り上がっていた2人が、一斉にこちらに視線を向ける。1人はメガネをかけた真面目そうな子。もう1人は明らかに元気そうな子。
私は慌てて2人へと向き直り、自己紹介をした。
「初めまして。今日から新しく放送委員会に来た、春川明香里です。よろしくお願いします!」
最初は印象が大事だと言われるので、私はいつも自己紹介は元気にふるまっている。
2人はそれを聞いて、うなずいたり、顔を見合せたりと興味を示していた。
「こんちゃ!俺は、宇敷裕太っす!よろしく頼むわ!」
見た感じは普通な男の子って感じだが、どこか力強いように見えた。
「わあ!!これが、オンナノコなん!?滅多に話さへんから、なんか新鮮やんなあ!……せや!忘れとったわ!ワイの名前は、笠木雨晴やで!優しゅうしてな?」
わぁ……眩しい。元気すぎる……この子。関西弁?……出身がその辺の人なのかな。とにかく元気だし、ぴょんぴょんしてる…………テンションが年中無休で上がり続けているタイプだな。
「放送委員会は俺様たち3人で活動してる。分からないことがあったら聞いてもらっていい。今日の活動は休みだから、テキトーにしていいぞ。」
「は、はい……」
(あ、この顔ぶれ……)
ここでようやく思い出した。
放送委員会のメンバーって、たしか学校で有名な──
校内3バカトリオ。
天野渚─方向音痴。どこにでも突っ込んでいく”俺様系”迷子男子。
宇敷裕太─メガネが特徴的。食べてるか、笑ってるか。給食3杯+弁当の食欲モンスター。
笠木雨晴─関西弁の元気印。でも、泣き虫で雨の日は休みがち。
って感じの、ツッコミどころしかない3人組。私はあまり、ウワサ話や、そういう類は聞かない主義だが……
こんな彼らとこれから、放送委員会で共にしなくてはならないのかと思うと憂鬱でしかない……とてもじゃないが馴染める気がしないのだ。問題児を私が、どうにかできるとでも思っているのか、何なのか。はやくも先生に助けを求めたい。
―――――――
――――
――
せっかくなので給食はクラスで受け取ったあと、私は放送室で食べることにした。基本食べる場所は教室と決まっている。だが、委員会に所属している人は自分たちの委員会室で食べることが多い。部屋に入るとあの3人も居て、先に食べていた。
「こっち座って一緒に、食べへん?」
「じゃあ、お言葉に甘えて失礼します!」
声をかけてきたのは、雨晴だ。おバカと言われるが、一見そうは見えない。
雨晴の隣座っていた、裕太くんに目をやると……
「はぇっ!?」
思わずでかい声が出てしまった。
彼は給食をおかわり分まで貰っていたのに、それプラス自分でお弁当を持ってきていた。この時点で既にびっくりだけど、何がまたおどろくかって?彼のお弁当箱が重箱だったからである。
(え!?……おせち料理でも入ってるの!?でっか!)
「ね、ねぇ……裕太くん……そんなに食べれるの?というかお腹破裂しないの?……お腹すいてるの?」
質問攻めみたいになってしまったけど、聞きたいことが山ほどある。他のふたりをキョロキョロと交互に見たもののスルー……というか慣れているらしい。
「え?このぐらい、俺にとっては普通っすよ?むしろ…明香里さん、少なすぎっすよ!もっと食べてください!」
─グイグイ、グリグリ
「むぐ……も、もう大丈夫だよ……!!」
「無理や無理!ワイらでもキツイんやから!!食べれへんて!!」
ガチャガチャ音を立てながら、騒がしく食べる。よく今までやってこれたな…放送委員会のみんな。恐ろしく感じてきた。
「お前ら!ちゃんと食べろよ!!じゃないと力つかねぇぞ!」
大きい声で話す渚くんの手元を見て、つい叫んだ。
「いやいや!あなたも、なに、デザートのプリンから先に食べてんのよ!!!」
「はぁ?食べ順なんて何でもいいだろ。細かいな。」
面倒くさそうな態度で、プリンを食べ進める渚くん。さらに残っている、おかずと、ピーマンが目に入る。
「ピーマン……食べないの?」
「うるせー……後で食べなくもない……」
なるほど。ピーマンが彼は苦手なのだな。だからといって、他のおかずも食べずプリンからは意味がわからない。
「はぁ……どうしようもない、バカね。」
「なんかいったっすか?」
「いいえ!なんにも!」
――――――
――――
――
「おい!ここにあった、ゴミ箱は!?!?」
教室に戻ると、ちょうど騒ぎの真っ最中だった。
「誰か持ってったんじゃないの?」
生徒たちが口々に騒いでいる。
見ると、いつもの教室の隅にあるはずのゴミ箱が、どこにもない。
(……え?なんで?)
教室のゴミ箱は、基本的に先生たちが中身を回収してくれる決まりだ。
だから、生徒が勝手に持ち出すのは禁止されてる。
でも、佐々木先生は今この教室にいるし……他の先生が来た様子もなかった。
─じゃあ……誰が?
バン!!!!!!!!
ものすごい勢いで教室のドアが開く。
「俺様たちの出番ってわけだな!!」
「久々っすね!ワクワクする!!」
「まぁたSNSに投稿できるやんな!気合いいれな、あかん!」
振り向くと、放送委員会の3人が来ていた。
(えっ……えぇぇぇ…………問題児来ちゃった……)
「な、なんで、出番なの!?」
すると私の後ろにいた、佐々木先生が教えてくれた。
「彼はね、ただの放送委員会じゃないんだよ。放送委員会のSNSを作ってて、そこに学内の不思議な出来事を解決してアップしてるんだよ。まぁ……すごくバカっぽい出来事だけどね…………。」
「は、はぁ……?」
まあ、彼らが関わる時点でバカっぽいことは分かってたけど。そこまでとは……もはや、呆れる…………バカだあ…………。
というか……解決も何も…おバカじゃどうにもならないのではないのか。
そう思ったが、言わないでおこう。
「ちょ、ちょっと!出番って言っても解決出来るの!?どうするの!?」
「俺様に任せろ。」
自信満々に言う彼の顔はすごくかっこよかった……が、不安でしかない。
「ひとまず、俺様はゴミ箱の匂いでもたどって探してくる。じゃあな!」
「頑張りやぁ!!」
(えっ…君たち本気で言ってるの!?)
「まってまって!!……ダメでしょう!?彼…というか渚くんは”方向音痴”でしょうが!」
「あれ?そうでしたっけ?忘れてたっす。」
「もう!おバカ!!! 」
「わっ!仲間を怒らんといてぇなぁ!怖いわぁ……うわぁん(泣)」
「泣かせちゃダメっすよ!明香里さん!」
「えーい!知るか、ばか!!!!」
(なんだこのカオスは……。)
ゴミ箱よりさわがしいこの状況に、唖然とするしかない。もはや、周りの生徒も忘れ去られている勢いだ。カオスすぎる。
─というか……
「ちょ!渚くんは!?探さなくていいの!?」
「頑張れば、戻ってこれるっすね」
「見捨てるんかい!!!」
私たちのやり取りを見ていた生徒から、爆笑がおこる。て……そうじゃない!
(それどころじゃないでしょ!)
私は別にコントをしたいわけではない。芸人じゃないのだ。あまりにも、渚くんに対する扱いがひどすぎて可哀想に見えてくる。
仕方ないので、代わりに探すことにした。
――――――――
―――――
――
「いや、ほんとにどこなの!?」
廊下の真ん中で叫ぶ。本当に見当たらない。どこに行ってしまったのか。そもそも、匂いで辿るとは何なのか。無理があるだろう。一度、外へと向かう。中も外も、隅々まで歩いてみることにした。外は晴れていて、穏やかな風が吹いていた。スズメの鳴き声も活発に聞こえてくる。
そんななか、しばらく歩き回っていると、ふいに後ろの草木からガサガサと音がする。
「っ……!?」
「いってて……ここどこだっけ……?」
草木から出てきたのは、探していた渚くんだった。いろんな所へ走り回ったのか、ボロボロになっている。草もいっぱいついていれば、土も少し服についていた。
「やっと見つけた……どこまで行ってたのよ……?」
「さっきまでは、なぜか職員室の方まで歩いていた……。気づいたら、ここまで歩いていたな。」
正直、もうため息しかでない。これほどまでに方向音痴だったとは。今までどうやって校内を歩いていたんだろうか。
見上げると、渚くんの頭に緑色の綺麗な葉っぱが頭に乗っかっていた。
「頭に葉っぱくっついてるよ?」
葉っぱをひょいっとつまんで捨ててあげる。こちらを見ていた渚くんと目が合って一瞬、びっくりしたが直ぐに逸らした。
(顔がいいって恐ろしい……。)
「……??…………あっ!そういえば俺様、手がかりを見つけたんだぜ。ほら。」
「???」
持ってきたのは、給食で出される紙パックの牛乳だった。中身は空っぽだ。少し潰されていてストローもそのままささっている。
誰かがふんだのか靴についていた泥が牛乳パックの表面にもついていた。
「それ、どこにあったの?」
「給食の配膳室の裏の草木に落ちてたんだ。」
(配膳室の裏……?なんでそんなところに牛乳パックが?)
思わず考え込む。教室で出るゴミって、基本は“教室のゴミ箱”に捨てる決まりがある。
(でも……そのゴミ箱が消えて、牛乳パックが外に?)
頭の中に、構内図が浮かんだ。配膳室の裏って、トラックで荷物を運ぶときに使う搬入口があったはず。
(……まさか!)
「ゴミ箱が……あの裏口から運ばれたってこと!?」
牛乳パックが草むらに落ちてたってことは、誰かがゴミを運んだときに、うっかり落としたのかもしれない。しかも、それが教室のゴミ箱ごとだったとしたら……!
「わかった気がする!!!」
「ほんとか!?」
――――――――
―――――
―――
一方その頃
「帰ってこないっすね。リードでも付けとけば良かったっす。」
「犬じゃないしな……んーいや…でも……せやな……つなぎとけとけば良かったわ。」
─ガラガラ!
「おまたせ!みんな!分かったわよ!!どこにあるのか!!!」
私は急いで、渚くんを引き連れて教室へと帰還した。途中で渚くんが「こっちじゃねぇの?」って言ってきたが、軽くスルーした。
―――――――――
――――――
――
何人かのクラスの生徒ともに給食室へ向かう。そしてたどり着いた先にあったのは、教室にあるはずのゴミ箱が置かれていた。
(やっぱり……!)
「あった!良かったっすね!」
「でも……なんで給食センターなん?」
そこで私はさっきの、出来事を説明した。草木に牛乳パックの空が落ちていたこと。それが、給食室の裏だったこと。もろもろ。
「なるほど……でも誰が……やったんすか?」
「あぁっ!?!?!?」
ついてきていた数人の生徒の中から一人の男の子が声をあげた。焦ったような、申し訳なさそうな、なんとも言えない表情を浮かべていた。
「す、すみません……俺です……牛乳パックのゴミ袋を取って普通なら持っていくんですけど……その日は替えの袋がなく……そのまま中身だけ捨てようと運んで置いてきちゃってたんです…………思い出しました……すみません。」
頭をペコペコと下げ、申し訳なさげに謝罪する。まあ……大きい出来事じゃなくて良かったけど……人騒がせである。おかげで私も普段は使わない労力をたくさん消費した気がした。
「まっ!良かったなぁ!見つかって!……ゴミ箱が嫌になって逃げ出したんかと思ったわあ!!」
「自我を持ってたら、大発見っすね!俺ら!」
「いやいや!ゴミ箱に意志はないからね!?」
私がするどいツッコミを入れる。
「お前なぁ……あくまでも想像だろ?なんでもいいじゃねぇか…………好きにさせてやれ。」
「全くもう!!あなたたちは!!!」
やいのやいの言い合っていると担任の先生もこちらに来て声をかけてくれた。
「なにはともあれ、君たち放送委員会のおかげだね。ありがとう……!!」
(あれ?……よくよく思い返してみると──)
(渚くんは、牛乳パックという決定的な手がかりを見つけてくれた。でも……)
(……雨晴くんと裕太くん……ただ横で騒いでただけじゃない!?!?)
(ていうか、私より役に立ってない気がするのは、気のせい……じゃないよね!?)
(しかも……裕太くんに関しては渚くんのこと見捨てなかったっけ……!?)
はぁ……やっぱりこの放送委員会、全員が戦力ってわけじゃないのかもしれない。
(ていうか、私が一番がんばってない!?ねえ、そうだよね!?)
――放課後の放送室にて
「よし!投稿完了っと!」
放送室に戻ると、どうやらSNSに先程の出来事を裕太くんが投稿したらしい。そうあの後、私たち放送委員会と犯人だった男の子で写真を撮っていたのだ。
「それ……投稿してどうするの?」
「どうって別にどうもしないっすよ?」
その言葉に、私はちょっとむっとした。
なんだか、もやもやする。だって、私たち、けっこう頑張ったのに。
(……事件を解決したって、結局”いいね”が増えるわけでもないし、誰かから褒められるわけでもない。
それに、放送委員としての成績が上がるとか、ごほうびがあるわけでもないし……)
(……だったら、なんのためにやるの?)
一瞬、そんなふうに思ってしまった。
がんばったことが「数字」や「ごほうび」になって返ってこないなら、意味ないんじゃないかって。
「あのな、明香里……お前は自分に得があるかどうかで人助けするのか?」
横にいた渚くんに突然、問いかけられた。
「えっ……そういうわけではないけど……でも私たちの努力が報われないかなって。」
真剣な眼差しがささる。彼に言われた言葉が重く感じる。別に、損得で助けるのかどうか、決めてはいない。人助けが悪いことでもない。でも、解決したところで私たちの努力が報酬として返っては来ないのだ。それは、依頼主によるかもしれないが。
「……感謝されるだけ……じゃダメなのか?」
私は一瞬、言葉に詰まった。
そうか……感謝されるって、そういうことか。
目に見えるごほうびじゃないけど──
“ありがとう”の言葉だけで、心がふわっと軽くなる気がした。
(……私、何を求めてたんだろう……彼らは、最初から報われたいとか、褒められたいとか、そんなこと考えてなかったんだ……)
事件のあとも、ずっとバカみたいに明るくて、でも、ちゃんと誰かの困った顔を見つけては、動いてたのだ。
──ただ、それが「楽しい」から。
「ありがとう」って言ってもらえるのが、うれしいからである。
(……そっか。そういうのって、いいな……)
夕焼けの中、放送室の窓からのびた光が、みんなの顔をオレンジ色に染めていた。
騒がしくて、うるさくて、まぬけな放送委員会。
でも、なんだか……ちょっと、好きかも。
「……うん、感謝されるのが一番だね。ありがとう。」
「おう……。」
「なんや……えらい、仲良しになったんやね……?」
真剣に話していたら、ふいに雨晴くんが、ムスッとした顔でこちらを見ていた。
「妬けるっすね……」
「せやせや………ずるいわぁ……」
そういう2人に渚くんが近寄り、2人の頭にぽんと手を置き軽く撫でた。
「はいはい、お前らのことは、忘れてねぇよ!」
やれやれと言った顔で相手をする様子は、おかしく見えて、笑ってしまった。
「……笑われてるやん!」
「ひどいっすよ!これは、友情と、委員長の愛情っす!!」
「別に何も言ってないわよ!!?」
「お前ら、やかましいな…………」
「あなたに言われたくないんだけど!!!」
笑いながら一日が今日も終わった。放課後にこうやって集まり、会話を交わす。放送委員会は、やっぱり大変で疲れるけれど、少し新鮮に感じた。
(このメンバーとなら……なんてね…………)
「どうした?」
「どうしたんすか?」
「なんやなんや?」
3人がこちらを見た。ドキドキするけど…………
不思議とホッとする。
この3人となら、なんとかなる気がした。
「なんでもない……!…………これから、よろしくお願いします!」
不安もまだまだあるけど、私も頑張っていかなきゃいけないだろう。
3人の顔を代わる代わる見つめると、渚くんは少し赤くなっていた。
「なんや……照れとるん?なぎっ!可愛いとこ見っけたわぁあ!!!」
そう言うと雨晴くんはピョンピョンしながら飛びついた。
「うるせー!見んな!!飛びつくんじゃねえ!!」
「楽しそうでなによりっす!」
また、騒がしさが戻ってきた。
「はぁ……やれやれ……ゴミ箱事件は片付いたけど、あなたたちが一番……片付かないわね…………」
――――――――
――――
――そして翌日
「昨日は、教室からゴミ箱が消えるという事件が発生したっす!最初は大騒ぎになったっすけど、俺たち放送委員会が調査した結果……犯人は、男子生徒Aくん!ゴミ袋がないことに気づかず、ゴミ箱ごと配膳室の裏に置いてきてしまっていたようでしたっす!」
─教室には、放送を聞いている生徒たちの笑い声が広がる。
給食の時間。改めて解決したことが放送された。大した事件でもない。本当に、「なんだ、それだけか」ってぐらい小さすぎる。私的にはそのぐらい小さくていいんだが。
―――――――
――――
――
─『ゴミ箱消失事件』、解決!
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#校内SNS放送委員会 #バカトリオ再び #犯人はうっかりさん
fin.