今日こそは殺す。傘を返しにきた保科を家の中に入れる。
「昨日はほんまにありがとうございました」
保科はそう言って何回目かもわからない頭を下げる。しっかりと教育がされているんだなぁ。
それから保科とはたくさんの話をした。保科の話や鳴海の話、世間話などたくさん話した。鳴海はなぜか気を許せた。殺すのに。
「少しトイレに行ってくる」そう言って席を立つ。廊下に出てからトイレに行くふりをしてナイフを手に取る。今日こそは、今日こそは。
ナイフを持った手を隠して、戻る。鳴海は保科の背中に立つ。保科は先ほど紹介した本を読んでいるので振り向く素振りはない。グッとナイフを突き上げる。そうして、落とす。
できない。ボクにはできない。鳴海は結局今日も暗殺できずに終わってしまった。なぜできないんだ?情けとも違う何か別の感情がある。これでプロなんてウケる。そう考えながら、保科が座っていた席を見つめる。
、、、こいつがターゲットではなく、普通の保科宗四郎としていれたら、、、
ボクはおかしいな。そう呟いて後片付けを始める。
「今回のターゲットだが、まずは殺さずに確保して情報源にしたり人質として使うことになった。」
アジトでゲンはそう言われた。
「お前は暗殺専門だから、別の奴らが確保に移っている」
頭が真っ白になった。
「っなんでだ??!!」
声を上げる。なぜだ。
「仕方ないだろう。依頼主がそう言った。あぁ、でも君にもお金は払うらしいから安心して」
違う、そういう話じゃない。
外から車の音が聞こえた。
「噂をすれば、ターゲットを連れてきたようだね」
「君はここで待機だ」
そう言って奴は部屋を後にした。