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雪は好きだ。雪の白は、本当の白だと思えるから。
でも、冬はそんなに好きではなかった。
「ゔ…寒い……」
雪を見るために外に出たが…あまりにも寒い。
今なら雪に埋もれて凍死することも可能だったが、寒さと面白みが欠けるので断念した。
死ぬなら春に死のう、そう思い帰ろうと決心した。
帰り道の途中、商店街で見慣れた人物を発見した。
「あっ!大瀬さん、どうしたんですか?」
そこにはマフラーに身を包み、両手に大きな袋を持った依央利がいた。
いつもは首輪をしている首に巻かれたマフラーがどこか不思議で羨ましい。
「っていうかさ……そんな格好で寒くない?これ着けます?」
そう言うと、依央利は素早く自身のマフラーを外し、大瀬の首に巻こうとした。
「ちょっ、いおくん!!?」
あまりに自然な動作なため反応が遅れ、無事に依央利の奉仕を受けてしまった。
まずい、これでは依央利に迷惑がかかってしまう、そう思い折角巻かれたマフラーを外そうとした。
「え?何で外そうとするんですか?」
「ぇ…だっていおくんが…」
「僕?奴隷にマフラーは必要無いですけど?」
いや、嘘つけ。寒がりなくせに…こういう時はいつも強がる。
その証拠に、今も依央利は震えていた。
「いおくん…本当は寒いんでしょ…?」
「いやいやいや!!別に全然寒く無いし、てか大瀬さんだって同じでしょ!?僕だけマフラーなんてしてたら大瀬さんに負荷がかかるでしょ?」
もう言い包められて帰る方がいいのでは?と思ってしまったがこっちはクソ吉。そんな苦行を依央利にさせるなんて事が出来ない。
じゃあこうするしかないのかな?
「いおくん、手、出して」
「……?手…繋ぎたいの?」
「うん…」
「まあいいけど…どうぞ」
大人しく出された手を握ってみた。冷たく、指の一本一本が細い。
「…大瀬さんの手、意外とあったかいんですね」
少しばかり顔が赤くなる依央利が愛おしく思えた。
帰り道、冷たい風が容赦なく僕達を襲った。
「やっぱり寒いですね」
「だから言ったじゃん…。あっ、そうだ。いおくん、マフラー…半分こしようよ」
「えぇ…それじゃ僕の負荷が……、別に良いですけど」
本当に素直じゃないなぁ…無我って何だっけ。そう思いつつ依央利にマフラーを巻く。
「今度作ってあげますね。マフラー」
「いや、自分が作ります」
「は?何で?奴隷の役目奪わないでもらえます?」
「クソ吉何で…」
そんな事を言いつつ、顔は満ち足りている依央利が、あまりにも眩しかった。