哲汰side
手紙を読んだ夜、
俺は一睡もできなかった。
涙が枯れるまで泣いて、
それでも胸の奥が痛くてたまらなかった。
朝になって、窓を開けると、
春の風がカーテンを揺らした。
どこかで鳥が鳴いている。
その音が、なぜか直弥の声に聞こえた。
「哲汰、外出ようよ」
ふと、そんな声が耳の奥で響いた気がして、俺は外に出た。
あの日と同じように空を見上げる。
雲ひとつない青空。
まるであの日、病室の窓から一緒に見た空
みたいだった。
あのとき、直弥は言っていた。
「哲汰が来ると、病室が色づいて見える」
って。
でも今は、俺の方がそう思ってる。
直弥がくれた時間が、
俺の世界をずっと色づけている。
風が頬をなでていく。
まるで、直弥の手みたいに優しくて、
あたたかかった。
哲「直弥……」
小さく呟く。
返事なんて、あるわけないのに。
それでも、不思議と胸の奥が軽くなる。
春の空に滲む光が、
涙を通して少し滲んで見えた。
哲「……またね、直弥」
その言葉を風に乗せて、
俺は空に微笑んだ。
さようならじゃない。
この想いは、消えないまま、
どこかでずっと続いていく。
直弥との物語はここで終わる。
でも、俺の中の直弥は、今も確かに、
生きている。
――またいつか、どこかで。
𝐹𝑖𝑛.
コメント
5件

最高すぎましたт т 世界観大好き過ぎて続きが毎回楽しみだったのでもう終わりなの寂しいです🥲🌀🌀
本当に最高でした߹𖥦߹👍🏻💘 ひとつの世界を覗き込んでいたかのような、とっても儚くも美しい時間でした.⋆𝜗𝜚☆