ガクくんに会いたい。
寝不足の頭はその考えに塗りつぶされる。
そう、僕は恋人であるガクくんにこの2週間全く接触できていなかった。
付き合ってすぐに、ガクくんからは俺の事より先に勉強するようにと言われ、今回のテストもちょっとの電話とメッセージのやりとりで毎日をやり過ごしていた。
このテストの期間が僕が一番荒んでる時期だ。
ガクくんにはすぐに電話は切られるし、先生はテストのことしか言わないし。
それ以前にテストなんてクソくらえだと叫びそうになるような事件が起きた。
「ふざけんな、、二度とあの公式を見たくない、、」
学生あるあると言っても過言では無いほどよくあること。
テストの範囲を見事に間違えていたのだ。
僕が必死に勉強したものは1個先のもので、ここ最近授業でやった事は出ず、その前の単元がまるっきり出たのだ。
幸か不幸か。
僕は何故かテストのことが無駄に気がかりで、テスト範囲表を見直したらなんと言うことだろう見事に間違えていた。
本当に泣きそうになりながら自力と意地で復習をし、今すぐに高校生を辞めたい気持ちに駆られながらみた時計を見ると、五時を回っており、嫌になりすぎて机から転げ落ちた。
そのまま起き上がることも出来ず、泥のように床で寝ていたのだ。
1時間とちょっとの睡眠でギッチリとしたテストを乗り越えたのだから、誰も文句を言うものはいないだろうとホームルームの途中、マスクの下で僕は、お気に入りのチョコレートを口の中で転がしていた。机に突っ伏して隣の席のやつは多分気づいていたがあまりにも酷い顔をしていたのだろう。
頭をポンッと撫でたあとなんにも言わず帰って行った。
「それじゃ、今日はこれで終わるぞー。皆テストお疲れ様だった!」
担任の人一倍大きい声が頭に響き、ため息をついた。
チョコがなければ今頃机をひっくりかえして暴れまくっていた。
やっと終わった。
もう二度とこんな事がなくあれと願いながらもガクくんに会えるという喜びで気分上々。そそくさと教室を出て、下駄箱で靴を履き替え外に飛び出す。
今すぐにジャズを流してみて欲しい。絶対に僕今なら踊れる。
ちょうど外に出たタイミングを見計らったかのようにバッグの中で携帯が振動するのを感じた。
あーもういい加減にしてくれ僕は今、ガクくんと話すことでいっぱいなんだと半ギレで携帯を取り出し、宛先もろくに見ず電話に出る。
「もしも『とやさん!』えっ」
耳に飛び込んできたのは大好きで大好きでたまらない聞き慣れた声。
寝不足による幻覚かと思い、一旦耳からスマホを離し宛先を見るとガクくんという文字が羅列していた。
「がっ、がくくん」
『あれ、出てきたの刀也さんじゃなかった?』
「や、いや、そうです、」
返答したあとちょっとした違和感を覚える。
普通ならもうテスト終わった?みたいなそんな疑問符が飛んでくるはずなのに、彼は校舎から出てきたのは君かという確認だった。
言いたいことがありすぎて喉につっかえて逆に何も出てこない。1人であわあわしているとガクくんが先に口を開いた。
『とぉやさんにクイズ!俺はどこにいるでしょーか!』
「学校」
そうやって聞いてくるということはこういうことだろうと僕はなんにも考えず言葉を発した。
すると後ろと電話から2重に声が聞こえた。
「ブッブー!残念、不正解だぜ!」
声がきこえた瞬間ずっと触れたかったその体に抱きつき、胸元に顔を埋める。
久しぶりの感触に心が落ち着くと同時に心臓の鼓動が早くなる。
いつもの格好じゃなくて、茶色のコートとセーターに身を包んで表れた。それも凄く恋人らしい登場の仕方で。
「わっえっとやさんどしたの!?いつもそんなことしないじゃん!
、、もしかして俺がいなくて寂しかった?」
「うん、さびしくてしょうがなかった」
「エッ」
「ガクくんすき。会えて嬉しい」
疲労で羞恥を捨て切ったのか、素直な感情を吐露しながら彼の服をぎゅうっと握る。
いつもの僕ならされるがまま、するとしても控えめに腕を回すくらいだ。
抱きしめ返したとしてもその口は全く可愛げもない言葉ばかり吐いている。だからなのか今僕が抱きしめている彼はずっと固まっていて動かない。
もしかしたら引かれてしまったかもしれない。
不安になり、恐る恐る目を開けるとそこには真っ赤になった彼がいた。
「っあーーずるいとやさん、、可愛い、、連れ去っちゃいたい、、」
多幸感で満ち溢れているとザワザワという喧騒が耳にやっと入ってきた。
「え、剣持?あれ、え?なに?
「え!?あのイケメン誰って剣持くん!?」
とか何とか。周りにいた人達の声で一気に現実に引き戻される。
さっきまで頭を埋め尽くしていた幸福感はどこへ行ったのやら。
「やべぇ、やっちまった、、」
「あぁ、ほんとですよ、何してくれてるんですか」
学校だと気づいた瞬間、恥ずかしさが襲いかかり、慌ててガクくんから離れる。多分僕の顔も負けじと赤いだろうけど。
そうすると、より一層騒ぎが大きくなり顔をしかめる。
ぐちゃぐちゃとしたどす黒い感情が、先程の多幸感の代わりにのしかかる。
見せないように、話にも出さないようにしていたのにやはり疲労は頭を馬鹿にさせる。
「ガクくん、早く帰ろう。」
「えっ、いいの?挨拶しなくて」
「いいんです。クッソ、、ガクくんのこと知られたくなかったのに!」
「えっなんで?!」
「だって!ガクくんモテちゃうじゃん!僕のガクくんなのに!」
そう叫んだ後に、はっと我に返る。
え?今僕なんて言った?僕のなのに?いやいやいやそうは思ってるけど言っちゃダメだろう。彼の顔を見るのも怖いためノールックでガクくんの腕を引っ掴んで、車の鍵を持っていることを確認しガクくんが来たであろう方向にズカズカと歩く。
しくった。最悪だ。言うつもり無かった女々しい気持ちまで全部さらけだしてしまった。
絶対引かれたし、面倒臭いやつだとか思われた。もうやだ、やっちゃった。無言で彼の車を見付け、乗り込む。
「ねぇ、とやさん」
「、、今すぐに舌噛み切って死ぬ準備できてますけど」
「違う違う違う。なんでそうなるの」
「じゃあなんですか」
「愛されてるなあって」
ハンドルに頭を乗せ、こっちを向いて微笑むガクくん。
なんだその顔、かっこよすぎる。そんな顔見せられたらもっと好きになってしまうじゃないか。
こんなに愛おしいと思うのはきっと彼だけ。
「、、引かないの」
「なんで引くの。俺と同じなんだなぁって思っただけ」
「え?」
「俺も刀也さんのこと、誰にも見せたくないよ」
そう言ってガクくんが運転席からこちらに体を向け、ゆっくりと近づき唇を重ねる。
触れるだけの優しいキス。それでも十分幸せを感じる。
でもまだ足りない。そう思うのはわがままだろうか。
名残惜しく唇を離すと、ガクくんが今までにないくらい神妙な面持ちでこちらをじっと見つめてきた。
「ねぇ、刀也さん。俺、忙しくてずっと会えない時に思ったんだよ。これから先こうやって会えない時間とか増えるのかなって」
だからと言いかけ、僕の手に重なるガクくんの手に少しだけ力が篭もる。え、このノリってよくある別れ話のやつじゃ、と変なことを考えてしまい、不安になる。
ガクくんは暫し視線を泳がせてから、キッとこちらを見据え、形のいい唇をやっと開いた。
「そうなる前に一緒に住まない?」
一瞬何を言われたのか分からず、ぽかんとする。
そして理解した途端、ぶわっと顔が熱くなり心臓がバクバクと音を立てる。
「へ、す、む?」
「そう。刀也さんの親御さんにも許可取ってきたよ。喜んで送り出して貰えたけど、ほんとに良かったのかな、、」
確かに、この間何故か僕がリビングから追い出されたことがあった。あの時は疑問に思わなかったが、家に帰ってきた時の両親のあまりの機嫌の良さ、そしてガクくんのすごく嬉しそうな顔。
そのことを思い出し、外堀が完璧に埋められていることに気づく。嬉しくて、堪らない。
あぁもうガクくん君ってやつは。
涙が溢れそうで、見られたくなくて顔を背ける。すると不安そうな声で名を呼ばれる。
「とやさん?」
「毎日ハグすること」
「へ?」
「いってきます、行ってらっしゃいは朝早かったら無理しなくていいけど、出来ればして欲しい。」
「え、あ、え、」
「、、、できますか?」
恥ずかしいのは僕も同じなのだ。これくらい許してほしい。それにさっきガクくんも言っただろう。
――僕だって君のものだ。
そう告げるとガクくんがぎゅっと僕を抱き寄せた。苦しいくらいに強く。
すると鼻声でうん。というものだから笑い声が漏れてしまう。
ガクくん、大好きだよ。これからよろしくね。
そんな声が聞こえ、ばっと振り返るとギュッと目の前が暗くなり、大好きな家に帰ってきた時の両親のあまりの機嫌の良さ、そしてガクくんのすごく嬉しそうな顔。
「、、引かないの」
「なんで引くの。俺と同じなんだなぁって思っただけ」
「え?」
「俺も刀也さんのこと、誰にも見せたくないよ」
そう言ってガクくんが運転席からこちらに体を向け、ゆっくりと近づき唇を重ねる。
触れるだけの優しいキス。それでも十分幸せを感じる。
でもまだ足りない。そう思うのはわがままだろうか。
名残惜しく唇を離すと、ガクくんが今までにないくらい神妙な面持ちでこちらをじっと見つめてきた。
「ねぇ、刀也さん。俺、忙しくてずっと会えない時に思ったんだよ。これから先こうやって会えない時間とか増えるのかなって」
だからと言いかけ、僕の手に重なるガクくんの手に少しだけ力が篭もる。え、このノリってよくある別れ話のやつじゃ、と変なことを考えてしまい、不安になる。
ガクくんは暫し視線を泳がせてから、キッとこちらを見据え、形のいい唇をやっと開いた。
「そうなる前に一緒に住まない?」
一瞬何を言われたのか分からず、ぽかんとする。
そして理解した途端、ぶわっと顔が熱くなり心臓がバクバクと音を立てる。
「へ、す、む?」
「そう。刀也さんの親御さんにも許可取ってきたよ。喜んで送り出して貰えたけど、ほんとに良かったのかな、、」
確かに、この間何故か僕がリビングから追い出されたことがあった。あの時は疑問に思わなかったが、家に帰ってきた時の両親のあまりの機嫌の良さ、そしてガクくんのすごく嬉しそうな顔。
そのことを思い出し、外堀が完璧に埋められていることに気づく。嬉しくて、堪らない。
あぁもうガクくん君ってやつは。
涙が溢れそうで、見られたくなくて顔を背ける。すると不安そうな声で名を呼ばれる。
「とやさん?」
「毎日ハグすること」
「へ?」
「いってきます、行ってらっしゃいは朝早かったら無理しなくていいけど、出来ればして欲しい。」
「え、あ、え、」
「、、、できますか?」
恥ずかしいのは僕も同じなのだ。これくらい許してほしい。それにさっきガクくんも言っただろう。
――僕だって君のものだ。
そう告げるとガクくんがぎゅっと僕を抱き寄せた。苦しいくらいに強く。
すると鼻声でうん。というものだから笑い声が漏れてしまう。
ガクくん、大好きだよ。これからよろしくね
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