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裏五条
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夜鐘
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恐怖の極めてデカい蛇を無事に撃退したチーム莉子。
六駆のメンタルも回復したら、いざ攻略再開である。
「いやもう、本当に。あんな恐ろしい生き物が平然とダンジョンにいるとか、外国って怖いところだなぁ!!」
「異世界をいくつも渡り歩いて来た人のセリフとは思えないにゃー」
現在、第10層を歩いているチーム莉子。
地形を利用した侵入者用のトラップがいくつか目に付くようになってきたが、それは六駆が無言で捌いている。
天井から蛇が落ちて来るとかでなければ、六駆の足は止められない。
よしんば天井から蛇が落ちて来ても、彼は驚いて勢いそのままに『大竜砲』あたりを放つだろう。
結果としてより大きな被害を受けるのはアトミルカ側なのであまりお勧めはできない。
続いて第11層に降りて来たところで、先頭を行く転ばぬ先のおじさんが立ち止まった。
「六駆くん、どうしたの?」
「やっとそれらしくなってきたと言うか、アレだね。僕があと4歩歩くと、結界が作動するよ。煌気に反応して対象を囲い込むタイプのヤツ」
シャンパンパイソンの件もそうだったが、アトミルカは重要な拠点を先に控えているダンジョンに何もしていないはずがないのだ。
六駆の『観察眼』常時発動で無事にこの結界を発見。
ちなみに「そろそろ目が疲れて来たよ」とは、第一発見者のセリフである。
「どうする? やっちゃう?」
「ダメだよぉ! ちゃんと南雲さんに一言告げてからだよ! やっちゃうのは!!」
「ツッコミをするだけ野暮だと言う事はわたくしも理解しておりますわ。あらクララさん、スカートのお尻が汚れていましてよ。じっとしてくださいまし」
「にゃははー。小鳩さんは女子力高いから助かっちゃいますにゃー」
「みみっ。芽衣は生活力の問題だと思ったけど、価値のある沈黙を貫くです。みっ」
とりあえず、やっちゃって良いのかを確認する事と相成った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『ダメだよ!? 危ない! ホントに危なかった!! いや、でもね、逆神くんも成長してるよ! ちゃんと私に相談してくれるようになったんだもの! 私、泣いちゃう!!』
「南雲さーん。六駆くんは一言だけ報告したら、やっちゃう気満々でしたぞなー」
南雲は答える。
「喩えそうだとしても、ホウレンソウが成立した事実が嬉しいんだよ」と。
『それで、結界の種類については? 逆神くんの事だから、もうとっくにご存じなんでしょう?』
「微細な煌気にも反応する、割と高性能スキルですよ、これ。反応されたら煌気を遮断されて拘束されるっぽいです。僕の『完全監獄』に近いですかね」
結構な勢いで面倒なヤツだった。
結界トラップを破壊してもアトミルカに気付かれるし、当然のことながら引っ掛かればそこで来客の存在を告げる事になる。
南雲は周りの賢者たちの知恵を借りる事にする。
「難しい問題ですね。逆神くんが進むのを一旦中止したと言うだけで、相手のトラップの周到さはよく分かりました」
「小生が察するに、その結界トラップ専門のスキル使いが監視をしていると思いますげふっ」
「アトミルカの拠点に何回か潜入したオレらからすると、和泉の旦那の言う通りだと思うんでよろしくぅ」
「一度、屋払さんが引っ掛かって捕虜にされかけた事があります」
実に現状の把握が捗った。
潜伏機動部隊の2人が語る経験談は貴重であり、和泉の推察も恐らく的外れではないと南雲は考える。
「ぷっ、ふふふ。いやー、それはまずいですよね。ふふふふっ」
「雲谷くん? 何かサイコな事でも思い付いたのかな?」
「いえね? 結界スキルって発動前はビックリ箱みたいな感じで、1か所に圧縮される事が多いんですよ。ふふ、ふふふ、それを逆神くんに……くくっ。空間転移させちゃえばいいんじゃないかなとか思ってみちゃったりして! あははっ!」
「君は完全に逆神流寄りの考え方をするなぁ、雲谷くん。でも、名案かもしれん!」
「スキル使いと遠隔スキルって連動してる事がほとんどですから、ふふ、どうなるんですかね? 元の人間サイドは。バラバラになるのかな? ふふっ」
急襲部隊のサイコパス代表が建設的な意見を口にする。
何もせずに手をこまねいている事こそが愚策。
現状、速やかにダンジョンを攻略すると言う大きな作戦の最中であり、ならば少しのリスクを承知で当たってみるのも上策だと総指揮官殿は判断した。
サーベイランスの向こうでストレッチしている六駆を南雲は呼び出した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「なんですか、それ! すっごく面白そう!!」
『いつもは死んだ魚みたいな目をしているのに、どうして君はこういう時だけ少年のように瞳を輝かせるのかね』
結論から言えば、雲谷プレゼンツ南雲承認の反則回避作戦は六駆から大いに歓迎されることとなった。
スキルをスキルで転移させると言う試みはさすがの六駆も未経験であり、可能性を見つけたら試したくなるのが力を持て余している者の道理である。
「それじゃ、やってみましょう!! みんな、下がっててね! この間覚えたばかりのスキルが使えるぞー!」
「もぉぉ。六駆くんってば、子供みたいなんだからー」
「あー。これはアレだにゃー。無邪気な六駆くん好きだにゃーってヤツだぞなー」
「ですわね。基礎教養ですわ」
「みみっ。何を今さらです」
六駆は両手を広げて煌気力場を構築すると、手で発現されている結界スキルをこねるようにして手を合わせた。
「ふぅぅぅぅんっ! 『急な単身赴任』!! そぉぉれぃ!!」
目には見えないものを「消しました」と言うのは、魔法使いか詐欺師である。
裸の王様も騙された手口であれば警戒レベルは高めの文言だが、逆神六駆の発言に異を唱える者はいない。
「おお! 上手くいきましたよ! 南雲さん、実験は成功です!!」
『そうか。それは何より。さっきのはアレだね? 福田くんのスキルだね?』
「ええ、模擬戦闘訓練でやられちゃいましたからね! しっかりと逆神流にアレンジして習得させてもらいました!」
『一度喰らっただけで習得できる君の実力が今更ながらに恐ろしい。それで、結界トラップはどこに転移させられたのかね?』
「このスキルは僕の煌気がある場所に対象を移す性質なので、『基点』を利用しました!」
『お、おい! 逆神くぅん!? まさか、協会本部に飛ばしたのか!?』
六駆は笑顔で首を横に振る。
続けて言った。
「僕の実家に! 今頃は、親父がどうにかしていると思います!」
『あ、そうなの? じゃあ良かったよ。いやー、胆が冷えた!』
その頃の逆神家では突如、家全体に結界スキルが襲い掛かっていた。
家で寝ていた大吾が必死の形相でビニール傘を片手に逆神流剣術『次元大切断』を使いスキルを切り裂くのだが、なんだか絵面が汚らしいのでそのシーンは割愛する。
◆◇◆◇◆◇◆◇
こちらはキュロドスにある、異界の門付近の駐屯基地。
「ひゅんすっ」
「お、おい、どうした!? お前、一瞬透明になったぞ!?」
「いや、自分でも何が起きたのか分からねぇ! でも、なんかすごく気持ちが良かった! なんだろう、今の!!」
「疲れてるんだよ、お前。今日は早めに上がれ。タイムカード押しといてやるから」
煌気を放出して維持している遠隔発現スキルを無理やり転移させると、使い手に快楽が生まれるらしい。
これほどまでにどうでも良い情報もない。
とりあえずアトミルカの構成員が1名ほど命を拾ったのだが、その事実を知っている者は極めて少ない。
ただの構成員が高度なスキルを使う辺りに、アトミルカの人材の豊富さを感じる南雲たちであった。
コメント
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わあ、第302話、読み終わりました!「やっちゃいますか?」からの「ちゃんと報告してから!」って流れ、六駆くんの成長(?)が微笑ましかったです。そしてまさかの実家に結界を飛ばす発想、逆神流すぎて笑っちゃいました。雲谷さんのサイコな笑い声が頭から離れない……。隊長もノリノリで承認するところがチームのゆるさと強さを感じます。章を超えても変わらないこのテンポ、大好きです!