四月十六日。午前十一時。
ナオト(鎖の力の一つである『第二形態』になった副作用でショタ化してしまった主人公)たちは、『ケンカ戦国チャンピオンシップ』の会場付近に到着した。
ナオトはブラスト以外の十人のモンスターチルドレンとその他の存在たちに、アパートで待機するように言うと会場へと急いだ。(ナオトの住むアパートは巨大な亀型モンスターのミサキの外装である甲羅の中心と合体しているため、移動は楽)
ミノリたちは、ミノリ(吸血鬼)がどこからともなく取り出した『|全知全能の水晶《パーフェクトクリスタル》』でナオトたちを見守ることにした。
「ほえー、でっかいスタジアムだなー。というか、こういう大会って、この世界にもあるんだな。なあ、ブラスト、お前はどう思う?」
「ん? あ、ああ、そうだな。まあ、どの世界でも強さを競う大会はあるだろう。さて、さっさとエントリーを済ませてしまおう」
「あっ! ちょっと待ってくれよー! 今の俺の歩幅はお前の半分もないんだからー!」
二人が大会にエントリーするために、受付に行くと。
「えー! なんで、俺は参加できないんだよー!」
「申し訳ありませんが、未成年は参加できない決まりですので……」
「俺はこう見えても大人だー!」
受付の係員さんを困らせているナオトの姿はどう見ても|駄々《だだ》をこねている子どもであった。
困り果てたブラストが周りを見渡すと、個性的な五人組が大会出場者としてスタジアムの中に入っていったのに気づいた。
「すみません、今スタジアムの中に入っていった五人組はどう見ても子どもなのに、なぜ大会出場者としてエントリーしているのですか?」
ブラストが受付の係員さんにそう訊《き》くと。
「あー、それはですね。彼らは『大人百人を倒すことができたら俺たちをエントリーさせてくれよ!』と言ってきたので、実際にやらせてみたんですよ。そしたら」
「見事、それを成し遂げた……ということですね?」
「はい、その通りです。正直、できないと思っていましたけど、まさか本当に成し遂げるなんて、人は見た目で判断してはいけませんねー」
「だったら、俺とこいつで大人五百人を倒してやるよ!」
ナオト(ショタ状態)は係員さんに向かって、ニシッ! と笑った。
「あなたに、それができるとは到底《とうてい》思いませんが。分かりました、では、いってらっしゃい」
「えっ? それはいったい、どういう……」
ナオトが最後まで言い終わる前に係員さんは一回手を叩《たた》いた。
すると、ナオトとブラストは脳みそまで筋肉でできていそうな屈強《くっきょう》な男に担《かつ》がれ、スタジアムの地下まで猛スピードで運び込まれた。
「ん? もしかして、ここでやるのか?」
「そのようだな。というか、本当にやるのか……」
彼らが地下闘技場の中心でそんな話をしていると、両ゲートから、いかにも強そうな大人が本当に五百人出てきた。
それをアパートの水晶から見ていたミノリ(吸血鬼)は助けに行こうとしたが、他のみんなに止められてしまった。
「いやー、まさか本当に連れてくるとはなー」
「お前……先のことは考えない性格《たち》なんだな」
「それは、お前も同じだろ? ブラスト」
「まあ、そうかもしれないな」
二人は、お互いの背中を預けるように立った。
これから総勢五百人の大人を相手にするというのに、二人はなぜかニコニコ笑っていた。
「かかれー!」
『うおおおおおおおおおおおあおお!!』
迫り来る大人たち。だが、幸いにも武器は持っていない。勝ち目は十分にある!
「ブラスト、そっちの敵は任せたぞ!」
「ああ、任せておけ。というか、お前は鎖《くさり》を出さずに戦うつもりなのか?」
「ああ、と言いたいところだが、さすがにそれは厳しいから、一本だけ使うことにするよ」
「そうか……。ならば、俺は右腕だけで戦ってやろう」
「なんだ? 俺と張り合うつもりか? はははは、お前、面白いな。でも、やられるんじゃねえぞ!」
「ああ、そのつもりだ!」
二人は、ほぼ同時に走り出した。
『うおおおおおおおおおおおあおお!!』
戦力差がありすぎるのは、一目瞭然。
しかし、それは彼らが普通の人間であったならばの話である。
『誕生石』の力をその身に宿して戦っている彼らに勝つには、それ以上の力を持つ者でなければ不可能なのだから。
「な、なんてやつらだ!」
「つ、強すぎる!」
「というか、あいつ本当に子どもなのか!」
「か、勝てるわけがねえ!」
あっという間に彼らは総勢五百人を倒してしまった。しかも、無傷。
彼らが全員を倒すのにかかった時間は五分。
しかし、彼らにとっては遅いほうだった。
「そんじゃ、俺たちはこの辺で失礼するか」
「うむ、肩慣らしにはなったな」
「じゃあなー」
そう言いながら、地下闘技場をあとにした彼らは、後《のち》にこう呼ばれることとなる。
人の皮を被った『悪魔』と……。
*
「というわけで、エントリーよろしくな!」
「は、はい、分かりました。まさか化け物が七人も出場するとは思いませんでしたが、仕方ありません。あなたもエントリーしておきます」
「よっしゃー! やったぜー! ブイ! ブイ!」
「はしゃぎすぎだぞ、ナオト」
「あははははは! やったぜー!」
「はははは、そうしていれば、お前はどこからどう見ても子どもなのだがな」
「ん? 何の話だ? ほら、行くぞ! ブラスト! 早くしないと開会式が始まっちまうー!」
「あっ! こら待て! ナオト! そんなに慌《あわ》てなくても大丈夫だぞー!」
二人がそんなことを言いながら、スタジアムに入っていくのを水晶から見ていたミノリたちは、はしゃいでいるナオトの姿を直《じか》に見ることができなかった悔《くや》しさで発狂していた。
そんな時、名取が戻ってきてくれたおかげでなんとかなった。
※名取《なとり》 一樹《いつき》。
ナオトの高校時代の同級生。
名取式剣術の使い手で名刀【銀狼《ぎんろう》】の所持者。
両目を前髪で隠しているのは人見知りだから。
いつもは途切れ途切れに話すが、武器のことになるとよく話す。
先ほどまで『藍色の湖』に行っていたが、用が済んだため戻ってきた。
名取は状況を理解した上で、代表として『ミノリ』(吸血鬼)を連れていくことにした。
そうでもしないと、みんながまた発狂しそうだったからだ。(水晶はみんなが見られるように置いていくことにした)
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