帰宅後、親に事情を話して客室のベッドに寝かせた。
彼の目が覚めたのは翌朝だった。
魔法学校へ向かう前に声をかけてみようとドアを開ければ、すでに目が覚めていたらしく。
びっくりした顔でこちらを見ている。
「君は…。ここ、君んち?」
「うん。俺のこと知ってるの?」
「そりゃ魔法学校で目立ってるからね。僕も同じ学校だよ、違うクラスだけど」
ふいっと視線を落としてしまう。
何となく険のある言い方のような。
心当たりないし気のせいかな?
「でも…昨日は多分助けてくれたんだよね。迷惑かけてすみません」
彼はとても素直なのかもしれない。
こんなにも感謝が感じられない謝罪ってあるんだな。
「死ぬつもりで力を放出してたの?」
動きの止まる指先。
息を小さく吸って、もう一度見つめられる。
「さぁ」
うっすらと微笑み首を傾げた。
捻くれた返事なのに目を惹きつけられる表情。
しかも強大な炎の力は学園で類を見ない天才だ。
なぜ今まで目立たなかったのだろう。
そして決めた。
「俺と一緒にパーティーを組んでよ」
「……」
目を見開いた顔はなんだか幼いな。
でも、すぐにスンッしたつれない顔に戻ってしまった。
「謹んでお断りさせて頂きます」
今度は俺が驚いた。
誘われて断ったことはあれど、断られたことなんて無いのだから。
どうやら嫌われているらしいと、この時気づいた。
だがこいつは知らない。
俺は、俺が認めた相手を絶対に諦めない。
必ず好かれてみせるという決意に変わるほど、根っからのポジティブなのだ。
ってことを相手へ伝えたところ。
「は?だから陽キャって本当やだ…」
ちょっと怯えた顔になりながら、眉を寄せて心底嫌そうに小さく呟いている。
同い年らしいけど、何だか愛嬌があって可愛らしいやつ。
タメ口ですら嬉しい。 丁寧語より少し距離が近づいてる気がして。
「あ、これから登校するけど行く?」
「行かない!はぁ…それより無断外泊で帰ったら親に怒られそう…」
もしかしたら普段、学園に来てないのかな。
だからこんなに強いのに知られてないのか。
「明日から迎えに行くから。あと、一応お世話した相手には名前くらい教えてよ」
「はぁぁ!?な、名前はモトキ!ありがとう。でもそれとこれとは別だからねっ」
俺のことは嫌いでも、律儀な性格なのか名前とお礼は言ってくれる。
理解出来ずに戸惑っているらしいけど、気にせず迎えに行くつもり。
君となら最強で楽しいパーティーを作れる気がするんだ。
コメント
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ウウゥ。好き。