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「小柳お兄ちゃん、結婚してください!!」
目の前には片膝を立てた姿勢で、綺麗に手を差し出しながら俺にプロポーズをする子供がいる。一体どこでそんなことを覚えたんだ。今時の小学生分からん…
『たしか、えー、ほし…?』
「ほしるべです!!るべでもるべちでもなんでも、好きなように呼んでください♪」
星導は右手で左胸をトンと年相応の力で叩きながら言う。
俺は何故こんなにもこいつに懐かれているのか…
ただこいつが道で転んで泣いてたところを偶然見かけたから助けたってだけなのに。そのことがあってからこの子供は俺を見かける度に目を輝かせ、直ぐに俺の所まで寄ってくる。正直子供の相手をするのが苦手な俺にとっては少しばかり骨が折れる状況だ。
『はいはい。ほしるべちゃんはまだ子供なんだから、さっさと宿題でもしな』
「えぇ〜?こんなに小柳お兄ちゃんのことが好きで好きで堪らないのに。」
「…初恋なんですよ?」
『!?』
だからどこでそんな言葉覚えたんだよ、、
「そうだ、今日の図工の時間にお兄ちゃん描いたんですよ!!これです!」
すると中身がスカスカのランドセルから一枚の白い紙を出した。その紙には多分俺であろう青を基調とした人物がクレヨンで描かれていた。
「どーぞ!」
『おぉ、ありがと…』
鼻の下を人差し指ですりすりと満足した様子で渡してきた。流石にこれは断りづらい。
いつも仔犬のように、見えない尻尾が左右に振って笑顔で寄ってくるからからかいに来ているわけではなさそうだが、俺は大人で相手は小学生。あまりにも年齢の差がありすぎる。
「お兄ちゃん!明日も話しかけますね!」
こんなにほぼ毎日アプローチしてきてよく折れないな…
『お前は俺なんかじゃなくて同じクラスの奴とかを好きになった方が良いぞ。』
「えー?なんでですか?」
『まだ星導は小さいからな。』
「……」
『てかお兄ちゃんって呼び方ムズムズすっからやめろ?』
パチン
俺は口を尖らせて少し不満そうな顔をしている小さな小学生の目線を合わせるために屈み、笑いながら軽くデコピンをした。
「!!」
すると星導はおでこを小さな両手で抑えながら顔を赤らめたと思ったら、閃いた!といった表情へと変わると俺から離れてその場を去っていった。
まじでなんなんだ…??
それからあの小学生が俺のところに来ることは無くなった。偶然会えなくなったっていうよりも避けられてるような。俺なんかしたか…?
てかどれくらい会ってないんだろ。大人になると時間軸ズレる。
今まで毎日のように話しかけてきた奴が急に居なくなるとこんなにも外って静かなんだな。
俺は今日もいつも通りいつもの道を歩く。桜でピンクに染まった地面と暖かい風に吹かれて。
『っ!!』
急に俺の左腕の裾を引っ張られた感じがした。後ろを振り向くと、高校のブレザーを着た男子が1人立っていた。スラっとした体型で俺よりも身長が高く、髪を後ろに束ねている端正な顔立ちをした高校生…
『えっと…どうかしましたか、?』
彼は俯いたまま俺の腕の裾を離さない。俺は彼の顔を恐る恐る覗き込もうと近づく。
「バァッ!!」
すると彼は顔を上げ、大きな声で俺を驚かす。
突然の声に、心臓が跳ねた。思わず後ろへよろけ、そのまま倒れそうになる。その瞬間、彼にぐっと腕を掴まれ、もう片方の手を腰に回されたことで俺はしりもちをつくことなく支えられた。
「もー。小柳くんは本当にビビりですね〜」
『…へ?』
急な出来事に頭が回らない。
なんでこの高校生が俺の名前を知ってるんだ…?知り合いだったか?
彼は体勢を直し、自身の服だけでなく俺の服も綺麗に整えてくれた。一言お礼を言い、彼に質問をする。
『あの…俺たち知り合いでしたっけ?』
「えもしかして忘れた!?るべち、かなし〜」
る、るべち…?何を言っているんだこの人は。
すると彼は再び俺の腕を引っ張り、体を近づけてきた。
「毎日あんなにアピールしてたのに…」
「ね?小柳お兄ちゃん?♡」
その呼び方で俺は昔のことを思い出した。
柔らかい声でどこか癒されるような笑顔。
『星導なのか…?』
「そうですよ?俺のこと思い出してくれました?」
ん…俺?あの星導…であってるよな?声はあの時とは別人のように低いが確かに喋り方もふわふわとした雰囲気も変わらない。でも着ている制服と大きめな手を見て俺は確信した。
『お前男だったのか…?』
「えっ逆に今まで俺のこと女の子だと思って接してたんですか!?…まー確かにあの頃の俺は可愛すぎたからな〜。」
「あ、今でも俺はキュートですけどね♡」
星導はウインクをしながらポーズをとる。正直見てられん。
『んなことより、最後星導が走って去ってったのずっと謎だったんだけど』
「そんなことより!?…あの時逃げた理由は俺でも分からないです。子供だったので」
「でも小柳くんに『まだ星導は小”さいか”らなぁ”〜』って言われてじゃあお兄ちゃんより俺の体が大きくなれば良いのか!って必死だったのは覚えてます笑」
『考えが小学生だな笑』
「ふっ、笑」
「…でももう俺は立派な男ですよ?」
星導は俺の腰を引き寄せ、頬に軽く手を添え、優しい表情で俺を見る。距離が近くて彼の瞳に頬を赤らめた自分の姿が映る。さっきの無邪気な笑顔とは違う、穏やかな笑みだ。どさくさに紛れて誇張した、俺?のモノマネで弄る星導に言いたいことは沢山あるが、今はやめておこう。
「俺本当に小柳くんのこと、大好きですよ。」
「…小柳くんに手出さないように高校卒業するまで待ったんですから。」
『…はっ!?』
彼の急な発言に俺はびっくりして大声を出した。丁度周りに人がいなくて良かった。男性2人が密着している姿を見たい奴なんていないだろう。
パチン
「イテっ」
俺は星導にデコピンをした。
急に抱き寄せられて告白されたのが嫌だったんじゃない、ただの照れ隠しみたいなもんだ。
「小柳くんひどーい!そんなにツンツンしてるとモテませんよ!」
『あぁ勝手に言ってろ言ってろ』
星導は口を尖らせる。
そういうところ、あの頃とほんと変わってないな
「俺、これからまた毎日小柳くんに想い伝えるから。俺のことしか考えられなくなるまで何としてでも追いかける。俺の超きちょ〜な初恋を奪ったからには、そう簡単には逃しませんよ?」
星導は俺の鼻を人差し指で軽くつんと触れた。
『……おー、』
もうお前のことしか考えてねーよ…
コメント
1件
うめゆさん、第11話読みました!小学生から高校生に成長した星導くんとの再会シーン、めちゃくちゃ胸熱でした。「お前男だったのか」からの流れ、好きです。小柳くんが照れ隠しにデコピンするところ、変わらない関係性にほっこり。星導くんの「高校卒業するまで待った」にもグッときました。気持ちが通じた後の甘い雰囲気がたまらなかったです!
#アニコブ
巡
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