テラーノベル
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Vol.01 リヴァイ×ハンジ×モブリット
【きっと貴方には敵わない】
共に過ごしてきた長い時間で、培われてきた信頼。
それはきっと、自分には超えられないものだと痛感する。
兵長が分隊長に向ける視線。
それは、私に向けられるそれとはまるで違う。
悔しいのに、どこか納得してしまっている自分がいる。
兵長には、分隊長が相応しい。
きっと二人なら上手くやっていけるだろう。
絶対的な信頼関係。互いのことをよく知っている者同士。
そこに私がつけ入る隙は無い。
だから、私は分隊長を守らなければならないと思った。
兵長が幸せになれるのなら、私は恋敵でも守れる。
たとえ、それで自分が死ぬことになろうとも。
Vol.2 アーベル×モブリット
【レンズ越しに見る君】
「どうしたアーベル、そんなにじろじろと…書類は書き終わったのか?」
刺さるような視線が不快だったのか、
モブリットが唐突に振り返り抗議をする。
当然、書類など書き終わっていないオレは背筋が冷たくなる。
こいつは怒ると怖い。
お前を見てたら書類を書くの忘れたぜ!…なんてふざけたことを抜かせば、
きっと顔面に蹴りを入れられるに違いない。
「あっ、あぁ…も、もう少しで書き終わるぜ…ます…」
「…全く書けていないんだな」
「ごめんなさい…」
予想に反し、モブリットは怒らなかった。
大きなため息を吐きはしたが…
「時間は充分にあっただろう」
「お前を見てたら書くの忘れたぜ!…って言ったら」
「…」
「ごめんごめん!怒る!?怒るよな!?」
「…いや」
オレはまたしても予想と違う反応に驚く。
こいつはこんなに甘い奴だっただろうか。
そう、訓練兵時代のことを思い出す。
奴は、暇さえ有ればオレを馬鹿だと罵った…
巨人によく噛んでもらうように頼むんだなだとか
ゴーグルが無いお前はただの役立たずだとか
足りない脳みそを使うと頭が痛くなるから気をつけろだとか…
「お前、なんか変わった…?」
オレは、思ったことを率直にモブリットに聞く。
変わったって、どういうことだ?と、奴は質問に質問で返す。
「なんか、丸くなったというか…毒を吐かなくなったというか…」
「いや…まあ、誰だって変わるだろう。あんな手がかかる上官がいてはな」
そう言いながら、モブリットは柔らかい微笑を浮かべた。
こいつの顔が綺麗だということは、今も昔も変わらない。
Vol.03 ライナー×ベルトルト×モブリット
【戦士は嘆く】
モブリットさんは、優秀な戦士だ。
五年前から単独でパラディ島への潜入を開始しており、
位の高い兵士からの信頼も厚い。
誰も五年前からいる古参兵である彼を疑わないし、
男性である彼を女型の巨人だと疑う者もいない。
マーレ側も、それを狙って彼に女型を継承させたのだろうが。
被験体の巨人の殺害も完璧にこなした。
リヴァイ班を壊滅させた。
内地に甚大な被害を及ぼし、自身にはなんの疑いもかかっていない。
まさに、完全無欠。
そんな彼にも、悩みがある。
それを打ち明けられたのは、深夜に兵舎裏の森で情報共有している時だった。
ひと通り話し終わり、雑談がてら、僕達は最近の悩みについて話すことになった。
「オレは最近同期のやつに、馬鹿力を略して馬鹿と呼ばれるようになってしまって…」
「ああ…それは…元気出せよ」
「僕は最近寝相がひどくなってきてしまって…朝起きたら違う場所にいることがあって…」
「まずは環境の改善からすべきだが…兵舎ではそうもいかないか…」
半分モブリットさんのお悩み解決コーナーのようになっていたが、
ライナーがモブリットさんの悩みも聞きたいと言い出した。
「私の?…私は…」
「私は、怖いな。万一にも正体がバレてしまった時、きっと分隊長は私に失望する」
戦士として完璧だった彼が、戦士であることを嘆いているように見えた。
きっと、ただの兵士として分隊長と出会えていれば。
そう思っているに違いない。
「でも、島の悪魔に騙されてはいけませんよ。オレたちは戦士なんですから」
「…この島に、本当に悪魔がいると思っているのか?」
モブリットさんは、そうライナーに聞き返す。
ライナーは何も答えられなかった。
僕も、何も言うことが出来ずにその光景を見ていた。
島にいるのはただの人間だと、そんな簡単な事実を僕たちは飲み込めずにいた。
Vol.04 シス×モブリット
【役立たずではない証明を】
「お前、ほんとすごいやつだよ」
そう、シスがため息を吐きながら話す。
私は言われている意味がよく分からなかった。
別に自分がすごい人間だなんて、思ったことがなかったし
言われてもいまいちピンとこないからだ。
「すごいよ。オレだってリーネだって、アーベルだって
お前と同期なのに役職無いし… 」
「なんだ、役職程度。私はただちょっとだけハンジさんのお守りが上手かっただけだよ」
「それがすごいんだよ。あんな大変な仕事をそつなくこなしてさ」
そう言ってシスは机に突っ伏した。
私には分からない。そう言うと、彼はガバっと起き上がる。
「なんだ、まだ分からないのか。役立たずではない、って証明。
それが出来るやつなんて、いそうでいないもんなんだよ
オレはまだそれが出来てないから、万年役職無し」
そう言い終わって、彼はまた倒れるように机に突っ伏す。
どうやら飲みすぎて酔い潰れたようだ。
役立たずではない証明。
シスが言った言葉の本当の意味は、私にはまだ分からない。
…分からないまま、シスは女型の巨人に握り潰されて死んでしまった。
アルミンが言っていた。
「彼は勇敢でした」…と。
最後に彼は出来たのだろうか。
役立たずではない証明を。
Vol.05 ミカサ×モブリット
【良い人】
私は“良い人”という評判で通っているらしい。
よく頼み事をされたり、悩みを相談されるのはその評判のおかげだろう。
だが、彼女に頼み事をされるとは思ってもいなかった。
「…どうしたんだ?」
「あの、今日の巨人化実験で、エレンが鼻血を出したと、エレンから聞いて、
そしてモブリット副長が介抱してくれたと、それで…」
「分かった分かった、一度落ち着いて話そうか…」
私がそう言うと、彼女は一瞬申し訳なさそうな顔をし、 小さく頷いた。
ミカサが口下手で語彙力が無いというのは、風の噂で聞いていた。
だがまさかここまでとは…
彼女とは、あまり話したことがない。
そもそも彼女が無口なのに加え、大体エレンと何かを話しているため
話を振らなければならない瞬間というものが
皆無だからだ。
「あの…モブリットさんに、頼みたいことが」
「何だい?」
「エレンは、無理をしがち。なので、また鼻血を出したり、
倒れたりしてしまうかもしれない。でも、私はエレンと一緒にいれない時もある。ので。
そういう時は…エレンのことを、頼みたい」
…驚いた。
つい最近、リヴァイ兵長に似たような流れで
ハンジ分隊長のことを頼みたいと言われたばかりだったからだ。
なんというか、兵長とミカサは似ている。
私はそう思いながら、彼女の頼みを快諾する。
「分かった。君がいない時は、私が代わりにエレンを守るよ…
しかし、私では力不足かもしれないけどね」
「そんな事、ないです…!ありがとうございます…」
彼女はマフラーで口元を隠しながら、そう答えた。
だが、彼女の最初で最後の頼み事を、結局果たすことは出来なかった。
Vol.6 エレン×モブリット
【綺麗な人】
「オレ、最初モブリットさんを見た時、すごい綺麗な人がいるなって思って。
今も少し慣れないです…間近に綺麗な人がいるの」
「エレン…それは誇張しすぎじゃないのか?」
「いえ!単にオレの主観とか、そういうのも入ってるとは思いますけど…」
彼が、少し謙遜しながらそう言う。
綺麗だなんて、あまり言われたことが無い言葉だった。
「絶対に曲げられない信念とか、そういうものを持っている人は綺麗です」
そう彼は言い切った。
彼には分かるのか。私は、一応は常識人ということで通っている。
だが、私も調査兵団の兵士だ。
曲げられない信念も、掲げる目標もある。
ただ、それを周囲に発信することはしなかった。
仕事に私情を挟むのは野暮だと思っていたからだ。
そういえば、彼にも曲げられない信念があったな、と思い出す。
巨人を駆逐する。単純明快だが、我々調査兵団の目標ともいえるもの。
「…なら、エレンも“綺麗な人”だな」
何気なく、私はそう言った。
エレンはそれを聞いたっきり全く話さなくなった。
視界の端で、顔を赤くしているエレンの顔が見えた…気がする。
Vol.7 リヴァイ×モブリット
【彼方への逃避行】
仲間が死んだ時。
昔馴染みが死んだ時。
…ハンジ分隊長が、私を庇って死んだ時。
私の人生は、別れの連続。
そして、変化の連続であった。
きっと、昔の私に「お前は調査兵団の団長になる」だなんて言っても
全く信じてはもらえないだろう。
だが、人間何があるのか分からないものだ。
死にかけの貴方 を抱えて泳いだ時。
仲間を、撃ち殺した時。
そして貴方に、独り言のようなある提案をした時。
「いっそこのまま、二人で暮らしましょうか」
「…お前らしくもねぇ」
「…!?リヴァイさん、起きていたんですか…」
そう言いながら、私は左目の眼帯に手を当てる。
もう、こちらの目では何も見えない。
左目で最後に見たのは、爆風に消える上官の顔。
「…ハンジ分隊長なら、なんて言うと思いますか」
「あいつと自分を比べるもんじゃねえよ。…案外、同じことを言うかもな」
リヴァイさんは、そう言ってすぐにまた寝てしまった。
竹を割ったように終わる会話に困惑しながらも、彼が言った言葉を
頭の中で反芻させる。
『案外、同じことを言うかもな』
だが、私には弱音を吐いている分隊長なんて想像できない。
だからこそ、私も弱音を吐いているわけにはいかない。
実を言うのなら、貴方と暮らしたいのは本心でしたが。
Vol.8 アーベル×モブリット
【深い夢の話】
荷馬車護衛に失敗した上、ニファもケイジも死なせてしまった。
そう、アーベルは正気のない声で呟いた。
私は言いたかった。だが、言葉を飲み込む。
“お前が生きているならそれでいい”なんて、あまりに無責任な言葉だと思ったからだ。
もちろん、ニファとケイジが死んでしまったことに何も思わないわけではない。
だがそれ以上に、私はアーベルが生きていてよかったと思ったのだ。
かける言葉が見当たらず、私は口籠る。
そうしていると、アーベルがこちらを見る。
鋭い、全てを見透かしたような視線で。
「オレが生きているだけでもよかった、とか。言いたそうな顔じゃないか」
「…!」
「オレが死んだら、お前はどうする?」
徐にそう問いかけられ、何も答えられなかった。
多分、私は何もしない。出来ない。
「きっと、悲しむこともできない」
「…それでいい」
アーベルは、そう言いながら自嘲気味に笑う。
「お前は、オレなんかのことは忘れて、自分のやるべきことをやればいい」
私は、また何も言えない。
こいつのことを忘れたくはない。
だが、仕事に私情を挟んではいけない。忘れるのが一番なのだ。
そう思いながらも、私はこう言う。
「けど、お前はまだ生きてるんだから。
お前が死んだ時のことは、お前が死んでから考える」
「バーカ、オレはさっきのでもう死んだよ。」
「え?」
そこで、目が覚める。
じっとりとした嫌な汗が肌にまとわりつく。
嫌な夢だった。
だが、いい夢だった。
もう夢の中でしか、あいつに会うことは叶わないから。
お前の心臓を無駄にしないためにも、私はお前のことを忘れよう。
Vol.9 ピュレ×モブリット
【彼らの名誉を】
ニファとケイジとアーベルは、市民に襲いかかり
憲兵団によって粛正されたということになっている。
もちろん、あいつらはそんなことをしない。
王政の、下らぬ隠蔽工作。
クーデターが成功した後も、彼らへの偏見は止まなかった。
あいつらは、そんなことをする人間ではないのに。
私が一番それを分かっているのに、何もできない悔しさ。
そんな時、彼が私に言ってくれた。
「モブリットさん、任せてください。私が彼らの名誉を取り戻してみせます」
彼が、ピュレがそう言ってくれて、私は肩の荷が降りたような気がした。
きっと、彼ならやってくれる。
そう思ったからだ。
ピュレはあいつに似ている気がする。
馬鹿だけど頭がいい、不可能を可能に出来る力を持っていたあいつに。
「ああ…頼む」
私がそう答えると、彼は優しく微笑む。
情報が混在する壁内で、唯一正解を導き出した彼になら。
あいつらのことを任せることが出来る。
Vol.10 ミケ×モブリット
【いい匂い】
ミケ分隊長は、よく私の匂いを嗅ぐ。
彼が人の匂いを嗅いでは鼻で笑うことは有名だが、
実は私はミケ分隊長に鼻で笑われたことがない。
それどころか、彼はよく私の匂いを嗅ぎたがる。
嗅ぐ時間も長い。長い時は、30分ずっと嗅がれたこともあるくらいだ。
「…あの、ミケ分隊長」
「……なんだ」
「私って、どんな匂いがするんですか?」
ある日、私は素朴な疑問をミケ分隊長に投げかけた。
彼は少し考えた後、簡潔に答えた。
「いい匂いだ。安心する」
そう言った後、ミケ分隊長は私のうなじに顔を埋めてくる。
まるで大型犬みたいだな…と思いながら、私は抵抗することはしなかった。
邪魔なことは邪魔だが、あの寡黙なミケ分隊長が私にだけ甘えてくることが
とても嬉しかったのだ。
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