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fkrさんside
今日、いつもは事情があって来られないけど 珍しく仕事場に来た田村さんがお見舞いに行きたいと言って、付き添いとして僕を指名した。正直伊沢と行くと思ってたから何でと聞いてみたら、「まだ話してない事あるでしょ?(要約)」だった。多分、本当の狙いは別にあるんだろうなってのは分かったけど、確かに1人で行かせる訳にはいかないから着いて行った。
最初は警戒していたようだったけど、呼び方や雰囲気から本当に友人だと分かって話せるようになったみたい。
田「…何か悩んでるんじゃないの?」
須「え…。」
田「些細なことでも、話してほしいな。」
須「えっと……いや、でも…。」
…須貝さんが反論しない所をみるに、何か悩んでいることがあるのは確実っぽいな。
須「…いえ、何もないです。」
田「…そう?」
僕的にも、何か悩んでるんじゃないかとは思ってるけど、本人が言いたくないなら無理に聞くのも逆効果だし…どうしよう…取り敢えず、話題を変えてみようかな。
福「そういえば、リハビリ頑張っているらしいですね。担当医が言ってましたよ。」
須「え、あぁ…。そうですね、メンバーの方の力も借りて頑張ってます。早く記憶を取り戻したいので…。」
福「…?」
なんだろう、何か引っかかる…”記憶を取り戻したいので”って言ってる時、何か別の意思が働いているような、取り戻したいという思いだけではない何かがあるような…。
田「へぇ、じゃあ、退院も早くなる感じ?」
須「はい、予定より早くなりそうです。」
田「良かったね。退院後はどうするの?」
須「えっと…記憶を取り戻すために仕事場に行ってみたいなって…。」
田「いいんじゃない?でも、無理はしないでね。無理に記憶を取り戻そうとすると、身体に負荷が掛かるかもしれないから、ゆっくりね。」
須「!それは…!」
2人「!」
今のは…何に反応した…?
田「え、俺変な事言った?」
須「!…いえ。」
sgiさんside
“ゆっくり”…ゆっくり出来たらどれだけ良かったんだろう。だって…あのセリフ…
“時間には気をつけろよ”
これが何を意味するのかは分からないけど、この状況下でこのセリフは多分…
“長い時間は残されていない”
って事なんじゃないかと思う。この”時間”は何時かを指しているんじゃなくって、タイムリミットまでの時間を指していると思うから。
でも、タイムリミットって何…?って話になってくるけれど…。
須「……。」
田「…やっぱり何か考えてるでしょ。」
須「あっ…」
しまった…2人がいるのに考えすぎた…。
福「…僕達は、毎日来るメンバーが違えど、お見舞いに来ます。」
須「…?」
福「いつか、貴方が…本当に心を開けると思える日まで…これからも僕達は、ずっと来ます。」
須「!」
“記憶を取り戻すのを拒んでんのは俺やない、お前や”
もしかして…拒んでるのは…僕がまだ完全に心を開けないから?記憶を取り戻したら今の僕はどうなるのかという恐怖と、心から信じられる人がいない不安。
それらが入り混じってしまって、記憶を取り戻そうとする気持ちが、負けてしまうから…。
…もしかして…何処かにいて、2人が会話している夢は…心の奥底にいる、僕が見せていたの?
…そうだとしたら、色々納得がいく。きっと最初は、思い出させるつもりだったんだ。けど、態度や雰囲気で僕が本当に取り戻す気があるのかを疑い、次の夢は敢えてボヤけさせて僕が興味を持つか調べた。結果として気にはなったものの僕としては”怖い”という感情が混じっていた。その感情に気づかず、記憶を取り戻す為、奮闘しようとした結果、その感情に気づかないままの僕へ注意しに来た…って事でよさそう…?
でも、そうだとしたら…僕は一生このままなの?
本当に彼らを信頼しているなら、無意識でも記憶を取り戻す事に抵抗しない訳がない。取り戻す事によって、今の僕は消える。そう考えると少し不安ではあるけど、信頼出来るのなら、その不安も少しは消えて、取り戻す為の第一歩になったかもしれない。
なのに…今の僕は、完全に信じる事が出来ないんだ…毎日2人ずつ、お見舞いに来て色んな話を聞かせてくれたり、リハビリを少し手伝ってもらったり、助けられてばっかりで….でもみんなは「いつも助けられているから」「こういう時は助け合うんですよ!」って嫌な顔一つしなかった。そんな彼らが、以前の僕にとって「信頼できない人物だった」訳がない。
それでも…それでも完全に信頼することが出来なかった。
だから僕は今も、記憶を取り戻せない。
また2人の前で色々と考えていた事に今更気づき、視線を2人へ向けた。そこには、悲しそうな顔をした2人がいたんだ。
田「…そんな不安そうな顔しないでってば。無理に心を開かせようとはしないし、もしも俺たちといるのが嫌なら、離れてくれてもー
須「は、離れたくないです!」
…!」
須「ぼ、僕は確かに、まだ心を完全に開けた訳ではないみたいです…でも、貴方たちは今まで僕のお見舞いに欠かさずきてくれた!色んな話を聞かせてくれた!リハビリを手伝ってくれた!そんな貴方たちが信頼出来ないような人じゃないと分かってはいるんです!以前の僕があんな笑って過ごす事が出来たのは、貴方たちといるのが楽しかったからだって事も分かります!…だ、だから…その…」
ー貴方たちと、一緒に居たいー
…それが言えたら…良いのに…
もしも、断られたら…?
話の続きが、離れる事を前提としていたら…?
逆に彼らにとって僕は良くない人物だったら…?
そんな不安で、頭がいっぱいになった。
そんな時、温かい手が頭を撫でた。
田「…ごめん。離れてもいいよなんて、そっちの気持ちも考えず言っちゃって。」
須「え、あ…」
福「もう、ちゃんと信頼してくれていたんですね。」
信頼してる…?でも僕は…
そんな思考を読み取ったかのように、話を続けた。
福「信頼のカタチは人それぞれです。全面の信頼を寄せる事もあれば、得意分野においての信頼、あの人なら大丈夫という信頼、さまざまなカタチがあるんです。」
須「信頼のカタチ…」
田「そう、完全に信頼することが全てじゃない。相手はどんな人か、何が得意か、何が苦手か、色んなことを知った上で、自分が信頼出来ると思えるようなカタチを作れればいいんです。」
須「…。」
信頼のカタチ…か。
須「…少し、落ち着きました。ありがとうございます。」
福「ふふ、良かった。
あ、そうだ!退院したら、外へ行きましょう?」
須「…?外?」
今でも、外の空気が吸いたくなったり、リハビリで疲れた時に近くのベンチで一休みしたり、出てると思うんだけどな…?
田「外へ行くっていうのは何も”この病院から出る”ってだけじゃないよ。退院すれば、色んな景色が見えるんだ!」
須「色んな景色…」
田「今見る景色は病院から見たものでしょ?今の須貝が見たことないような景色は街を歩いたり、高い所から眺めたりとかさ!」
須「…僕が見たことない…景色…」
僕は、見てみたかった。
前の自分にとっては当たり前、今の自分にとっては見られない初めての景色を。
須「…見てみたい、です。」
2人「!」
福「任せて!色んな所連れて行って楽しませてみせますから!」
田「福良さん方向音痴だし、他の人も連れて行こっか!」
須「…はい!」
記憶が戻らないままなのかもしれない。元の生活には戻れないかもしれない。そんな風にずっとマイナスな感情ばっかり抱いていた。実際不便だし、みんなを不安にさせていることは分かってた。はやく取り戻したいという気持ち。けれど、記憶がない今の僕でも最高にワクワクしている。
前の自分には分からない。あることが当たり前じゃない日常を見られるんだ!
僕の中で、何か重い鎖のようなものから解き放たれたような気分になれた、初めての日だった。
続く
前から時間経ちすぎィ‼︎
…これ年中に終わらないかも。
まぁいいか?
閲覧ありがとうございました!