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南雲(久住精神安定剤)
506
ジ
21
午後の病室は、淡い光で満たされていた。ベッドに座る伊吹藍は、まだ声は出せない。
ただ、虚ろな目で窓の外を見つめ、外の光を感じている。
志摩一未は隣の椅子に座り、黙って伊吹を見守る。
手を差し出しているわけでもなく、ただそこにいるだけ。
でもそれだけで、伊吹は心の中で少し安心を感じている。
「……伊吹、大丈夫か?」
機捜の仲間たちが病室を覗きに来た。
伊吹はかすかに顔を向ける。
虚ろな目で、まるで遠くを見るようにみんなを見ている。
「……あれ……」
目に光はほとんどなく、まだ反応も乏しい。
でも志摩一未を見ると、その目にわずかに焦点が戻る。
他の誰でもない、志摩にだけ――少しだけ違う色を帯びた目。
仲間の声が聞こえる。
「意識はあるみたいだな」
「……元気、かな?」
伊吹は小さく目を瞬かせるだけで、声は出せない。
それでも、その目のわずかな動きで志摩一未だけに「見てるよ」と伝わる。
志摩は静かに頷き、手を差し出すでもなく、ただそばにいる。
時間が経つにつれ、伊吹の表情は少しずつ変化し始める。
最初は虚ろで、何を考えているのか分からない目。
次第に目に光が戻り、外の光や風の感覚に反応する。
眉のわずかな動き、口元のかすかな緩み――
それはまだ言葉にできない、でも「ここにいる」という小さな意思の表れ。
志摩はそっと観察する。
「伊吹」
遠くを見ていた伊吹の目が志摩に向く。
呼んだだけ。そう言い切る前に伊吹が手を小さく志摩の方に伸ばす。
初めての動きに志摩は動揺を隠せなかった。
「…なに」
それでもすぐに伸びてきた手を握り返す。
すこし冷たくて握る力もない伊吹の手を握りながら椅子から立ちあがる。
「どうした」
ベッドに座り問いかける。いつもより沢山の人を目にした疲れだろうか。心做しか指先が震えてるように感じる。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
そう言いながら優しく伊吹を抱きしめた。落ち着かせるように背中をとんとんとする。
「……ん」
わずかに伊吹の声が聞こえる。
「びっくりさせちゃったな、ごめん」
「ゆっくり休もうな」
「ここにいるから」
「だいじょうぶ。」
眠った頃には表情が柔らかくなり手の震えもなくなっていた。
だからもう大丈夫だと思い込んで、そっと伊吹の体から離れ、その日は帰った。
___これがいけなかった。
コメント
1件
うわああ第4話…!! 病室の静かな空気がひしひしと伝わってきてもう切なすぎた😭💔 伊吹がまだ声出せなくて虚ろな目なのに、志摩だけには焦点が戻るっていう描写がもう…"特別"すぎるでしょ…! ずっとそばにいるだけの志摩の存在が、一番の薬になってる感じがするよ。指先震えてる伊吹を「だいじょうぶ」って抱きしめるシーン、反則級のエモさだった…🙈💕 でも最後の「これがいけなかった」がすごく気になる…! 次が待ちきれないよ〜!!🌸