テラーノベル
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3日後。
「よーよーメーン! みんなの大好きな逆神大吾さんが戻って来たぜー! 干し肉については色々とあったけどさ、仲良くしようぜブラザー!!」
逆神大吾、懲罰房から帰還する。
何が問題かと言えば、懲罰房にぶち込まれてなお、この男は何の反省もしていない点である。
むしろ、独居房の中では協会本部の福田弘道オペレーターと話ができるため、ちょっとしたアトラクション気分まである。
なお、福田弘道オペレーターは涼しい顔で大吾のにぎりっぺのような話を「はい。そうですか。なるほど」と3日間聞いていたらしい。仏か。
「どうしたんだよ、ブラザーたち! オレもお前らも同じ犯罪者! 仲良くやろうぜ、メーン!!」
「てめぇと一緒にすんじゃねぇよ! なんでこのきたねぇおっさんは元気なんだよ! カルケルの最下層だぞ、ここ!!」
「おい、よせよ。ディーン。このおっさんは我々とは価値観が違うんだ。正気じゃないんだよ。ではなければ、18人も殺せるものか」
彼らはディーンとパトリック。
いずれも殺人を犯しているが、殺したのは1人だけ。
大吾は別に人殺しではないのに、気付けば第11層は「殺したって言っても1人だけだから」と、倫理観がぶっ飛んだ空間になりつつあった。
ディーンは裏組織の抗争で、パトリックは麻薬の取引の不調で犯した罪。
相手も裏の世界の住民だからと言って罪が軽くなる訳ではないが、真摯に反省しようと考え始めただけでも大きな進歩である。
「ヘイヘイ! また一緒に麻雀やろうぜ! なぁ、卓出して! ほら早く!!」
「オレは神に祈る。てめぇは独りで盲牌でもしてろ」
「ディーン。一緒に写経と言うのをやってみるか。どうせオレたちは終身刑だ。来世はまともな人間になろう」
ついに殺人犯にも相手にされなくなった大吾。
だが、そんな彼に近づく男がいた。
正気だろうか。
「よぉ。おめぇ、逆神って言ったよなぁ? くははっ。珍しい名字だがよぉ? もしかして、あんたにゃ息子がいるんじゃねぇか?」
「おっ! すげぇ! なんで分かったんだよ!? さては占い師だな! つーか、あんたも日本人かよ!! すげー! こんなとこで同じ国の出身者に会えるとか!!」
「くははっ。この人の話を聞かねぇ態度。ますます似てんなぁ、おい」
「なんだ、なんだ? もしかして、六駆のお友達か? オレは逆神大吾って言うんだ! よろしくな! で、そっちのお名前なんてーの?」
「……阿久津だ。阿久津浄汰。まさかよぉ、監獄の中で逆神の親父と会う事になるとはなぁ!」
彼の事を諸君は覚えているだろうか。
かつて、ルベルバックの皇帝を謀殺させ、ポヨポヨとか言うふざけた名前の男を新皇帝にすげ替え、国を掌握。
そこから現世に侵攻をかけようと企んだ男がいた。
計画は南雲修一の的確な采配と、逆神六駆のお金への執着により未遂に終わるも、首謀者の阿久津は犯した罪の重さから監獄ダンジョン・カルケルの第11層に収監されていた。
彼からはまだ事の次第の全容を聴取し切れていないので、刑は確定していない。
なにせ、行方不明扱いになってはいたものの、現役の探索員が異世界を支配すると言う国際探索員協会にとってもとんでもない不祥事である。
背後関係について明らかに出来ない間は軽々に処分できない。
阿久津もそれを理解していて、カルケルの奥で新しい暇潰しを探していた。
「で? あんたは何やってここに来たんだぁ? 逆神絡みって事ぁ、タダでぶち込まれた訳じゃねぇんだろう?」
「おっ! すげぇな、阿久津くん! なに? そんなに六駆と仲良いの?」
逆神大吾との出会い。
それは阿久津浄汰が新しい暇潰しを発見した瞬間だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「なるほどなぁ。アトミルカねぇ。俺が退屈してる間に、外じゃそんな面白れぇ事になってやがったのかよ」
「あっくんはアトミルカに詳しいんだな? オレ、名前知らなくてさ! そういう悪いヤツがいるらしいって事は若い頃に聞いたことがあったんだけど!」
逆神大吾。
秒で機密情報を漏らす。
現在、ステルスサーベイランスによってその事実は協会本部に伝わっていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
福田弘道はオペレーター室から緊急の通信を五楼上級監察官室へと送った。
すぐに五楼京華が駆けつけて来た。
「……痴れ者が!! だから私は反対したんだ! あのような痴れ者に機密情報を共有させる事を!! 福田、今すぐ逆神大吾の息の根を止めろ!!」
「五楼上級監察官。確かに問題行動ですが、外部協力者をいきなり殺害するのにも問題があります」
「くっ。では、サーベイランスで気絶させろ! 今すぐあの臭い息を吐く口を閉じさせろ!!」
「それでは、カルケル内に探索員協会の手の者がいると言っているようなものです。既に作戦が動き出している以上、それも愚策かと」
五楼京華は冷静であり、時には冷徹にもなれる女傑。
だが、自分の黒歴史の象徴のような汚いおっさんを見ると、いささかその冷静さを失う。
それを見越して福田を大吾の担当にと進言した、六駆。
その金銭でドーピングされた頭脳の先見性は神がかり的なものがあった。
「……お待ちください。五楼上級監察官。通信をお聞き頂けますか」
「ええ……。お前、それはもう上官に対するパワハラだぞ」
「これは、思わぬ有益な情報源かもしれません」
「ちぃっ。聞けばよかろう! スピーカーにしろ!!」
オペレーター室が緊迫感に包まれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
阿久津と大吾の会話は弾んでいた。
話の内容はアトミルカについて。
「俺ぁよ、実はアトミルカと浅からぬ因縁ってヤツがあるんだよなぁ。まだ探索員やってた頃に、スカウトされたのよ。アトミルカの、何番だったか……。3か4か5か6か。とりあえず偉いヤツになぁ」
「マジかよ! すげぇな、あっくん!!」
逆神大吾。悪そうなヤツはだいたい友達。
ものの数十分で阿久津との間に友誼を築き上げる。
「で、断ったんだよなぁ。そしたらよ、仲間にならねぇでいいから、異世界の支配でもしてみろとか言うんだよ。最初はバカじゃねぇのと思ってたんだがよぉ、技術提供もするとか言って、先払いで『外殻』ってイドクロア装備のノウハウを教えてくれやがってよぉ。で、まあ、そこまで言うならって事で、ちょいと異世界征服とかしてみちまったワケ」
「ほーん」
大事な情報が出た時に興味を失うな。ちゃんと聞き出せ。ダメ親父。
「んでよぉ。上手く行きかけた時に、お前の息子にしてやられちまったんだよなぁ。あいつ、強ぇなぁ」
「マジかよ。六駆最低だな! ごめんね、あっくん!!」
「いや、別に恨んじゃいねぇよ? あの野郎にゃ、結果的に命救われちまったしなぁ。それよりも、アトミルカの野郎どもに借りを返してぇなぁ。くははっ。完全に八つ当たりだけどなぁ!」
「ほーん」
その後も、阿久津は知っている限りのアトミルカについての情報を語った。
彼がステルスサーベイランスの存在に気付いていたのかは定かではない。
◆◇◆◇◆◇◆◇
協会本部。オペレーター室では。
「……何と言う面倒な事をしてくれるのだ、あの痴れ者は」
「これまで黙秘を貫いて来た阿久津浄汰から供述を得た。これは大きいですね」
「これでは、痴れ者を事故に見せかけて殺せぬではないか!」
「五楼上級監察官。ご発言がかなりギリギリです」
「ちっ。致し方ない。福田。このまま痴れ者には好きに喋らせておけ。現状、情報を得る方が有益だ。痴れ者の処分は事が済み次第、私がなます斬りにすれば済む!!」
「かしこまりました」
思わぬところから現れたかつての敵。
探索員協会にとってこれは吉兆なのか。
それとも、甘い蜜で誘惑する悪魔の罠か。
コメント
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いやっほー! 第373話読み終わったよ! もう大吾さん、懲罰房に入っても全然反省してなくて草。殺人犯たちにすら「正気じゃない」ってドン引きされててウケるw しかもまさか阿久津と再会するとは…! 「あっくん」呼びで秒で距離詰めていく大吾さん、やっぱこのおっさん友達作る才能だけは異常。そしてそのまま機密情報ペラペラ喋るのもいつも通り過ぎて笑った 五楼さんが「痴れ者!!」ってキレてるの、めっちゃ好き。続き気になる〜!
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