ドボンっっ!!
ふと目の前の少女が消えた。
ずぶずぶと沈んでいく誰かが《《幼馴染の少女》》であると気づいた時。
ことはもう既に遅かった。
顔まですっぽりと沼の中に沈んでいたからである。
にも関わらず少年は何一つ焦らなかった。
「うわぁ、しんどそ」
ただ一言呟いて、少女の《《髪の毛》》を無造作に掴んで《《引き上げた》》。
気を失っている幼馴染の呼吸を確認したあと、大人を呼んだ。
「いやぁ、すまねぇ」
ぽりぽりと頭を掻いて、こりゃ明日は土下座何時間コースだろとため息をついた。
初夏、レオが7歳のときである。
「もしも〜し。そろそろ起きてくれませんかね。俺、結構長い時間土下座したよ?昼飯抜き3日キツイって。お前も腹減ってるんだろ?起きろよ〜。起きてくれよぉ〜。」
あぁぁ、うるせぇ。
もう少し寝かせろよ。
今日学校ないんだから。
なんかコイツ腹立つな。
一発叩いてやろうか?あ”?
ーー待て待て待て待て。
このうるさい奴誰?
私、一人っ子だぞ。
弟なんかいないはず……。
はず?
じゃあ、これ誰の記憶?
なんか沼に落ちたんだけど、私。
「起きろよぉ〜」
私の可愛いほっぺたをツンツンするな!!
反射的にパチンっと奴の手を叩いていた。
「うぉ〜、起きた起きた。おばちゃ〜ん!!!ヴィア起きた〜!!!!」
誰だよ、ヴィアって。
痛む頭を押さえながら目を開けた。
眩しっっ!!!
えっ、なんか目の前金色なんですけど。
はっ?なんでコイツこんな顔整ってんの?
腹立つんですけど!!
目の前の《《少年》》の美貌に腹が立って目の前の出来事がすっかり頭の中から抜けていた。
待てよ。どっかで見たことがあるような……。
「大丈夫かい?」
《《母親》》らしき人が部屋に入ってきた瞬間に違和感を覚えた。
ーーこの人、私の母さんじゃない。
「ヴィア?どっか悪いの?」
…………………。
拝啓、パワー系お母様。
私、坪田乃亜は転生していたようです。
しかもよりによって。
悪役主人公に断罪されるヒロインAとして。
そして私を沼に落としたコイツは。
悪役主人公の家の騎士でした……。
よくも。
よくも前世の私の記憶を戻しやがったなぁぁ!!!!!
くそぉ。
沼にさえ落ちていなければ!!
気づかなかったのにーー!!
ある初夏の朝。
ヴィア、ことヴィアレーナの叫びが家中に響いた。
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