精神病棟の朝は早い。
まずは明け方ごろ、女性の奇声から毎日が始まる。
それから陽が沈むまで、または沈んでからも、永遠と奇声やら笑い声やら泣き声が響き渡る。まるでジャングルのようだ。
櫻井先生は来るときは決まって午後一で現れるらしい。
らしいというのは、閉鎖病棟に家族以外は入れないからだ。
彼はいつも品のいいお菓子と、メッセージカードを添えてくれる。
だがこの日の差し入れは勝手が違っていた。手のひらに収まるくらいの大きさの箱に、何やら重いものが入っている。
開けてみると、そこにはこの世のどんな言葉でも言い表せないほど美しい花が入っていた。
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