春の午後、桜並木の下で、二人の少女が並んで歩いていた。片方はショートカットの元気な女の子、彩花(あやか)。もう片方は長い髪を風になびかせるおとなしい性格の美咲(みさき)。
「ねえ、美咲。来年も一緒にここでお花見しようね。」彩花が笑顔で言うと、美咲は少し頬を赤らめてうなずいた。「うん、約束だよ。」
それから月日は流れ、二人は高校生になった。忙しい日々の中で、彩花はスポーツに打ち込み、美咲は美術部で絵を描く時間を増やしていた。すれ違いが多くなり、昔のような無邪気な会話は減っていった。
ある日、美咲が描いた絵がコンクールで入賞し、学校中で話題になった。それは桜並木の下で笑う彩花の姿だった。彩花はその絵を見て、胸が熱くなった。「美咲…あたしのこと、覚えててくれたんだね。」
春が再び訪れ、桜が満開になった日。二人は約束の場所で再会した。彩花が「遅くなってごめん」と言うと、美咲は優しく微笑んで言った。「ううん、ずっと待ってたよ。私にとって、彩花は特別だから。」
桜の花びらが舞う中、二人はそっと手を繋いだ。その瞬間、言葉はいらないと二人とも感じていた。
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