テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
雨音が消える時
wki side
あの日、彼と出会わなければ俺はもっと平穏な毎日を過ごせていたのかもしれない。
だけど、あの日が無ければ俺はこの世界の美しさを知らなかった。
急に雨が降ってきた。
濡れるのを避けようと近くの小さなカフェに入飛び込む。
ドアを開けるとふわりと漂うコーヒーの香りが鼻をくすぐる。
カウンター越しに視線を移すと、1人の男性がどこか遠くをみつめている。
どことなく独特な雰囲気を纏っていて、自然に目が引き寄せられた。
o いらっしゃいませ、お好きな席にお掛けください。
w は、はい、
柔らかな声に顔をあげると、彼がにっこりと笑っていた。
その笑顔は常連客やスタッフに愛されていることを物語る温かさだった。
けれど、俺には彼がどこか遠い世界に居るように感じた。
w あの、すみません。
おずおずと声をかけて注文する。
o すぐにお伺いしますね、!
軽く会釈をして立ち去る彼の丁寧な接客ぶりに、つい目で追ってしまう。
o お待たせ致しました。
彼の名札を見ると大森、げんき、?
o ぁ、あの、?
w ぁ、すみません、!
カフェラテとチーズケーキのセットを。
o 承知しました。少々お待ちください。
やがて注文したセットが運ばれてきた。
o お待たせしました。
カフェラテとチーズケーキのセットです。
ごゆっくりお過ごしください。
カフェラテのカップには繊細なラテアートが施されていてチーズケーキは焼き色が美しく食欲を唆るものだった。
w ラテアート、すごく綺麗。
誰が書いたんだろう。
窓越しに雨音が微かに聞こえる中、カウンターに目を向ける。
そこにはさっきの大森さんが真剣な顔つきで新しいラテアートを描いている姿があった。
w ぁ、あの人だったんだ。
丁寧な接客と高い技術に感心しつつ、チーズケーキを1口。
控えめな甘さと滑らかな舌触りが口の中に広がる。
ふと気が付くと、雨音はすっかり消えていた。
窓の外を見れば、青空に虹がかかっている。
w また来よう。
そう思いながら、カフェを後にした。
NEXT
コメント
6件
え 、 かみですか、?