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「レオン様、後ほどバルトがきちんと報告に来ると思いますが、ニコラ・イーストン捜索に動きがあったようですよ」
「本当か!? セドリック」
セドリックは怪我の治療をするためにしばらく部屋から離れていたのだが、その際に状況報告をしに来た一番隊の兵士と鉢合わせたのだそうだ。俺は先生と話し込んでいたので、セドリックが代わりに対応したとの事。
「はい。残念ながらまだ本人が見つかったわけではありませんが、事件発生前後における市街地での目撃情報をいくつか入手したと。そして更に、公爵邸から失踪した経緯について詳しく知っている侍女を突き止めたそうです」
「そりゃ凄いな。内容によっては一気に事件が解決に近づくんじゃないか」
ニコラ・イーストンは島で起きた襲撃事件への関与を疑われている。彼女への嫌疑はミシェルが抱いた違和感と、クレハを害する恐れが有るということから生まれたものだった。可能性としては低いものだったのに、調査をしていくうちに疑惑を裏付けてしまうような出来事が起きてしまう。ニコラ・イーストンが屋敷から忽然と姿を消してしまったのだ。
「さすがジェイクだ。仕事が早い」
ジェイクたち一番隊のおかげで、謎だらけだったニコラ・イーストンの行動理由が明らかになりそうだ。
丁度お茶を飲んで一息吐いたところでもある。いつまでも落胆してはいられない。俺も捜査の方に尽力するとしよう。
汚名返上ということではないけど、少しでもしっかりとした姿を見せておきたかった。
「ルーイ先生。クレハの件で中断されていましたが、打ち合わせを再開させてもよろしいですか? ニュアージュの二人組に持ち掛ける取引の詳細を教えて下さい」
「ああ。俺たちも負けていられないからね」
先生もジェイクの仕事ぶりを聞いてやる気に火がついたのだろう。カップをソーサーに戻すと、姿勢を僅かに正した。
「ニュアージュのカレンとノアですが、刑の減軽だけではこちらの要求に応じる可能性は低いでしょう。拘束されているにも関わらず、余裕を感じさせる態度も気にかかります。我々が思いもよらない隠し玉を所持しているやもしれない」
「そういえば、セドリックは『カレン』……少女の方と交戦したんだったな。実力の程はどうだった?」
「13歳という年齢と性別を考えれば『まあまあ』といったところですね。戦闘技術においてはそこまで脅威ではありません。ですが、彼女は目的のためなら手段を選ばない……ああいうタイプは厄介です」
「なるほどな……もう一方も似たような感じだろうか。男の方は今レナードが見張っているな」
「リズさんの報告によると、ノアはカレン嬢よりは我々に対して友好的に見えたそうです。ただ……危機的状況に追い込まれてなお、緊張感の無い言動を繰り返しており、その様子がとても不気味に感じたのだと……」
「どちらも一筋縄ではいかない人物だというのはよく分かった。比較的対話がスムーズに行えそうなのはノアの方か……」
「先生、今からでも考え直されませんか? あなた自ら交渉の場に着くのやはり危険です。取引内容さえ指示して頂ければ我々が行いますから」
正直俺もセドリックと同じ考えだ。一度許可を出した手前、今更撤回はできないが、先生にもしもの事でもあったらと思うと……
「セディの心配は嬉しいけど、この取引には俺の存在が不可欠なのよ。お前の言う通り、減軽措置だけではこちらの要求には応じないかもしれないね。あのふたりは俺たちのこと舐めてるもの。でもだからと言って、ただ脅すだけでは望むものは得られない」
先生はにっこりと笑った。その美しくも不敵な表情に思わずドキリとしてしまう。
ニュアージュの二人組には彼らの立場が下であると思い知らせなければならない。そして、我々の要求を飲まざるを得ない状況に追い込む必要がある……先生にはそのどちらも可能なのだという。一体どんな策を講じていらっしゃるのか……
「あのふたりがコスタビューテを来訪した理由であり、自身を犠牲にしてでも守ろうとする唯一無二の存在がいるだろう。もし、その人物に危険が迫っていたとしたらどうする? そして、その者を救えるのが俺だけだとしたら……」
「先生、あなた……もしかして」
コンコン、コンコン。
先生の話を遮って、固い物を叩くような音が室内に響いた。それは窓の外から聞こえてくる。ここにいる皆は音の正体が分かっていた。先生の話の続きも気になるけれど、こちらを無視することもできない。
「……本当に優秀だね。レオン、早く部屋に入れてあげな」
「はい」
先生に促され、俺は窓のカーテンを開けた。そこには手紙の入った筒を握りしめたエリスがいた。予想していたよりもずいぶん早く帰ってきてくれたな。
「おかえり、エリス。ありがとう」
エリスから手紙を受け取ると、労いの言葉をかけてやる。彼の好物である木の実も与えて、今日はもう休むようにと空へ放った。
「先生、メーアレクト様からです。昼間送った手紙の返事でしょう」
届いた手紙を先生に手渡した。彼はすぐに中身を確認する。封筒から出てきたのは数枚の便箋……そして――
「あっ……」
咄嗟に声を上げてしまった。どうしてこんなものが一緒に……
「……鳥の羽根ですか?」
セドリックはそれをただの鳥の羽根だと認識したようだ。無理もない。彼はまだ会ったことがないのだから……
リオラド神殿の内部を埋め尽くすほどに舞い上がった、薄く黄色味がかった羽根……あの時の情景が鮮明に蘇る。あそこで体験した出来事は強烈なまでに俺の心に焼き付いていた。この羽根だって忘れることなどできるものか。
「違う。これは、ニュアージュの神……シエルレクトの羽根だ」