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基地・地下管理区画。
「――ガンダムのパイロットの件だが」
重い声が、会議室に落ちた。
神崎は、静かに顔を上げる。
「朝倉、ですか?」
「やつは元々、民間人だと聞いている」
「……ええ。それが何か?」
一瞬の沈黙。
「なるほど……どうりで」
端末を操作する音。
そして、無慈悲な言葉が続いた。
「上からの命令が出た。
パイロット朝倉恒一――死刑宣告だ」
神崎の世界が、止まった。
⸻
同時刻、アマノハシダテ艦内。
恒一は、自室で一人、息を整えていた。
通信で聞かされた言葉が、
頭の中で何度も反響する。
――死刑。
考える暇はなかった。
恒一は立ち上がり、
カバンを引きずり出す。
服。
保存食。
水。
詰められるだけ、詰めた。
「……ハロ、いくぞ!」
「イク?」
「ガンダムにだ」
ハロを片手で抱え、
カバンを肩にかける。
走り出す。
「ワ、ワワワー!」
廊下を駆け抜け、
修理ドックへ。
そこにあったのは、
修理を終えた《ガンダム・シラヌイ》。
だが、
頑丈な固定ロープで厳重に拘束されていた。
「……」
一度、深呼吸。
恒一はコックピットへ滑り込む。
「確か……これを、こうして……」
ピッ
ピッ
キュイー……
起動音。
「よし……動けるか?」
ガチャン、ガチャン。
「……クソッ!
ロープが……!」
その時、整備士の声が響いた。
「ふわぁ〜……
そういやここだったよなぁ……」
恒一の心臓が跳ねる。
だが――
「おい!」
神崎の声。
「艦長?どうしたんですか?」
「お前が探してたもの、
あったって伝えてくれってな」
「え!?
す、すいませーん!」
整備士は慌てて去っていった。
「全く…」
静寂。
通信が入る。
神崎「急げ。もうリミットはない」
恒一「でもロープが……!」
神崎「私が何とかする。
お前は操縦桿を握ってろ!」
神崎は管理室へ駆け込む。
操作盤の前で、
汗をかきながらボタンを探す。
「……くそ、どれだ……」
「こういうことなら私も整備訓練のことを
習えば良かったな。 」
「そこで何をしている」
背後に立つ、上官。
神崎は振り返り、
歯を食いしばった。
「……私は、
彼をまだ死なせたくありません!」
「感情ではどうにもならん」
「私が全部背負います!
責任も罰も!」
深く、頭を下げる。
「お願いします……!」
沈黙。
やがて上官は、
静かに操作盤に手を伸ばした。
ポチ、ポチ、カタカタ……
ウィィーン……
「これでいい」
神崎が息を呑む。
「ただし――
この日をもって、君は艦長を辞任だ」
「……」
「心配なんだろ。
一緒に着いていきなさい」
神崎は、深く頷いた。
「……はい!」
⸻
修理ドック。
固定ロープが外れる。
「外れた!
よし、ガンダム行くぞぉぉ!」
シラヌイが動き出す。
その瞬間、
神崎が粘着ロープで機体に飛び乗った。
「朝倉!俺も中に!」
「え!?
ハッチ開きます!」
神崎がコックピットへ転がり込む。
「どうして艦長が……」
「部下の心配をして何が悪い」
神崎は前を見据え、言った。
「どこへ行こうか」
恒一は操縦桿を強く握る。
「……なるべく、遠くへ」
推進器が唸る。
基地管制室。
「ガンダム、行ってしまいます!
迎撃を――」
「待て」
上官の声。
「少し様子を見る」
「しかし!」
「どうせ、
向こうからまた寄ってくる」
静かな笑み。
「……ふふふ」
⸻
白い機体は、
警報と追跡の視線を背に受けながら、
宙へと躍り出た。
少年と、
艦長だった男。
二人を乗せたガンダム・シラヌイは、
今、正式に――
逃亡者となった。