stgrのrdoサン体調不良です。嘔吐表情あります。
名前を借りているだけで本人様とは全く関係がないので理解してお読みください。
各自で自衛お願いします。
騒がしい目覚ましの音で目が覚める。
うっすらとカーテン越しに光る太陽の眩しさに目をすぼめながらベッドを出る。
「うわっ!?」
とたん、急に視界が歪みその場に立っていられなくなる。ううっと呻き声を漏らし踞った。
数秒後、ゆっくりと目を開けるとそこにはいつもの自分の部屋があった。一度深呼吸をし、洗面所へ向かう。
顔を洗い眠気を覚ます。ふと、鏡の中の自分と目が合う。最近は事件対応が忙しく、疲れが溜まっているせいか目元に濃い隈ができている。まぁどうせ、ヘルメットを被るから関係ないのだが。
ふっと自嘲気味に笑みを浮かべリビングへ行く。
空腹は感じなかったが、コーヒーだけは用意した。
朝のニュースを見ながら仕事へ行く準備をする。
準備が整ったあと、ズキズキ痛む頭を押さえ自分の職場、ロスサントスの警察本署へと向かった。
本署入り口の扉を開けたとたん、横から大きな声が聞こえてきた。
「らだおおはよー!」
ぺいんの声か。伊藤ぺいん、俺の同期だ。マスクをしていてもわかるくらいの笑顔でいつも挨拶をして、署員の皆を笑顔にさせている。
だが今日はその声がキーンと耳に響き、思わず顔をしかめたが、顔は隠れているから問題ないだろう。
「ん、おはょ…」
「…あれらだお、今日元気ない?」
「え…?」
別にいつも通りに挨拶をしただけなのだが、気づかれてしまっただろうか。
「全然元気だよ」
なるべくいつも通りの声色で話した。
自分は普段から感情の起伏が他の人より少ない人間だと思っている。きっと皆もそう思っているだろう。話し方が変だっただろうか。
「そう?なら良かった」
一瞬怪訝そうな顔をしたように感じたが、じゃあねと手を振ってどこかへ行ってしまった。
ふうっと息を吐くと、頭痛が襲ってくる。朝から定期的に鋭い痛みがする。
これ以上ひどくならないことを願いながら署内に入った。
午前中はなんとか普段通りに振る舞うことができたのではないかと思う。
幸い朝のぺいん以外俺の体調を聞いてくるような人はおらず、安堵の息を吐く。
その反面、どんどんと強くなっていく頭痛に加え、心なしか胃の辺りが気持ち悪い。午後は大きな事件が起こらなければいいが。
午前に終わらなかった事務作業を終わらせ、署内に設けてある休憩所で少し休憩する。体調は一向によくならず、悪くなるばかりだ。
数分後、銀行強盗があったという通知がきた。大型犯罪ではないからよかったが、だからといって手を抜いてはいけない。
『らだおヘリで向かいます』
相変わらず平淡な口調で告げ、ヘリ出発の準備をする。
「あ、らだお!」
またぺいんか。今度も何か言われるのではないかと身構える。
「僕も乗せてって」
意外な一言に驚く。出来れば一人で乗りたかったが、別にそれ以外で断る理由も見当たらない。きっと俺の体調を案じてだろう。嫌いではない、どちらかというと好きの部類に入るぺいんだが、今回ばかりは鬱陶しいと感じてしまった。
二人でヘリに乗り、現場へ急ぐ。
自分のヘリの技術には自信があるが、やはり多少の揺れは生じてしまう。少しの揺れでもなかなかしんどい。
『犯人、3分間アタック禁止のヘリはありとのことです』
警察無線からの指示を聞く。警察側でもう一機ヘリが出ているのことだが、俺がアタックに行った方がいいだろう。
「ぺいん、3分経ったらそこから攻撃して」
「了解」
このヘリの揺れでさっきから吐き気がどんどん強くなっている。耐えられない範囲ではないからまだ大丈夫だが、長引くとまずいかもしれない。
チェイスが始まり、パトカーが一斉に犯人の車に向かって走り出す。遠くからヘリで追いかけて、犯人を見失わないように的確な指示をする。
『3分経ちました。アタックオッケーです』
無線から攻撃許可の合図が出る。
なるべく揺れないように、細心の注意を払いながら速度を上げた。
「アタックするからちゃんと捕まってろ」
「わかってる。任せて」
大きな音と共に身体に衝撃が走る。一度上空に戻り辺りを見回す。
今の攻撃に続き、地上を走っていたパトカー達が次々と体当たりをしたようで完全に車が停止している。
ヘリの仕事はもう終わりのようだ。本署の方向へヘリを走らせる。
「うっ…」
急に激しい頭痛が襲い、思わず呻き声を上げる。
ぺいんに聞こえてしまっただろうか。もう体力も限界に近く、呼吸が早くなる。
「らだお、やっぱり体調悪い?運転代わろうか?」
やはり聞こえていたか。優しく声をかけてくれるぺいんに甘えてしまいたくなる。だが、心配されるのは苦手だ。平静を装おう。
「全然…大丈夫、だよ…」
いつも通りに接しようと思っていたのに口が、身体が言うことを聞かない。
実を言うともう本当に限界なのだ。息が苦しい。気持ち悪い。助けて…。
「ごめん、僕にはそう見えないんだよ。一旦ヘリ、降ろせる?」
大丈夫、と言おうと思ったのだが、コクっと頷き着陸の準備をしてしまう。
無言で指示に従っていることが自分が体調不良であることを肯定しているような気がして自己嫌悪に陥る。
最寄りのコンビニ近くに着陸した。荒い呼吸を必死に整えようとするが、かえってひどくなる一方だ。全身から汗が吹き出てくる。
「正直に答えて。どこが辛い?」
優しい声色とは裏腹に、絶対に嘘を吐かせないという固い意志が感じられる。
「頭痛くて、気持ち悪い…」
「吐きそう?」
「ぅん…」
「わかった。正直に教えてくれてありがとう」
優しく声を掛けられて安心する。相変わらず体調は最悪。身体は重く、力が入らない。だが心は不思議と軽い。
「らだお、シートベルト外すよ」
いつの間に助手席から降りたのか、運転席側のドアを開け、俺のシートベルトを外している。
されるがままぺいんに身体を支えてもらいながら、運転席を降りる。
覚束ない足取りでコンビニに入ると、幸か不幸か誰もおらず、男女共用の少し大きめの個室トイレに入る。
普段だったらトイレの床に座るなんて汚いことはしないが、今はそんなことを考える余裕もなく、倒れるようにして座り込んだ。
「ヘルメット取るよ」
「んぅ、ありがと…」
ヘルメットの中にこもっていた熱が逃げ、冷たい空気が頬を撫でる。汗で髪が顔に張り付いている。
「ぅう”っ…」
くぐもった呻き声が漏れる。
気が抜けたとたん、吐き気が襲ってくる。ごぽっという嫌な音を立てて、食道から熱いものが込み上げる。
「っう”えぇっ…あ”っ、ぅえ”えぇっ」
胃液特有のツンとした臭いが部屋全体に広がる。
苦しい。日常生活の中で、体調が悪くなることなんてほとんどない。ましてや嘔吐するなんてことはここ数年なかったので、上手く吐くことができない。
胃の中に違和感が残る。
苦しさを紛らわせたくて、服の裾を力一杯握った。全身から粘ついた汗が吹き出る。
はくはくと金魚のように口を空け、荒い呼吸を繰り返す。
「全部吐けてなさそうだな…」
俺の心を読んだかのようにぺいんが呟く。ずっと背中をさすってくれているおかげで、苦しさが少し和らぐ。状態は変わらず、呼吸をすることで精一杯なのだが。
口の中の手を入れて自ら吐くということをしたことがない。だが早くこの気持ち悪さを解消したいのと、これ以上ぺいんに迷惑をかけられないという焦りで無理やり口に手を入れる。
「ん”っ、う”ぅっ」
だめだ、吐けない。
どこを刺激していいのか分からず焦りや苦しさで涙が出てくる。
「らだお!苦しいのはわかるけどそんなに乱暴にやったらだめ」
そう言うと口に入れていた手を抜き、ぺいん自身の手を入れる。
「んう”っ!?」
「大丈夫。ちょっと苦しいけど我慢して」
言いながら喉の奥の方まで指を押し込んだ。
「ん”んっ、お”え”ぇっ…」
吐くと同時に引き指を抜く。
「っあ”ぁ、ぇう”ぅぇっ…」
今度はうまく吐くことができたようで、先程までの胃の不快感はなくなってきている。胃液のせいで食道がヒリヒリするのは仕方がない。口の中に痺れが残る。
「口の中不味いでしょ?これでゆすぎな」
と手渡された水入りペットボトルで口をゆすぐ。
トイレットペーパーで口元を拭い、便器のレバーを下げた。荒い呼吸を整え、色々と助けてくれたぺいんに感謝する。
「あ、ありがとう…」
「もう吐き気はおさまった?」
「うん、ほんとに…ごめん…」
「大丈夫、困ったときはお互い様だから。ね?」
ぽんっと俺の頭を優しく撫でる。気恥ずかしかったが嫌な気分はしない。
どこまでも優しいぺいんに、今はただ感謝するしかなかった。元気になったらたくさん何かしらのお返しをしてあげようと思う。
「さ、帰ってたくさん休も!立てる?」
そう言いながら差し伸べてくれた手をとる。
まだふらつく足元をを見て、思い出したようにぺいんが言う。
「そうえば、まだ頭痛は直ってないよね?」
気付かれたか。そんなことないと言うとまたなにか言われそうなので、伏し目がちに仕方なく肯定する。
「…ん」
「て言うか熱絶対あるんだから。まぁ、言いたいことは色々あるけどまずはヘリまで行こう」
そう言い、よっと俺の肩を支え歩き始める。自分に少し余裕が出てくると恥ずかしさが込み上げる。顔を隠したいが、ぺいんにヘルメットを持たれているため下を向くことしかできなかった。
ヘリまで着くと、無理やり助手席に座らされる。
「で、何で限界までなんにも言わなかったの?」
案の定、ヘリを離陸させたあと聞いてきた。これは本署に帰るまでずっと言われそうだなと思いながら全てを正直に話す。
「みんなに迷惑かけたくなかったから…」
「バカ、こっちの方が迷惑じゃん!」
正論だ、返す言葉もない。
自分の弱いところを見せて、たくさん迷惑をかけて、たくさん支えてもらって。申し訳なさで息が詰まる。
「でもさ、それがらだおの優しさなんだよね。自分一人でできることは苦しくてもやっちゃうのがね。
だけど、少しは頼って欲しいな。苦しかったら助けに行くし、ちゃんと手伝うからさ」
「えっ?」
思いもよらない言葉に驚く。本当にぺいんは皆の事をよく見ているんだな、と改めて思う。
「だからお願い、苦しかったらちゃんと言って。僕も力になるから」
懇願するような口調で話してくるから困惑する。ここまで心配してくれていたのに気づけていなかった自分に嫌気が差す。
「そんな顔、誰にも見せたくないんでしょ?今日は早く寝て、体調万全にしてその隈をなくさないとだね。
これ以上自分の身体を壊すようなことしたら許さないからね?」
そう言うとほら、とヘルメットを返してきた。
「うん。ありがとう」
膝の上に乗せたヘルメットを見つめながらふっと笑みをこぼす。
「何笑ってんだよ」
「いやぁ?なんでもないよ」
「ふーん、早く元気になってね」
「うん」
ありがとう、と小声で呟いたことは黙っておこうと思う。
コメント
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rd、pn最高です!!